« 2018年3月 | メイン | 2018年5月 »

2018年4月

2018年4月30日 (月)

眼の命を慈しむ(7/9) 逆縁の菩薩

 今回の件で、三好先生から、「一目で人を見ぬく眼力、縁を見ぬく眼力、選択をする決断力、ご縁の力」の大切さを教えて頂いた。まだまだ自分には人徳の力、人を見抜く力、縁を掴む力の不足を痛感した。仏様のご配慮で、今回その不足を諭され三好先生に助けていただき、失明の危機を脱したようだ。仏様からもっと頑張れよと激励された気持ちである。

 

人の道

 本来なら、2012年の手術は三好先生にお願いすればよかったのだが、既に手術日が2週間後と間近であり、手術をお願いしてある地元の先生の手前もあり、あの時点で予約済み手術のキャンセルは、人の道に反する。三好先生も口にはできない。そうなったのも自分の運命である。そのお陰で網膜はく離という「逆縁の菩薩」との出会いがあって、目の大事さ、当たり前に見えることの有難さ、「今が大切」が、身にしみて理解できた。それが、佛さまからの人生の教えであった。そのお陰で三好先生とのご縁ができた。

 

逆縁でもご縁

 逆縁でもご縁である。そこから何を学ぶかで、今後の生き方が変わる。そのご縁は、仏様からの何のメッセージなのかを考えたい。ご先祖も仏様もあの世から直接には手を出せない。間接的に、病気、事故とか逆境で我々にメッセージを伝えているのだ。それをどう受け止めるかである。逆縁という縁を頂いたから、師の門を叩くのだ。そうでなければ出会えない師縁である。

71img_44132

眼の命の寿命を思い知る

 白内障の手術を簡単に考えていたのが甘い考えであった。1週間ほど受験勉強に空白ができるが、直前に猛勉強で巻き返せばいいと安易に考えていた。左目の手術は無事に終わったが、手術1ヶ月後に網膜はく離を患い、ほぼ失明の状態が2週間ほど続き、受験勉強ができない時期が、受験直前の3週間にも及んだ。命は有限である。ところが体だけでなく、その部品である各器官にも寿命があることを思い知らされた。それを認識できただけでも、よい勉強となった。

 愚かな人間は、見えて当たり前、聞こえて当たり前の世界がいかに「有難い」状態であるか、失なわないと分からない。勉強できるのも、生きているうち、働けるうち、眼の見えるうち、日の暮れぬうちを痛感した。

 

実績の凄さ

 また、三好先生の手術の見学をさせていただき、人生の開眼ができ。先生の手術例52,000例と普通の眼科医の生涯手術件数2,000例の差を間近に見て、いかに自分の取り組みが甘かったかを痛感した。その道を極めるには、2倍3倍ではダメで、一桁違う精進が必要であると眼が覚めた。当時、国家試験の資格に挑戦中であったが、自分の受験勉強の取り組みの甘さを教えていただいた。

 手術後に手術を終えた患者さんに言われた先生のお言葉「後は神様が直してくれる」は感動です。天の計らいには人智を超えた縁がある。

 

世界歴代2位達成

 三好先生は2014年10月3日に、世界歴代2位の自院内での白内障手術件数50,000例(他院出張手術件数を含めると55,000例)を達成された。三好眼科では1988年4月に開院以来、2018年3月31日現在で、自院で60,738例、出張手術5,748例、合計66,486例 の白内障手術を行った。

 2013年当時40人の病院のスタッフも、2018年現在は60名を超える。

7250000

 世界歴代2位の白内障手術件数50,000達成のお祝い会で(三好先生より提供)

73img_47461 馬場恵峰先生書    2011年入手

 

 今回、眼を患って、馬場恵峰先生の書の中でもこれが一番、心にしみた言葉である。自分の命は勿論のことであるが、どんなモノ、プロジェクト、品物にも命がある。それを忘れてはならない。(2013年記)

 この言葉が三好先生の座右の銘だと、この2018年4月号『BJビジネス情報』誌で初めて知った。(2018年4月記)

 

2018-04-29

久志能幾研究所 小田泰仙  e-mail :  yukio.oda.ii@go4.enjoy.ne.jp

HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite  Blog: http://yukioodaii.blog.enjoy.jp

著作権の関係で無断引用、無断転載を禁止します。

2018年4月29日 (日)

眼の命を慈しむ(6/9) 白内障手術を見学

白内障手術見学のお誘い

 三好先生宅訪問の前日(2013年10月24日)、三好先生から電話があり、「明日、早めにお越しになれば手術の見学をしていただいてもよいですよ」とのお話があった。一瞬、えー! と思ったが、折角のお話なので見学させていただくことにした。私の人生方針として「来るものは拒まず」である。でも手術の見学など気持ちが悪い、恐ろしいとの思いがあり複雑な心境で福山市に向った。

 

手術室へ

 三好眼科に到着すると、お迎えの看護婦さんが待っておられた。看護婦さんに手術着に着替えるため別室に案内されて、着替えて手術室に向った。手術室は2台の手術台が設置されおり、三好先生が手術の真っ最中であった。目礼をしてテレビ画面に映る手術の状況をしばし見学した。しばらくして三好先生から「こちらに来て顕微鏡で見なさい」と言うことで、手術中の先生の真横に座り、モニタの顕微鏡で直接、手術の経過を見させていただいた。2人の方の手術の全過程を見させていただいた。先生はもっと見て欲しかったようだが(ある意図があって)、手術を受けられている方に対して少し気が引けたので、直接見学したのは2人の手術だけで、後は手術室内の3mほどの至近距離の横に座って、モニタで三好先生の手術を真横に見ながら、計10名ほどの方の手術を見学させていただき人生を学ばせていただいた。

 その後、香川大学の女医の先生が同じように手術を見学されていた。この状態を後進に見せるのは後進を育てるためのシステムとして素晴らしい。

 

白内障手術状況

 患者は片目を眼帯に覆われて、看護婦さんに両手を引かれて静々と手術室に入ってきて、手術台に横たわる。その後、術前処置を受けて10分ほど横たわって待機している。もう一つの手術台で前の患者の手術が終ると、三好先生は、待機している患者側に来て次の手術を開始する。手術は10分ほどで終わり、素人が見ると極めて簡単に見え、流れ作業のような感じであった。先生の足元にはペダルを含めて27個の足スイッチが並んでいる。それを駆使しながら微細な目の手術をされる。最初に眼球を覆う膜を切開して、前嚢の膜を壁紙のはがしのように、そぉーとめくる。

 この手術の鍵は足の微妙な使い方にある。先生はその昔、エレクトーンを習われたとか。これが役立っている。レーザーのノズルを水晶体の横から差し込み、レーザーで水晶体を砕きながらその破片をノズルから吸い込む。その微妙な加減を、足のペダル操作で調整する。砕かれた水晶体の破片がそのノズルから吸い込まれていく。水晶体が、宇宙空間に浮く隕石の破片のように、ノズルに吸い込まれていく。まるでSF映画の不思議な映像を見るようであった。「この操作が簡単にみえて難しいのですよ。これが手術の要なのです」と先生の解説である。目の膜が3μmしかなく操作を誤ると破ってしまうとか。

 水晶体を取り除いた後、折りたたんだ眼内レンズを挿入する。レンズのアームは徐々に開いて目の中に納まる。それで手術は完了である。簡単に見えるが、入れるのも、後からの微調整も高度の技術を必要とされる。

611

 大鹿哲郎教授監修『眼手術学』文光堂より

 

 以前、松本明慶先生も三好先生の手術を見学されて、その時、「この手術の鍵は足の操作ですね」とずばりと指摘をされた。さすが職人同士で通じるものがあったとか。それ以降、松本明慶先生に三好先生が信用してもらえるようになったという。

62

 手術風景 三好眼科のHPより

6327

 足元に27ケのスイッチ。大鹿哲郎教授監修『眼手術学』文光堂より

 三好先生は約90分間で、10名の患者の手術を工場のライン作業のようにこなされた。横で支援している医師と看護婦の連携も素晴らしい。今日は18名の手術をされる予定とか。このペースでは過去52,000件の手術実績も納得である。

 

佛の掛け声

 手術が終ると、三好先生は「手術は大成功ですよ。もう大丈夫」と患者に声をかけていた「後は神様が直してくれます」。この言葉には感銘した。あくまで謙虚な先生である。手術などは見たくても見られないもの。それも世界一の神の手を持った先生の手術である。そのご縁に感謝です。

 

みほとけの見守り

 手術室の壁上部には松本明慶先生作の仏像写真が、先生の手術を見守るように10枚ほど掲示されていた。手術室の奥のガラス越しの部屋に、松本明慶先生作聖観音菩薩像(全高1.65m)(次図)が「手術が安全に行われることを祈願して」安置されて、手術室内を見守っていた。聖観音菩薩は人々の苦悩の叫び(音)を観じると、慈悲の心をもって、直ちに救済に駆けつける御佛である。この佛像は2002年度京都仏像彫刻展で第一位の京都府知事賞に輝いた作品である。

644k8a9350

戒めの言葉

 手術室入口横の壁にはスターウォーズのヨーダの写真があり、ヨーダの発する言葉が医師への戒めの言葉として10枚ほど掲示されていた。

 曰く「医師は謙虚であれ」「自然の真理を悟れ」(言葉はうろ覚えですが、自己を戒める言葉が列挙されていた)。自分の戒めの言葉として使いたい表現が多かった。

 

「手術十戒」(三好眼科手術室に貼ってある)

  (下記はネットで掲載されていた情報。私はうろ覚え。)

  1. 「どのような手術でもベストを尽くす」
  2. 「己の力を過信しない」
  3. 「1stepを三度確認して、次のstepに移る」
  4. 「術前、術中、術後の軽口はこれを厳に慎む」
  5. 「患者が手術室を出るまで、決して気を抜かない」
  6. 「Nurseを叱らない」
  7. 「11時の皮質を一部残すことは恥ではない」
  8. 「決してイライラせず、急ぐことなく落ち着いて手術する」
  9. 「常に一歩退いてよく考えること」
  10. 「神への祈りを忘れない」

これらはどんな仕事にも通用する言葉である。私も仕事で使いたい。

クリーンルーム

  この手術室はクリーンルームと同じ基準で建築されているとのこと。クラス1,000のクリーン度である。私がNEDO(通産省の外部団体の超先端加工システム組合)の関係でエキシマレーザ用の超精密加工機の開発とそのためのクリーンンルーム建築に関与した(1991~1992年)。それでその費用が半端でないことを知っていた。そのクリーンルームは、クリーン度10,000であった。一般的な事務所のクリーン度は1,000,000である。一般的な手術室がクリーン度50,000であるので、いかに三好先生が手術室室に金がかけているかが分かる。人の眼に関する部屋のクリーンルームの建設にはお金がかかるだ。 

クリーン度の定義

 クリーンルームの清浄度は「一定の体積中の基準の大きさ以上の塵埃の数量」で示される。これは1フィート立方中(28.8リットル)に0.5ミクロン以上の微粒子が何個あるかで表す。クラス1,000とは1フィート立方中に0.5ミクロン以上の微粒子が1,000個以下であることを示す。数字が小さい程ゴミの無い空間になる。

 0.5ミクロンとは、光学顕微鏡で見える最低限の大きさである。バクテリアの一番小さいサイズである。一般的に「雲の上」の空気の状態である。要は天国に近い状態(?)である。

後日談

 今回の眼の手術のご縁で、もっと自分の体を勉強しようと思い、大鹿哲郎教授監修『眼手術学』文光堂(30,000円)を購入した。医学書が高いのは閉口だが、白内障手術の理解にはよい教材であった。自分の体を医師に預けるにしても、その手術に関する基本的知識は持っていたほうが良いと思う。

 後で一冊20,000円の同シリーズの医学書を2冊も追加購入することになり、結局7万円の出費となった。この医学書で貴重な情報が得られたので、惜しい気はしなかった。こういう情報を自分の体験で得ようと思ったら、7万円では得られない。図書には、著者の経験知が詰まっている。それからすると、安いと私は思う。

65

 大鹿哲郎教授監修『眼手術学』文光堂

 

2018-04-29

久志能幾研究所 小田泰仙  e-mail :  yukio.oda.ii@go4.enjoy.ne.jp

HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite  Blog: http://yukioodaii.blog.enjoy.jp

著作権の関係で無断引用、無断転載を禁止します。

2018年4月28日 (土)

眼の命を慈しむ(5/9) 白内障手術ビデオ

 2012年、三好眼科に来院して一番驚いたのは、待合室に設置してあるモニタテレビで白内障手術の様子が繰り返し放映されていたことである。なおかつ希望者には、手術の過程を撮影してそれを提供してもらえるとのこと。

 自分が白内障の手術をできることならやりたくないと躊躇していたのは、眼の手術への恐怖心からである。他の手術なら麻酔で知らない間に済んでしまう。ところが、眼の手術は麻酔なしで、意識がある中での手術である。それ故、手術を先延ばししていた。受験勉強と車の運転に支障が出てきたので、手術せざるを得なくなったというのが本音であった。

 放映されていた手術の様子を見て、あまりに簡単に済んでいるので、拍子抜けの感があり、安心して手術を受ける心境になった。患者の身になって考えている、すばらしい配慮である。

 

危機管理

 またこのビデオ撮影は、己の手術技術に自信がないとできない。このビデオは、医療訴訟への対応ともなる。三好先生は、自己の手術のビデオを全て資料室に保管されている。その分量は圧巻であった。素晴らしい危機管理である。

 

診断結果の写真のカラーコピー

 2018年の今回も、最新の診療機械で眼の網膜の断層写真を撮り、診断を受けたが、その写真のカラーコピーが診察後に提供された。他の病院では、診察の写真は請求しないと、渡してもらえない。それもモノクロのコピーである。患者の身になって考えていると感心した。

 

三好先生の手術件数

 三好先生の白内障手術件数は51,533(2013年7月31日現在)例である。先生の御歳は59歳(2013年現在)。普通の眼科医の生涯手術件数が多くて2,000例であることを考えると、その凄さが分かる。先生の手はgod handである。

 2014年10月3日に、世界歴代2位の自院内での白内障手術件数50,000例(他院出張手術件数を含めると55,000例)を達成された。2018年3月31日現在で66,486例の手術件数である。

 

眼科術後検査のご縁

 私は2012年4月、左目の白内障手術後、網膜はく離をわずらい、2週間ほど半失明状態に追い込まれた。その半年後右目の白内障手術を受け、また網膜はく離の前兆が出て、落ち着くまでに1年程を要した。その間、国家試験の受験勉強の巻き返しに没頭せざるを得ない状態になり、三好先生へのお礼のタイミングを逸してしまった。

 三好先生への遅ればせながらのお礼とミシガン大学で学んだテクニカルライティングのお話を目的に先生への訪問のアポイント(2013年10月25日)をとると、先生から「もはや関係ないかも知れませんが、もしも眼科術後検査もご希望でしたら、15:00に2階受付にお越し賜れば、種々検査後、診察させて頂きます。」とのメールが来て、是非お願いします、ということで診察をして頂いた。

 

検査を受けて

 検査を受けて正解であった。そんなつもりで三好先生宅を訪問したのではないが、仏さまのお導きで、危ない状態を助けていただいた。診察の結果、術後の経過が悪く、そのまま放置すると網膜はく離を再発する恐れがある状態であることを告げられた。それを直すのは普通の腕では難しい手術であった。その場で、YAGUレーザーで手術を受けて、その心配を無くしていただいた。先生の申し出た検査を受けなければ、通り過ぎてしまっていたご縁である。

 

逆接待

 その夜、三好先生から一緒に食事でもと、一見さんお断りの高級料亭に連れて行かれ、目の前で今朝、下関に水揚げされたばかりの河豚をさばいての河豚料理をご馳走になった。本当は私が接待しないといけないのに、逆接待である。そのお店では、専務、副社長レベルは入店禁止で社長しか入れない掟とか。

 そのお店のご主人は頑固オヤジのようで、腕に自信があり、「食わしてやる」という雰囲気である。勿論それに見合った味と内容があった。値段も半端ではない。料理を食べて、オヤジさんに「旨い」と言ってはダメとのこと。旨いのは当たり前だからだ。意見を言ってはダメなのだ。三好先生をして、そのオヤジさんから、数回、出入り禁止を申し渡されたという。そのオヤジさんにとって、世界一の手術の腕を持った三好先生も子ども扱いである。それだけ腕に自信があるのは素晴らしい。トランプ大統領なら、即、出入り禁止にされそうである。松本明慶工房の皆さんも、このお店で御馳走になったという。かようにお礼の言いようもない仏さまからの接待でした。

 

2018-04-28

久志能幾研究所 小田泰仙  e-mail :  yukio.oda.ii@go4.enjoy.ne.jp

HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite  Blog: http://yukioodaii.blog.enjoy.jp

著作権の関係で無断引用、無断転載を禁止します。

眼の命を慈しむ(4/9) 三好眼科を見学

 2018年4月21日、長崎の馬場恵峰先生宅で写真撮影をした後の帰路、三好眼科を訪問して、診察と新たに増改築された新屋(2016年完成)を見学させて頂いた。前回は三好先生が直々に案内をされた。今回は、三好先生が学会参加で不在のため、事務長の寺本様に全館を案内していただき、その後、副院長の吉田先生に診てもらった。

41dsc01344  三好眼科外観(2012年) 

42p1100397  三好眼科外観(2018年)手前の駐車場に増築された。

43p1020326  2階の待合室(2012年、今日は患者が少ないほうとか) 

444k8a9368

 1階の新待合室(2018年4月21日)

診察室は7室

 新病棟では以前の6診から7診に増えていた。名古屋市立大学病院の眼科が4診であるので、単科病院として驚嘆の多さである。7診もある各診療室のカーテンの色にもこだわりがある。7診の各室のカーテン色が異なり、その診察室内部の色彩もカーテンの色と合わせてあるという。これは施行した寺本事務長のこだわりとか。組織の全員が三好先生の意向を汲んで、改築に尽力をされたようだ。

45dsc04196  単科病院で6診まであるのは驚き。(2012年) 

 名古屋市立大学病院の眼科でも4診までである。

46p1100393  現在の診察室 7診に増えた(2018年) 

47p1100390

 各診察室のカーテン色を変え、内部の色もカーテン色に合わせてデザイン。

 

視力検査機

 ここで単純に感心したのは、一般的な5mを離して検眼マークを見る視力検査ではなく、ボックス内を覗いて視力を測る光学式機械が並んでいたことである。寺本事務長の説明では、従来の視力検査方式では、測定位置と検眼マーク板の間の距離5m×8台数分の敷地が無駄となるため、建屋敷地の稼働率向上目的で、この検眼機器を使っているとのこと。大変合理的で感心した。新幹線が止まる駅に近い一等地で、土地の有効活用は重要である。病院経営で、土地や建屋は固定資産税、減価償却等でお金がかかる。それを効率化して浮いた資金を新しい医療設備に投資が出来る。これは2012年当時も設置してあった設備である。

 

オスカー賞像の展示

 三好眼科で米白内障学賞にもオスカー賞があることを初めて知った。それも4つのオスカー像があるのは、世界でも三好先生の病院だけ。言うなれば世界一の先生である。アカデミー賞の副賞であるオスカー像は、米白内障学会がド高いライセンス料を払って使用権を得ている。出すものを出せば、オスカー像は使えるのだ。

 見学の後、病院の会議室で、米白内障学会でプレゼンしたビデオを見させてもらった。お金と時間がかかっているビデオである。三好先生は「米白内障学会に参加すると1週間病院を閉めないといけないので、1回数千万円の減収になるので大変」とぼやかれた。苦節10年でグランプリを取られた。単発では世界一は獲得できない。

48dsc01367

49adsc01368

 アメリカ白内障学会、ドイツ白内障学会、欧州白内障学会のオスカー像とトロフィー

 

患者の地域別分布図

 下図は三好眼科の患者の地域別分布図。赤のピンが手術患者、白の針頭が医師の見学者の印。遠く北海道には赤の針頭がある。中部地区が少ないのは、名古屋に杉田眼科があるため。設備では、杉田眼科が日本で一番最新という(2012年当時)。

 今回見学したら地域別の地図に世界地図が追加されていた。その分布を見て、中国からの患者が多いのに呆れた。中国人も日本の名医をよく知っている。赤いピンが患者、白いピンが手術見学の先生のマークである。遠く欧州、北米、豪州、アフリカ、南米までそのピンが立つ。

49b4k8a9353

49c4k8a9352

相談コーナ

 2階の診察室の横には、パーティションで囲まれたカウンセリング用の4人用の机まで設けられている。それも3カ所も、である。眼科病院で、こういう相談コーナは初めて見た。当時の私なら、眼の手術の疑問点の相談を親身になってさせて欲しいと思っただろう。眼の手術は恐怖心が先にあり、怖いのだ。相談する相手が欲しいのだ。普通の病院は、その場所さえない。

エスカレーターを設置

 今回の増築で、1階の待合室と2階の診察室の間に、市内の病院では初のエスカレーターが新設されている。三好先生は、このエスカレーターは、建築費が高かったとぼやかれていた。普通の目が見える人間では、あまり感じないが、目を悪くすると、階段を降りる時は恐怖心を感じることがある。私も目が悪いので、その配慮はありがたい。

 エスカレーターを病院に設置しても一銭も儲からないが、三好先生が患者の身になって設置したエスカレーターである。患者目線の配慮である。横の1階と2階を結ぶ階段には、足元を照らす照明までつけられている。視力の弱い方のための配慮である。もちろんエレベーターも設置されている。

 

メガネ店まで併設

 同じ建屋内にメガネ店まで併設されている。私も多くのメガネ店を訪れたが、眼科医との関係で、医師の処方箋のままメガネを作ればよいので、あまり上等の設備がないお店が多かった。同じ経営で、メガネ店を作るのは合理的である。

 

トイレのこだわり

 またトイレの美しさもレクサス店や高級ホテル並みのレベルである。患者さんが来院する前に、寺本事務長が女性用トイレも見せて頂けた。トイレを見れば、その経営姿勢が分かる。

 

目の保養

 病院の壁やコーナに多くの美術品が展示され、眼の保養になっている。マリー・ローラサンの絵や京薩摩焼の陶芸品等が展示されている。全て本物である。

 

ウォーターパール

 医療機器ではないが、患者が待ち時間中の癒しのための設備として、「病院では世界で初めての設備」が、水玉噴水設備の「ウォーターパール」である。三好先生のこだわりとか。水に特殊な振動波を与えて球状にした噴水と、専用ライトを当て、眼の残像効果を利用して、球体となった水滴が空中に浮かぶように見える。その水滴の動きは幻想的である。

49d4k8a9357

2018-04-28

久志能幾研究所 小田泰仙  e-mail :  yukio.oda.ii@go4.enjoy.ne.jp

HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite  Blog: http://yukioodaii.blog.enjoy.jp

著作権の関係で無断引用、無断転載を禁止します。

2018年4月27日 (金)

眼の命を慈しむ(3/9) 千手千眼観音菩薩像

 三好眼科の新しい待合室には、松本明慶大仏師作の千手千眼観音菩薩像(2m)が鎮座され、多くの患者を優しく見守っておられる。

 

314k8a9361_2 松本明慶先生作 千手千眼観音菩薩像 三好眼科にて(2018年4月21日撮影)

千手千眼観音菩薩とは

 千手千眼観音菩薩は、「千手千眼観音」「十一面千手千眼観音」「千手千臂観音)」など様々な呼び方がある。「千手千眼」の名は、千本の手のそれぞれの掌に一眼を持つとされることに由来する。

 千本の手は、どのような衆生をも漏らさず救済しようとする、観音の慈悲と力の広大さを表している。観音菩薩が千の手を得た謂われを述べた仏典には、伽梵達摩訳『千手千眼觀世音菩薩廣大圓滿無礙大悲心陀羅尼經』がある。この経の中に置かれた『大悲心陀羅尼』は、現在でも中国や日本の天台宗、禅宗寺院で読誦されている。六観音の一尊としては、六道のうち餓鬼道を摂化するという。また地獄の苦悩を済度するともいい、一切衆生を済度するに、無礙の大用あることを表して諸願成就・産生平穏を司るという。

 一般的な千手観音像は十一面四十二臂が多い。四十二臂の意味については、胸前で合掌する2本の手を除いた40本の手が、それぞれ25の世界を救うものであり、「25×40=1,000」である。ここで言う「25の世界」とは、仏教で言う「三界二十五有」のことで、天上界から地獄まで25の世界があるされる(欲界に十四有、色界に七有、無色界に四有があるとされる)。俗に言う「有頂天」とは二十五の有の頂点にある天上界を指す。

 千手観音の尊名は、前述の通り様々な呼び方がある。日本の文化財保護法による国宝、重要文化財の指定名称は「千手観音」に統一されている。(この項、wikipediaより編集)

 

佛は体の営みで人生を教える

 自然の営みが声無き経を唱えるように、佛は己の体の営みで、人生を教えてくれている。上の口から入ったもの(生)は、必ず下の口から出て行く(死)。どんな美味なるものでも、体の中を通って出て行くときは、カスの便として排出される。

 どんな美人も人と生まれて人生を謳歌しても、不美人に生まれて悲嘆に暮れても、死んでしまえば髑髏である。皮一枚の出来不出来が美人、不美人を分けるが、死んでしまえば同じ髑髏である。人生で位人臣を極めてもいつかはその座を去り、この世を去らねばならぬ。それを千手観音菩薩は、髑髏を手に持って教えている。千手観音菩薩の下のほうにある手に持つものは、現実社会での道具を表し、上側にある手に持つものほど、佛に近い世界で使う道具を表している。莫大な財産を集めても死ぬときは裸で旅立つ。

33dsc01355松本明慶先生作千手千眼観音菩薩像(三好輝行先生蔵)20131025日撮影

34dsc01356 どんな美人でも、いくら位人臣を極めても、死んでしまえば髑髏である。

 髑髏を千手に持って、人の人生を教えている。

 

人生パイプライン理論

 人は母親の狭い経道を通ってこの人間界に生まれてきて、人生という長い管の中を通過して死の世界に向う。管から排出されたとき(死)に残るのは骸骨であり灰である。集めた金銀財宝は、単なる所有権であり死ねばチャラである。その人生管を通過する間に出来ることは、集めることではなく、降り注ぐ消化液(師の教え、ご縁)を最大限に活かして、いかに魂のレベルを高めて社会へ還元するかが問われる。良き食べ物が消化吸収されて体の活動エネルギーになり、体作りに作用するのと同じである。

 人生という暗い長いトンネルを抜けると、白い光に満ちた「幸国(天上界)」か、暗い地獄界が現れる。どちらに到達するかは、人生での積善の多寡の差で決まる。人生で何をやってきたかは、魂と体に刻み込まれている。

322

  人生パイプライン理論図

 

人の犯す罪

 ご先祖から預かった体を大事にしなかった罪は、内臓が我慢の限界を超え反乱を起こすことで顕在化する。飽食で過ごした人生は、肥満、糖尿病、高血圧の結末である。その罪は目にも及ぶ。失明の原因の多くは糖尿病が原因である。全て自然の摂理である。

 笑いの少ない人生は、法令線が薄いという人相に現れる。人との付き合いを疎かにした結果である。出あった人にニコッと笑えば頬の筋肉が鍛えられ、彫りの深い顔つきになる。痴呆番組を見て笑わされて過ごした人は締まらない顔つきの人相になる。

 心身を鍛えてこなかった咎が、うつ病、精神病、認知症である。誰のせいでもない。すべて己の行動の積年の蓄積の結果である。

 拝金主義に侵された心は、金を集めても集めても満足できず、99%の富を1%の餓鬼が独占する修羅道にさ迷い込む。それは現代の名医でも直せない。バカは死ななきゃ治らないように、拝金主義に侵されると、何も言っても馬耳東風である。安易な金儲けに迷わされて、世界中が経済の病気に罹っている。佛が説く、足るを知る、利他の心の教えを思い出したい。

 

三好先生の天職

 千手千眼観音菩薩は、三好先生の生まれ年からみて守り本尊にあたる。三好先生の守り本尊が、千手千眼観音菩薩であるから、眼科医が天職であるのは間違いなかろう。三好先生は、多くの眼病に悩む人々を救う佛様のような立場である。それを使命とする仕事に就かれているのは、佛様の差配と思われる。

 

御心の具現化

 その佛様の御心を松本明慶大佛師は、千手千眼観音菩薩像で表現した。それを今回、私は三好眼科で、それも真近かで拝めることができて幸せであった。千手千眼観音菩薩像は患者の皆さんを優しい慈愛に満ちた眼で見守っておられる。その眼入れをされたのは岩田明彩師である。これは芸術作品である。

35dsc01363

 松本明慶先生作  千手千眼観音菩薩像  三好輝行先生蔵

 眼入れは岩田明彩師。優しい慈愛に満ちた眼である。

364k8a9359  見る角度によって表情が変わる。 2018年4月21日撮影

 

2018-04-27

久志能幾研究所 小田泰仙  e-mail :  yukio.oda.ii@go4.enjoy.ne.jp

HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite  Blog: http://yukioodaii.blog.enjoy.jp

著作権の関係で無断引用、無断転載を禁止します。

眼の命を慈しむ(2/9) 三好輝行先生

 三好眼科は新幹線福山駅から徒歩5分の場所にある。2012年に初めて診察のため訪問した時、大勢の人が二階の待合室で診察を待っていた。まるで総合病院のような雰囲気であった。それでも当日はいつもより患者が少ないという。一代で現在の5階建ての眼科医院を築かれたのは、「院長の目指すもの」の書かれた熱い志があったからだ。診察のあと、医院の最上階の特別応接間で厚遇をいただいた。ご縁に感謝です。

 後で、小久保館長さんから頂いた資料で三好先生のご経歴をよくよく見て驚いた。福山市に行く時には、診察結果が心配で、そこまで頭が回らなかったのが実情である。

 

三好輝行先生略歴

1980年 鳥取大学医学部卒、岡山大学医学部眼科学教室入局。

1985年 日立造船健康保険組合因島総合病院眼科医長、

1985年 岡山大学医学部学位授与、

1988年 三好眼科開業、

2003年 高知大学医学部臨床教授、

2004年 広島大学臨床教授。

2013年 白内障手術51,533例(2013年7月31日現在)

2018年 白内障手術66,486例(2018年3月31日現在)

 

表彰、受賞歴

・2005年 ASCRS(米国白内障屈折矯正会議)グランプリ受賞

・2005年 DOC(ドイツ国際眼科手術会議)にて白内障・緑内障部門一位受賞

・2005年 ESCRS(欧州白内障・屈折手術会議)でVideo Festival Overall Winner受賞

・2006年 日本眼科医会長賞、広島県眼科医会長賞、

・2006 ASCRS(米国白内障・屈折矯正手術会議)にてRunner-Up受賞

・2006 DOC(ドイツ国際眼科手術会議)にて緑内障・白内障部門1位

・2007年 第25回ASCRSフィルムフェスティバルグランプリ(2度目受賞は史上初)

・2007年 ビデオコンペティション冬 グランプリ(欧州白内障屈折矯正手術学会)

2度目の受賞

・2009年 フィルムフェスティバル グランプリ(アジア太平洋白内障屈折矯正手術会議)

・2011年 ビデオコンペティション冬 グランプリ(欧州白内障屈折矯正手術学会)

21dsc01347

 三好先生は米国の米国白内障屈折矯正手術学会(ASCRS)で、史上初の2度目のグランプリを受賞されている。不文律で2度はないことになっていた。2005年のグランプリ受賞に続いて2007年のグランプリ受賞は学会初の快挙である。また欧州白内障屈折矯正手術会議でも、三好輝行院長と吉田博則副院長がビデオコンペティション」で2007年にグランプリを受賞されている。

 それ故、西日本では一番有名な眼科医である。現在、白内障手術の予約患者が一時は3,000人待ちであった(2013年9月30日現在、527人待ち)。市内のメガネ屋の社長にこの件を話したら、「そんな偉い先生にすぐに直接見てもらうことは奇跡だ」と言われて、改めて不思議なご縁に感謝である。おかげで、三好先生からお墨付きを頂いた地元の先生に手術をしていただくことができた。三好先生に診察していただけた不思議なご縁に感謝している。

 

2018-04-27

久志能幾研究所 小田泰仙  e-mail :  yukio.oda.ii@go4.enjoy.ne.jp

HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite  Blog: http://yukioodaii.blog.enjoy.jp

著作権の関係で無断引用、無断転載を禁止します。

2018年4月26日 (木)

眼の命を慈しむ(1/9) 三好先生とのご縁

 2018年4月23日、福山市の三好眼科を検診と見学のため訪問した。4年前に三好眼科の三好輝行先生から名古屋市立大学病院の小椋祐一郎先生を紹介してもらい、4年程、名古屋市立大学病院に通っていた。小椋祐一郎先生は、網膜硝子体疾患の治療では第一人者である。この4月9日に小椋先生から、「良くなったので、後は地元の先生に診てもらいなさい」との診断を受けた。その報告と定期検診のための訪問である。また最近、三好眼科が増築をして、その新しい待合室に松本明慶師作の千手千眼観音菩薩像が展示されたので、その撮影が目的である。あいにく三好輝行先生は学会出席のため不在であったが、副院長の吉田博則先生に診察をして頂いた。また事務長の寺本様に全館の見学を案内していただいた。

 

ご縁の経緯

 加齢により白内障を患い、生活に支障が出てきたので、2012年に手術を決断した。ところが1年間ほど通院していた眼科医から、手術する段になったら、「手術は当医院では(難しくて)できません。大垣市民病院を紹介します」と断られてしまった。それならもっと早く言え、と怒りが出た。ともかく眼鏡屋さんに別の病院の眼科を紹介してもらい、そこの先生から「手術をします」と言っていただいた。ただし「普通の人より難しい手術になる」との診断があって心配していた。眼鏡屋は全市の眼科医に出入りをしているので、どこの病院が一番進んだ医療機器を導入しているかを把握している。

 その後、ご縁で松本明慶佛像彫刻美術館(京都)の小久保館長さんと世間話をしていて、眼の手術の話になった。それなら知り合いにいい先生がいるとかで、三好輝行先生(福山市)にその場で電話をかけ、「明日来院しなさい」との話となった。アレアレという間に決まったが、自分は三好先生の詳細は全く知らず、ご縁のある館長さんの勧めなので、ともかく翌々日に遠路、広島県福山市に泊りがけで診察を受けにでかけた(2012年3月)。下記は、その病院のロビーに掲示されていた「院長の目指すもの」のコピーです。

 

三好院長の目指すもの

 「心に残る医療を」を提供するために

 現在、1日に約300人超の患者さんが受診している当院は、優秀なスタッフや最新設備など、最高の医療環境に恵まれています。しかし、常に謙虚さと感謝の心を忘れないように自分に言い聞かせ、祈りながら毎日の診療にあたっています。海外から認められたレベルを“かかりつけ医”として地域の患者さんに還元するとともに、若い眼科医たちに伝承していくことが、私に課せられた使命だと思っています。

 患者さんやご家族からいただく「ありがとう」の言葉は、私たちにとって一番の原動力です。眼科医になって以来、この言葉を聞くだけのために、寝食を惜しんで診療と研究に打ち込んできました。

 大都会と違い、福山市は小さな町ですから、道端や飲食店でばったり患者さんやご家族と出くわすことは日常茶飯事です。皆さんといつどこで出会っても気持ちよくあいさつを交わし、この先も末永くお付き合いしていくためにも、「心に残る医療」を提供していきたいと考えています。

11p1020328

  三好輝行先生(2012年撮影)

  今回の訪問で、待合室に鎮座した松本明慶大仏師作の千手千眼観音菩薩像を真近かで拝めて、またその隣に掲げられた三好眼科の経営理念を見ることができて、大変よかった。千手観音菩薩像は、松本明慶大仏師が800年の伝統の技を現代に通用する芸術の美しい仏像として昇華して創造されている。それに応じて三好輝行先生の病院経営の理念が「最新にして最高の医療体制のもとに眼病になやむ人々と光ある喜びをわかちあうことを使命とする!!」と宣言して、それが千手千眼観音菩薩像と見事にマッチしている。

124k8a9367

 三好眼科の新待合室で(2018年4月21日撮影)

 

2018-04-26

久志能幾研究所 小田泰仙  e-mail :  yukio.oda.ii@go4.enjoy.ne.jp

HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite  Blog: http://yukioodaii.blog.enjoy.jp

著作権の関係で無断引用、無断転載を禁止します。

恵峰師「たねや美濠美術館」見学

 2018年4月12日、彦根市「たねや」内にある「たねや美濠美術館」に馬場恵峰先生ご夫妻をご案内したら、そこには、井伊家が集めた殿様用の陶器や書画が展示されていた。元窯元の主で陶芸に造詣の深い馬場恵峰先生は、目を細めて鑑賞されていた。

 

たねや美濠美術館

 この美術館には、江戸後期から明治中頃までの約70年間に光彩を放った「湖東焼」の銘品の多くが展示されている。湖東焼は、彦根の宝である。金襴、赤絵金彩、色絵、染付、青磁のほか、九谷焼や伊万里焼の写しなど、多彩かつ華麗な品々が約55点も展示されている。

 湖東焼と彦根藩井伊家は深い関係にあり、その造形の深さや独特の風合いには、彦根の歴史が映し出されている。湖東焼は幕末の激動の時代の荒波に呑み込まれて、各地に散在してしまっていた。その湖東焼を、ふるさと彦根の地で現代に残し伝えたいと、「たねや」が2003年9月「たねや美濠美術館」を開館した。同じ湖東焼の名品が、埋木舎にも展示されている。

https://taneya.jp/shop/shiga_mihori_museum.html

 

 私は、この「たねや」にはこの数十年間、年に数回も訪れているが、まだ入ったことがないのはお粗末であった。今回、たままた馬場恵峰先生ご夫妻を昼食に案内して、この美術館に案内することを思いついた。先生を「たねや」で昼食にご案内することを思いつかなければ、一生入館しなかったかもしれない。

 

無事是貴人

 この美術館の一角に井伊直憲公の軸が展示されていた。それが「無事是貴人」である。井伊直憲は桜田門外の変で暗殺された井伊直弼公の跡継ぎである。父の非業の死を自分の人生に顧みて、殿様との立場で「無事」であることの有難さをつくづくと実感していたのだろう。井伊直憲公も井伊直弼公と同じく禅の造詣が深かったのだろう。それが「無事是貴人」だと思う。

 井伊直憲公は書家ではないので、字体自体は馬場恵峰先生の書とは違うが、よい掛け軸であった。こんど長崎に行った時、恵峰先生に「無事是貴人」を揮毫してもらおうと思う。

14k8a9372

 2018年4月20日、馬場恵峰先生宅を訪問したとき見つけた書です。即、入手しました。

24k8a9394 馬場恵峰書 「今日無事」

貴人とは

 禅語「無事是れ貴人」の「無事」とは、平穏無事の無事でもなく、また、何もせずにブラブラすることでもない。「無事」とは、仏や悟り、道の完成を他に求めない心をいう。「貴人」とは貴族ではなく、貴ぶべき人、すなわち仏であり、悟りであり、安心であり、道の完成を意味する。

 私たちの心の奥底には、生まれながらにして仏と寸分違わぬ純粋な人間性、仏になる資質の仏性がある。それを発見し、自得することが禅の修行であり、悟りであり、仏になることである。私たちは、それを外に求めてさまよっている。

「求心歇(や)む処、即ち無事」と、禅師は喝破する。求める心があるうちは無事ではない。「放てば手に満てり」という言葉があるが、「求心歇む処」が無事である。その無事が、そのまま貴人である。

 「但だ造作すること莫かれ、祇だ是れ平常なれ」と、臨済禅師は無事を詳解する。「面倒くさい」「むずかしい」の反対語に「造作なく」という言葉がある。当然のことを造作なく当然にやることが平常であり、無事である。いかなる境界に置かれても、見るがまま、聞くがまま、あるがままに、すべてを造作なく処置して行くことができる人が、「無事是れ貴人」という。

『白馬蘆花に入る -禅語に学ぶ生き方-』細川景一著 1987年 禅文化研究所刊より 原文の一部を簡潔な表現に修正しました。)

 

2018-04-26

久志能幾研究所 小田泰仙  e-mail :  yukio.oda.ii@go4.enjoy.ne.jp

HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite  Blog: http://yukioodaii.blog.enjoy.jp

著作権の関係で無断引用、無断転載を禁止します。

2018年4月25日 (水)

恵峰師のぼやき

世は見せる教育ばかりである。ガンガンと詰め込んでも限界がある。余裕をもって臨みたい。聞く教育がない。聞かせる教師がいない。聞こうとしない。それならば書いてみせようと恵峰は思う。(馬場恵峰師談)

 

 学びとは、自分の手で、眼で、心眼で、足で観なければ身に付かない。体で痛みを感じる体験をしないと智慧はつかない。知識や情報は、本から得ることができても智慧がつかない。

 小賢しい人間が知識、情報を集積して、原爆、水爆、サリン、ビットコイン、仮想空間の世界を作り出した。それを老子は「老子」18章で、「慧智出有二大偽一」(知恵出でて大偽あり)と達観した。その意味は「昔は、自然のままの生活で平和であったが、人間の知恵が進むにつれて素朴な心が失われ、人が踏むべき真の道は廃れて、不要の道徳が起こる。その結果、大きな人為的な偽りが行われるようになった」である。二千年前の言葉である。人は二千年前から進歩していない。

14k8a9378_3

  2018年4月20日、馬場恵峰先生宅で見つけた書です。即、入手しました。

2018-04-22

久志能幾研究所 小田泰仙  e-mail :  yukio.oda.ii@go4.enjoy.ne.jp

HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite  Blog: http://yukioodaii.blog.enjoy.jp

著作権の関係で無断引用、無断転載を禁止します。

2018年4月24日 (火)

2. 人心小器

大佛の器

 大佛とは多くの人の悩みを受け止める大きな器である。それに対して、人の心は様々な人のご縁を受け止める小さな器である。人の寿命に限りがあるがため、その心の器の容量は、大佛のそれに比べればはるかに小さい。ご縁には良縁もあれば悪縁もある。その総量は一定である(ご縁の総量一定の法則)。一つご縁を受け止めるには、時間も労苦も必要である。一つのご縁のため、交通費も使い、身なりも整え、心構えも正し、時間をかけなければ、そのご縁は手に入らないし維持もできない。人の命には限りがある。それ故、悪しき縁を遠ざけ、良きご縁を多く心の器に満たしたいと思う。

  

ご縁の「整理・整頓・清掃・清潔」

 人の器の容量が一定であるから、悪い縁が一つ器に侵入すると、器の中に入れるべき良きご縁の一つが入らなくなる。悪縁は更なる悪縁を呼び、悪魔のサイクルが生まれる。だからそんな縁は断ち切らねばならない。ご縁の「整理・整頓・清掃・清潔(4S)」が必要だ。それは己の意思次第である。意志薄弱な人が悪縁を呼び寄せる。すべて己の責任である。心が良きご縁に満たされた人には、良きご縁に縁のある人が集まってくる。身近で起きた「火事」とのご縁から、その法則を体得した。悪縁にはマイナスのエネルギーがあり、人の眼を曇らせ、行動を鈍らせる。そんな場からは、一刻も早く逃げることだ。運命を変えたいなら、付き合う「人」を変え、居る「場」を変え、過ごす「時」を変えることである。そうすれば「心」が変わる。心が変われば人生が変わる。

 

心の改築

 それゆえお金を払ってでも、悪縁は切らねばならない。悪縁という白蟻の喰われた「心」の改築には、お金と時間と決断が必要である。ヤクザの世界から身を引くためには、落とし前が必要だ。指をつめるより良いではないか。

 『修証義』に曰く「三世を知らず、善悪を弁まえざる邪見の党侶には群すべからず」と。人生でのトラブルに対して、裁判に訴えて勝てる見込みがあっても、得るものが少なく、人生の時間ロスが極めて大きい。そんなことに時間を取られるより、金で解決して、自分の人生の大事に没頭したほうがよい。そのために道具としてのお金が存在する。自分の人生の残り時間は、余命30年として30×365日=10,950日しかない。益少なきことに時間をかけるのは、人生で無駄である。

過ぎ去る時間は命の刻み。一刻の値は血の一滴。

日暮れて道遠し、人生の大事を急げ。

Photo_2

       ご縁の総量一定の法則

    悪い縁が一つ入ると、良き縁が一つ出て行く

 

2018-04-24

久志能幾研究所 小田泰仙  e-mail :  yukio.oda.ii@go4.enjoy.ne.jp

HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite  Blog: http://yukioodaii.blog.enjoy.jp

著作権の関係で無断引用、無断転載を禁止します。