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2018年5月 4日 (金)

「猩々軕」の予行練習に出会う

 春の大垣の街並みに流れるお囃子は、大垣まつりが近いことを知らせてくれる。2018年5月3日、憲法記念日の大垣市駅前通りの観光客の状況を調査に行った帰り道、宮町でお囃子が聞こえ、その先を見たら「猩々軕」が練り歩いていた。5月12、13日の大垣まつり出演のための練習だという。近くの蛭子神社で、舞の奉納をしてきた帰りで、若い衆がひと休みをしているところである。5月7,8,9日には、夜の練習があるという。街の若い衆が大垣の伝統を守っている。感謝。

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 大垣市宮町で 2018年5月3日14:20

 

「猩々軕」とは

 この軕は謡曲「猩々」を主題にした「能からくり軕」である。大垣まつりに出演する13輌ある軕の一つである。謡曲「猩々」は五番目物で、能の演目では最後の出し物である。「猩々」は想像上の動物で、オラウータンに似て赤い髪は長く垂れ、顔と足は人に似ていて大酒を飲むと言われる。

 この軕は昭和20年7月29日の大垣空襲で焼失したが、平成13年に56年ぶりに再建され、平成22年に漆、金具、彫刻などを施して完全に復元された。

 

「猩々軕」の掛芸

 この軕の芸目では、軽快な「酒を飲む猩々」の曲が始まると、猩々は舞いながら壺に近づき、汲めども尽きない酒樽に顔を突っ込んで鯨飲する。猩々が壺から顔を上げると、猩々は酒に酔っぱらった赤面となっている。曲が「獅子頭を付けた猩々」に変わると、酔った猩々は興の赴くままに舞い、屋形に入り、出てきた時は獅子に変身している。この時、壺が4つに割れ、中から牡丹の株が浮び上がる。獅子はその牡丹に戯れ、興にまかせて狂ったように舞う。この時、若い衆たちが軕をこの舞に合わせて激しく回転させて、八幡様の門前から走り去る。芝居の幕引きのようなエンディングである。

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059l4a8632  赤い顔になった猩々

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 牡丹の前で獅子に変身

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 若い衆たちが軕を舞に合わせて激しく回転させる。大垣まつりで 2015‎年‎5‎月‎9‎日‏‎9:43

見送り

 見送りには、日展画家和田能玉氏が描いた「白沢怪」と揖斐川町の書家窪田華堂氏の筆になる賛が、豪華に手刺繍で縫い上げられている。賛の漢詩は、白沢怪が中国古代の聖君黄帝に語った言葉である。白沢怪とは、古代インド波羅奈国の剛勇の王である。この言葉は意味深長である。組織の興亡は全て組織のリーダーにかかっている。それは今も昔も変わらない。今の大垣市長に聞かせたい。

 

 黄帝東巡国  黄帝が東国を巡行した

 白澤克玄論  白沢怪は意味深い言葉を述べた

 賢君明俊徳  帝が賢く徳のある政治を行えば

 天祥降子孫  子々孫々に至るまで目出度く栄える

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千匹猿

 上勾欄の下に千匹猿の彫刻があり、全て異なる猿として彫られている。

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11p1060310  収納の建屋

「お頭」保管

 大垣まつりのエンディング「恵比須軕のお頭渡しの儀」の「お頭」保管は、船町、伝馬町、岐阜町、宮町の4町内が一年交代で担当している。宮町の役員の方から、今年は、宮町が「お頭」保管の担当であるという話を聞いた。 

12p1010353_2  「恵比須軕のお頭渡しの儀」大垣八幡神社にて 2017年5月14日21:20

「猩々軕」の詳細は浅野準一郎著『大垣まつり』風媒社(2013年)を参考にしました。

2018-05-04

久志能幾研究所 小田泰仙  e-mail :  yukio.oda.ii@go4.enjoy.ne.jp

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