文書道・テクニカルライティング Feed

2017年6月27日 (火)

2.7 段落(パラグラフ)

  段落はそれで一つの論旨のまとまりとして,一つの主文とそれを説明、修飾する従文、各論から構成される。段落の第一文は、その段落の要約文とする。

 

  その段落に、その内容に反した意見、内容を書いてはならない。書く場合は段落を改めるか章を改め反論、反対の意見を記述する。同じ段落で違った論がでては読者が混乱する。これでは読み手は著者が何を言いたいのか分からない。

  ある「文章読本」で、「2~5のセンテンスを続けたら適当に改行すると良い」など書いてあったが、これは間違いである。この著者は、論理性の記述が何たるかが分かっていない。ある論旨で記述している間は、死んでも改行してはならない。たとえそれが数頁になっても、である。通常、たまたま2~5行でその論旨が終わるので改行しているだけで、美しくするために改行しているのではない。

 このことはつい最近でも、朝日新聞社でさえ行われていた。

 

2.7.1 辞書比較

  下記に代表的国語辞典での「段落」の定義を記載する。

 『実践・言語技術入門』朝日選書

  ・段落は、ある話題についての書き手の考えを明確・簡潔に整理して表すための基本的な部分の単位である。

 『例解新国語辞典』

  ・文章のなかで、意味の上でひとまとまりになっている部分。書いたり、印刷したりするときは、段落の最初を一文字分下げてはじめるのがふつう。

 『新明解国語辞典』第3版

  ・文章中の意味の上での大きな切れ目。〔物事の区切りの意に用いる。例,「これで一段落だ」〕

 『広辞苑』第4版

  ・長い文章中の大きな切れ目。段。転じて、物ごとの区切り。

 『岩波国語辞典』第3版

  ・長い文章を幾つかのまとまった部分に分けた、その一くぎり。転じて,物ごとの切れ目。

 “LONGMAN DICTIONARY OF CONTEMPORARY ENGLISH"

  paragraph: a division of a piece of writing which is made up of one or more sentences and begins a new line

 

 

 こういった意味の表現、定義の仕方(定義法は次章参照)の比較からも辞書の善し悪しが判断できる。最初の3冊が合格ラインの記述内容である。国語教育で、段落の意味が徹底されて指導されていない事情は国語辞書の表記を見れば理解できる。購入選定の際は、自分の目でサンプル単語をチェックして辞書を選定するのが辞書選択の一方法である。

 

 段落とは、それで一つの論旨のまとまりとして,一つの主文とそれを説明,修飾する従文,各論から構成される。「段落の第一文は,その段落の要約文とする」がビジネス文書の段落の原則である。その視点から段落について、各新聞の名コラム(と称される)の比較をしたい。名コラムは名文とれさているが、個別の名文が集まってもそれが文章として名エッセイとなるは限らない。

 

久志能幾研究所 小田泰仙  HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite

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書の著作権は馬場恵峰師にあります。所有権は久志能幾研究所にあります。

2017年6月26日 (月)

御礼

 いつもブログを読んで頂きありがとうございます。ブログを開設して昨日(6月25日)で、1か月が過ぎました。当初は、どれだけ読んでいただけるかと不安でしたが、お陰様で1日に平均70回ほどの閲覧実績となりました。1か月目の昨日は、今までで最高の140回の閲覧を記録いたしました。お陰様で、エンジョイブログの人気トップ20にも数回顔を出すまでになりました。

 これも読んで下さり、コメントをして頂ける皆様のお陰です。それが何よりの励みです。今後も精進をして、経営に役立つ良き情報、ヒントを入れたエッセイを書いてまいります。皆様の叱咤激励をよろしくお願いいたします。

 

追伸

 今までは、特定の人だけを対象とした文書を書き、製本してもごく少部数を特定の人だけに配布していました。今回、ブログで公開するにあたり、極めて緊張して、精魂込めて文章を選別・作成・校正・点検・法的チェックまでをしてアップしています。今までは、書きなぐって製本にしてきた感があります。あとから見ると誤字脱字だらけです。その点で、公開する文書を作成し続る「修行」は大変勉強になりました。

  ブログは美人コンテスト、モデルショーの感があります。いくら美人でも、修道院の中にいては、その美貌は磨かれません。衆人の前に己を曝し、自分を磨き、緊張して、構えて己の思いを表現する。それでその美貌がさらに洗練されて超美人に変貌するのです。仕事でも、自社の製品でも同じです。磨いてくれるのは、使ってくれる顧客、見てくれる観客、聴いてくれる聴衆、読んでくれる読者です。仕事とは、己のファンと共に奏でるオーケストラとしての作品なのです。一人だけでは、お客がいなければ仕事とは言えません。

                 

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   2017年6月26日    小田泰仙

2017年6月 9日 (金)

あなたは文書テロリスト?

文書は、情報伝達の飛び道具。

情報は、情けの報せ。あなたの文書は、無情

情報を達しても、相手にしていますか?

                                 

 クライテリア  CRITERIA(規準に則って)

 テクニカルライティングの要点は「クライテリア」である。先ず方針ありきで、その基本方針・考えが明確でないと、書類作成も仕事でも何事も進まない。米国ビジネス社会では、「読みにくく、内容不明瞭な文書を、上司が読まなくても何ら責任がない」とスチーブンソン ミシガン大学教授は断言する。

 米国ビジネス社会では管理職が、受け取った書類を扱う平均時間は、30秒だ。日本社会では、出した書類を読まなかったら、その読まなかったことが責任とされる社会である。そういう点で、日本のビジネス書類には緊張感がない。それに対して、米国ビジネス社会では書類を読んでもらうため、クライテリアを明確にして文書デザインをしている。

 

 文書デザインという概念は新鮮な響きがある。論理構成のない、なぐり書きされた書類やメール文は、文書のテロである。マネージャには日に何通もの書類、電子メールでは日に100~200通が舞い込む。論理構成のない書類は、相手の時間を奪う泥棒である。テロ文書は家庭ある管理職の帰宅を遅くし、管理職にストレスを与え、パワハラの遠因となりかねない。

 

 文書を如何に「設計」するかは、その基本概念の明確化(クライテリア)、書類の概略構想、スケッチ、詳細記述等と、工業製品を作るのと同じ設計プロセスが要求される。多民族社会では以心伝心が通じない。また個室が常識の米ビジネス環境では、文書、書類が最大の意思伝達ツールである。電子メールが普及した現代では、文書での意志伝達の明確化が要求されている。訴訟社会でPL問題も抱えている米国社会では、その書類に書かれた言葉が大きな責任問題にも発展する。そのためにこそ論理的な文書の設計が必要とされる。

 

 欧米でのレポートには、自分の考えと、根拠ある推奨(主張)の付加が必ず求められる。テクニカルライティング演習の課題で、あるレポートを書かされた。その設定・質問には単に「解説を述べよ」とだけとしか記述がなかったので(何度も確認して)、その通りに書いたら、マセィズ教授からケッチョンを食らってしまった。早速、自信を持って確認したはずの設問について、教授に噛みついたが、教授からは「日本ならその解説だけで許されるが、米国人なら常識的に自分の考えと、推奨(主張)を入れてレポートを作成する」と諭されてしまった。

 

 間違っていようがいまいが、自分の考えが重要視される米国社会である。これは前記のクライテリアにも通じる。こういう事例は、なかなか日本では体験できない。自己主張を殺した日本の報告書に慣れていた私には、驚きの体験であった。

 最近の米国政治家の過激な発言は、まず恫喝として言うだけは己の意見として展開するのが本能だ。それを割り引いて言い分を聞かねば、言いなりにされる。彼らは狩猟民族で、日本は農工民族である。

 

文書のオーディエンス(読み手) 

 テクニカルライティングは、英語の勉強でなく、文書の論理構成の学習である。文書には、相手に何かの行動を期待し、実際に行動してもらう目的がある。欧米では文書の書き方によって、然るべき行動がなされず、スリーマイルス島原発事故のような人類の危機や、スペースシャトル・チャレンジャーの爆発による人命の喪失、国家の威信の喪失まで招く事例が存在する。

 

 米国スリーマイルス島の原発事故のドキュメントの事例紹介では、米国における文書・報告書・提案書の記述方法が、人類の危機に発展する深刻な事例として紹介された。米スリーマイルス島の原発事故では、事故数カ月前に、その前兆の報告書を技術者が上司に提出していた。しかしその報告書が読みにくく、かつ論文調に書いてあったため、責任者はその報告書を無視した。その結果がスリーマイルス島の原発事故につながった。それが裁判になって、然るべきスタイルで提案書を書かなかった技術者の過失が問われ、結果として、その上司の管理職は無罪になっている。

 

  この事実は、日米の価値観の相違を表している。日本人の私はこの見解を無責任だと思うし、プロならもっと自分の仕事に責任を持てと言いたい。しかしここには米国社会の個人主義、個室を中心とした会社運営形態で、書類だけで情報交換をされる仕事方式が背景にある。その書類の記述方法で論理的に記述する重要性が出てくる。それが欠如した書類は、情報通達ができない欠陥商品である。

 

 そういう点で日本社会は幸せかもしれない。詳細に書かなくても、然るべき状況、立場のわかる人達がそれ相応に解釈して仕事が運ぶ。「後はよろしく」で。またそこまで言わなくてもと言った社会慣習である。しかしこれは、欧米では通用しない慣習である。

 

 曖昧文書が与える損害

 冗長で不明確な報告書のため、1通につき余分に5分間必要と仮定すると、年間損害を、50万円と試算した。しかし、欧米の現実はもっと大きなロス・悲劇を生む可能性がある。

 100円/分  ×  5人  ×  10通/年 ×100人/課= 50 万円/年/課

 

教養ある英語 

 講義を担当したスチーブンソン教授、マセィズ教授は英語がとてもうまかった。お陰で、私の英語力でも授業にはなんとかついていけた。知性のある人は、相手を見て使うべき単語、語彙、スピードを選択する。しかし教養がないと、相手お構いなしの機関銃のような英語を話し、少々英語ができるぐらいでは、全く理解不能となる。両教授の英語を聞いて、教養のある英語とはかくの如し、と認識した。思わず教授に、「英語がお上手ですね」と言ってしまった。これには先生も苦笑い。

 

   日本語でも、日本語が下手な教師がいる。それは相手のレベルを考えない話し方・教え方をする教師である。何事も相手に合わせた情報伝達が基本である。我々は教養ある日本語を使っているかを自省したい。言葉を使うことだけが、コミュニケーションではない。

図1 武道としての情報設計

図2 ミシガン大学での授業風景・スチーブンソン教授(右側中央が著者)

図3 ミシガン大学での授業風景・マセイズ教授

本原稿は1994年ミシガン大学夏期テクニカルライティングセミナー体験記の再校正版です。

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2017年6月 8日 (木)

ターゲット・メールを発射(改定)

貴方のメールは読まれていますか?

読まれずに無視されていませんか?

 

 ウィーン楽友協会に大垣市の代理人として表敬訪問することが、渡欧の1週間ほど前に急に決まった。その当時、「馬場恵峰卒寿記念写経書展写真集」の出版最終確認と修正で忙殺されていて、楽友協会にアポイントを取る時間余裕がなく、そのままウィーンに向かった。今にして思うと何と愚かなことかと。訪問目的が、美術館目録の寄贈と表敬訪問だから、行けば何とかなる思っていた。

 ところが現地の楽友協会の窓口で、けんもほろろに対応された。窓口女性から「楽友協会の要人にe-mailを送って面会予約をして下さい」である。もしPCを持っていなければ対応不能である。慌ててベーゼンドルファーのマネジャーに、楽友協会の誰にメールを打つべきかをネットで調べてもらった(ドイツ語のHPだから理解不能)。ベーゼンドルファーのマネジャーでも、楽友協会は、敷居が非常に高く簡単には面会予約は取れないとか。ベーゼンドルファーは楽友協会ビルの単なる店子の一つであると。幸いiPadを持ってきていたので、ホテルに戻りメール文を作成した。

 

 前職の会社では、室長、部長、役員には日に100~200通の大量メールが舞い込む。楽友協会には世界中からメールが舞い込むはずだ。その洪水のようなメールの山から優先して読んでもらうには、相応の文書技術が必要である。それは英文も和文も変わらない。聞けば、楽友協会は日本のお役所以上に敷居が高く、返信は2,3週間後が普通だとか。

  そこで役立ったのが今まで磨いてきた和英の文章作成技術とテクニカルライティング技法である。メールでどう書けば、相手がすぐ開封し、すぐ返事をもらえるかを考えた。それを考えた題名と文面にして、面会依頼のメールをホテルから発信した。そのメール題名には話題と目的を入れ、文章の冒頭には単刀直入に要件と、文面には日本,大垣、表敬訪問、守屋多々志美術館の図録寄贈、ブラームス、戸田伯爵夫人、六段のキーワードを散りばめた。小さな辞書しか持ってこなかったので少し苦労をしたが、半日程ホテルに籠ってメール文作成に集中して推敲を繰り返した。そのため予定のウィーン市内観光を諦めることになった。

 返信は半分諦めていたが、2日後に返信が来たのには驚いた。それも亡くなっていると聞いていたビーバー・オットー博士からである。これには心底驚いた。やはり現地現物で、現場に来ないと分からないことがある。

 

 送るメール文に、受信者の心に響く言霊があれば、反応がある確率が高い。お役所的な文面や教科書的な文面では、ダメである。相手の心の中心に突き刺さるメール、それがターゲット・メールである。これは全てのメールで心がけたい要点で、私が前職在職中に、10年間ほど技術者教育で指導してきた。1994年のミシガン大学夏季セミナー受講(自費110万円)が、23年後のウィーン訪問で役立った。自分への投資は、後年に必ず得るものがある。

 

 ターゲット・ストロークとは、相手の心にグサッと突き刺さる言葉や行動、愛情の表現を示すことで、心理学用語である。【ターゲットとは、丸い標的に矢を射ること(Longman Exams 英英辞典)】

 

 退職後、自宅に舞い込む無頓着・無邪気なメールの山を見て、ITマナーの欠如に呆れている。これでは中小企業の経営として無駄が大きく、経費増の原因になっているのではと危惧している。直接に言うと角が立つので、正しいメールマナーの一部を公開します。下図は前職で、新人教育に使った資料の一部です。

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 久志能幾研究所  HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite