3.8 人生の安全運転
何が人生で最重要かで判断
人生の街道を「自分の体」という乗り物で疾走するには、安全が最優先である。それは、自分の体に対する手術にも当てはまる。それは自動車の運転で問われる課題と同じである。その中でも、普通の運転者より高い技量が求められるテストドライバー資格での最優先事項は安全である。自動車メーカのテストドライバーに問われるのは、3Sの能力である。3Sとは、安全 (Safety)に、素早く(speedy)、滑らかに(smooth)である。これを分かりやすく言いなおすと、次になる。これは全ての仕事のやり方を象徴している。
「自分の子供が急病になって、車で病院に連れて行かなければならない。焦って安全運転を怠れば、事故で病院にたどり着けず、子供が死んでしまう。ゆっくり走れば、時間がかかり子供が死んでしまう。早く病院に行かねばならないが、スピードを出して乱暴に運転すれば、振動や衝撃で子供の容態に悪影響を及ぼし、死ぬかもしれない。安全に、素早く、滑らかに運転して、我が子を病院に送り届ける。これがテストドライバーに課せられた使命である」
この資格の実技試験で、急ブレーキを踏むと一発で不合格である。なぜなら危険の確認・予想ができていないとの判定である。事前に危険を予測できるのに、それを怠った結果が急ブレーキであるからだ。要するに安全確認の心構えができていない。
一番大事な自分の体に、安全性でまだまだ未知な要因がある異物を自分の体に入れる手術は、慎重な判断が必要である。それが手術を躊躇させた。手術直前に急ブレーキを踏んで、今回の手術を回避したのはよいが、人生の経営運転試験では、もっと早く気づくべきで、「まだまだ人生運転の技量が未熟で、合格点に達していないよ」との経営の神様からの声として反省している。
テストドライバー資格試験
43歳のとき、異動があり新職場でテストドライバー運転資格を取得した。当時、上級資格を持った部下の指導下で訓練をした。実技訓練で部下が助手席に座り、運転訓練を受け、部下の教官から「課長は学習能力がないですね」と嫌味を言われながらの運転訓練であったのが懐かしい。たとえ部下でも、車上では教官である。何を言われてもいたし方ない。その後の運転では、安全を最優先に心がけているので、良い訓練を受けることが出来たと感謝している。その後、小さい事故はあったが、大きな事故には遭わずに無事過ごせた。取得した資格は初級の資格であったが、それでも助手席に指導教官が同乗すれば、富士山の近くにあるカーメーカのテストコースで、当時担当部署で開発中の部品を搭載した試験車の運転が出来た。今にして思えば良い経験をさせていただいた。
インプラント年鑑のテーマ
クインッテセンス出版より毎年、インプラント年鑑が出版されている。2010年から2012年までの年鑑(各冊6,000円)を入手した(医学書の高価さに閉口)。2012年の年鑑のテーマは「世界におけるインプラント医療安全を考える」(図1)である。医師の宣伝のように安全であれば、年鑑がこのテーマは取り上げないはず。年鑑のタイトルが、インプラントに安全で問題があることを警告している。
関連エピソード
インプラント手術は無事キャンセルできたが、その時、次の来院予約を入れざるを得なくなり、仮の予約を入れた。しかし、別の病院で2次再検査(心臓のCT)と日程がダブってしまったので、それを言い訳にキャンセルをした。その話を後藤先生(私の英語の師匠)と電話で話をしていたら、「CTはレントゲンの600倍の放射能を放射して、10万人に104人の割合でガン患者を発生させる」とのニューヨークタイムズ記事を教えられた。早々に自宅の新聞の山から引っ張り出して確認した(図2)。また造影剤は腎臓を傷めるから注意との先生の話があり、明日のCT検査をキャンセルした。これもインプラントでのご縁から生じた仏さまからのご配慮のようだ。ありがたいことです。
先生は一度、心臓が停止したが、緊急対応の手際よさと、担ぎ込まれた医療機関が心臓病で有名な病院で、その場に名医も待機していたという偶然にも恵まれて一命を取り留めた。つくづくと運のよさ、とりもなおさず人徳の高さを感じた。どれかひとつでも欠けていたら、もうこの世ではお会いできかった先生とのご縁である。その時、心臓CT撮影で多量の造影剤が使われ、腎臓を傷められた。
医院は治療や検査はするが、病気を治しはしない。病気を治すのは自分の体の治癒力である。過剰な検査や薬は、助けもするが、妨害する場合もある。過度な検査は新たな病気を生み出す。その治療でまた医者にかからねばならない。医師と製薬メーカ、医療機器メーカとの関係で、現在の病院は金儲けコンベアラインとなっているケースが多い。医者通いは自分の体への設備保全である。その選択は、心して構えるべき。
医学雑誌のデータ
人の年間の許容X線量は、1ミリシーベルトである。胃透視でのX線量は、3ミリシーベルトである。CT撮影でのX線量は、10ミリシーベルトである。年間3回以上CTを受けると、ガンが発生する確率が顕著になる。
電気事業連合会のPR資料(図3)
ところが、電気事業連合会が出しているパンフレット資料では、「100ミリシーベルト以下の放射線量では臨床症状が確認されていません」と説明がある。これはあくまで原子量発電を積極的に推進している団体の資料である。「臨床症状が確認されていない」とは一時的な臨床症状であって、長期間にわたる検証ではない。“The New York Times”の記事内容と異なる。電気事業連合会は原発に対して都合の悪いことは言えない団体であるし、放射能の危険を少しでもオブラートの包んで過小に説明したい団体である。同じデータでも、立場や見方が変わるとこうも解釈が変わる。
「放射線Q&A」 電気事業連合会 2011.4 刊
電気事業連合会とは、電力会社9社と日本原子力発電、日本原燃、電源開発からなる組合である。発行は、福島第一原発事故の直後である。このパンフレットは、自分の価値観で公表されたデータを解釈することの重要性を、皮肉にも教えてくれた。
図1 インプラント年鑑
図2 “The New York Times” SEPTEMBER 9,2012
図3 電気事業連合会のPR資料
2017-07-23
久志能幾研究所 小田泰仙 HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite
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