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2023年9月 7日 (木)

「理論株価」に騙され、地獄を見る

 

 会社の理論株価は、一株当たりの営業利益を公定歩合で割れば出る。それに市場の需給関係を考慮すればよい。しかしその需給関係とその他の要因が、株価に大きく影響する。理論株価を信じて株式投資をすれば、株式相場で地獄を見る。

 

 理論株価=〔一株当たり利益〕÷〔公定歩合〕×〔需給係数〕

   需給係数とは、市場の人気度である。

 そもそも株価を理論的に数値で表せると思ったことが、理系の私が犯した大それた間違いであった。いわば絵画等の芸術作品の理論価格、人間の理論的価値を算出するという試みと同じである。

 どんな世界でも、自分で考えて、自分の世界観を持たないと、勝てるわけがない。理論株価を信じるとは、その株価を出した雑誌社の奴隷となることだ。

 

ビジネス雑誌に騙された

 ビジネス雑誌はその他の装飾計数を付けて、各会社の理論株価を掲載する。愚かで欲にかられた私はそれを信じて、試行錯誤をした。有名ビジネス雑誌を読み漁り、理論株価の掲載された記事を参考に株を買った。しかし勝てたことは少なかった。株は理論通りには動かない。雑誌社は雑誌が売れればよいのであって、理論株価の正しさを証明するわけではない。

 しかし愚かな羊である私は、それに騙されて、捕らぬ狸の皮算用として株を買う。そして大損をする。40年も経ってやっと、そのカラクリが分かってきた。

 会社も生老病死である。その業績を表す株価も生老病死である。変動する株価を理論株価で算出できると思うのが愚かであった。ビジネス雑誌の理論株価どおりになれば、雑誌の読者は、全員大金持ちである。その前に雑誌社が買い占めれば、雑誌社やその編集者が大儲けである。

 しかしそうはならない。上がると思って買う人がいれば、それを狙って売りで儲けようとする人がいるのが株式相場の世界である。キツネとタヌキの化かし合いの世界である。理論株価の単純な考えだけで勝てるわけがない。往々に雑誌にその会社の記事が載った時や、特に日本経済新聞に記事が載った時が、その会社の株価が最高値を付ける。それで一般投資家が騙されてその株を買い、大損をする。まるで詐欺である。だから株式投資で儲かるのは1%の人だけである。後は死屍累々の世界である。敗因は自分の頭で考えなかった、それだけである。

 

人生相場への転用

  理論株価の式は、株式会社だけでなく、会社を構成する人間の能力にも当てはまる。

 

人の理論株価〕=〔付加価値額〕÷〔無リスク利子率〕×〔好き嫌い〕

  〔付加価値額〕はその人が会社で生み出すであろう金額

  〔付加価値額〕は〔学力、学歴、偏差値〕に比例する

  〔無リスク利子率〕は平均的な人間成長率

 

 エリート呼ばれる人は、人間としての理論株価は高い。学力、学歴、偏差値はその理論株価を形成する要素である。

 その同じグループの上司がその人を引き立てる。しかし理論株価が高いエリート全員が、仕事の能力が高いわけではない。会社の人事は好き嫌いである。ある意味で人気投票、好き嫌いである。人事は、それ以上でもそれ以下でもない。同じ大学のエリート仲間だからと、上司としてその人間を依怙贔屓で役員にするだけで、経営能力があると分かっているわけではない。学歴、学力だけで理論価値(人の株価)を見るのでは、人間能力のごく一部だけしか分からない。

 だから、そういう人間に経営を任せると、会社は傾き、倒産する。行政で市長にするとその市は没落する。それを私は目のあたりにした。それが会社や組織の興亡である。そういう経営を60年間続けた結果、前職の会社は市場から消えた。私の市は20年かけて没落した。私はその嵐の現場に晒された。だから会社の寿命は60年であると実感した。今はそれが30年とさえ言われる。

 

私の回りの実例

 前職の職場では、無能な役員が自分の後輩を超優遇した。私はその影響で冷や飯を食わされた。会社から大学院に派遣してもらい、その間、給与まで貰って、博士号まで取らせてもらい、超優遇された社員もいた。その者たちは、それだけ優遇されたのにも関わらず、後ろ足で会社の泥を掛けるが如く、処遇が気に喰わないと退職したのもいた。一人は大学に戻ってしまった。

 要はその人を観る眼の無い役員が若手の将来の理論株価を見誤ったのだ。それで私は、人の理論株価のまやかしを身の回りの人事で実感した。

 

テスラ株

 一時、トヨタの総資産より、テスラの資産価値が大きくなった。自動車業界を知る人には、あり得ない現象である。自動車製造はプラモデル製作ではない。人の命を預かる機械を作る産業である。部品一点ごとに設計方式、製造方法に関して激論を戦わせ、過酷な耐久試験を経て、車の部品として採用される。いい加減な試験ではその真偽が分からない。それが電気自動車のように、パソコンと部品だけよそ集めて簡単に作れると思うのがおかしい。今や、その虚像も化けの皮がはげつつある。

 自動車に採用される部品の検証が不十分で、欠陥があれば、後にリコール問題が出て、会社の存続にかかわる問題に発展する。タカタはそれを胡麻化して、因果応報として倒産した。テスラも電池の不具合を誤魔化して、今や倒産の危機にある。

 テスラの理論株価は、ボロ株と同じだが、大きな裏勢力が温暖化というフェイクで、株の需給関係を暴騰させた。それが社会の真の姿である。それが株価の興亡の現実である。そこでは理論株価などは当てはまらない。

 

楽天株

 楽天の三木谷浩史氏は、人間としての株価(学歴、偏差値、能力、等)で抜群である。三木谷氏が楽天を革命的に変えた。やれ社内英語、携帯電話業界に参入、楽天ワールドの創設、等で70余の事業を展開している。しかし最近は倒産を噂されている。机上の空論の経営論に執着した結果と思う。大学でMABを取っても、それで経営して成功した人など日本にはいない。

 ソニーも経営陣に東大出が増えて、米国流の経営を取り入れてから、鬱病を発する社員が増え、ソニースピリッツが失われ、業績が下がり始めた。人の理論株価がアテにならない実例である。

 

 

2023-09-06  久志能幾研究所通信 2736号  小田泰仙

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