ソニーα7RⅣ+CANONレンズで馬場恵峰書を撮る
2006年から16年間、馬場恵峰先生の書画の写真を撮ってきた。しかしその書画を撮影して製本しても、儲からない。むしろ費用ばかりかかり大赤字である。アホではないかといつも思う。これは、小ばかではできない。大バカでないとやれないことだ。恵峰先生も「私は売れもしない書を大量に書いているので、私は大ばかである」と自分で自慢しておられる。揮毫も撮影も儲けるためにやっているのではない。恵峰先生は後進のための教育教材として書を遺している。私はその歴史を記録に残すために撮影している。
撮っているのは書画ではない。自分の技量と成長度合いを撮っているのだ。できた撮影作品は、馬場恵峰先生の歴史であり、私の歴史でもある。作品を撮れば、その撮影の方法や機材の欠点が見えてくる。ニーズがあるから、よりよいカメラを担いで九州に飛んでいた。
その撮影に約14年間を費やしたが、まともな写真が撮れるようになるのには、10年の歳月が必要であった。最初からベストの写真が取れたわけではない。試行錯誤を繰り返して、やり続けて良かったと思う。
カメラの変遷
そのカメラも2006年から2020年の間で下記の遍歴をした。カメラも今やパソコン並みで、そのモデルチェンジは頻繁である。その分、性能の向上が凄まじいので、新製品が出るとつい買い替えてしまう。最近はカメラのキタムラで下取り制度を使うので、助かっている。
先生の書の撮影に拘らなければ、これだけカメラを買い替えはしなかっただろう。それもご縁である。お蔭でよき経験が出来た。
パナソニック Z30 1410万画素 コンパクトデジカメ
キアノン EOS 20D 820万画素 APSサイズ
キアノン EOS 7DmarkⅡ 2020万画素 APSサイズ
キアノン EOS 5DmarkⅣ 3040万画素 フルサイズ
ソニー α7RⅣ 6100万画素 フルサイズ
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撮影条件
書画の撮影時は、絞り8、感度200、後はシャッタースピードを自動に設定である。絞り過ぎると回析現象を起こして、却ってピント状態が悪くなる。それで絞り8である。
感度もノイズの関係で200がベストである。
ライティング
きちんとライティングをして、照度計を使い、均等に光が当たるようにもした。
最初は福田氏の卓上電気スタンドを借りて書画を照らして撮影した。しかし蛍光灯の色が出るし、光のムラもでるので、専用のパラボラライトに変更した。
その組み立てがめんどうであったが、田添さんに担当して頂いた。
軸は立てて撮影
毎回、パラボラライトの組み立てをして頂いている。
照度計
長物を撮影すると、隅と中央で明るさに差があり、印刷するとそれが顕著になり、照度計で撮影面が一定の明るさになるようにライティングを調整する。それで光むらの解決した。
台形歪み防止
書画の撮影では、レンズを真下に向けて撮影するが、その水平出しが難しい。高いカメラでは、水準器が内蔵されているが、書画の撮影時、レンズを真下に向けて撮影するので、その水準器機能が使えない。それでカメラ背面の液晶面に水準器を置き、カメラが水平になるようにして、この問題を解決した。
ストロボ装着部に付ける水準器も試したが、その装着部にガタがあり、上記の方法に変更した。
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シャッタースピード
絞りは8、感度は200で、シャッタースピードは自動設定とした。そのため、重~い三脚に変更して対応した。九州まで、毎回持って行くわけにいかず、先生宅に常設である。
ピント合わせ
ソニーα7にキアノンのシフトレンズを装着した。しかしその組み合わせでは、自動焦点合わせは機能しない。だから手動でピント合わせである。そのため拡大ルーペを使う。
撮影時はシャッターボタンを押した際、ぶれないように遠隔スイッチで操作である。
これはキアノン一眼レフ EOS 5Dとズームレンズの組み合わせの時代
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レンズ
キアノンのシフトレンズ(TS-Eレンズ)とは、遠近感とピントの合う範囲を制御できて、アオリ機構を搭載したマニュアルフォーカスレンズである。目的に合わせてティルト(レンズを斜めに傾けピントの合う範囲を調整)とシフト(レンズを水平・垂直方向にずらして歪みを矯正)を使い分けることができる。Lレンズなので高画質がある。固定焦点で焦点50mmである。
そのレンズをソニーα7に、特殊マウントをかませて装着するので、自動ピント合わせ機能は使えない。ソニーには、この種のレンズはラインアップされていないので、苦肉の策である。
ソニーのカメラ側はミラーレス、キヤノンレンズは一眼レフ用の仕様なので、特殊マウントをかませれば、装着可能である。
ソニーα7にキヤノンTS-Eレンズを装着
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撮影の応援隊
書画の撮影は、一人ではできない。馬場恵峰先生のお弟子たちの大村熟女隊にお世話になった。特に100m巻物では、撮影が5人がかりである。普通の撮影でも3人で大騒ぎである。
撮影時は、段取りが終わり私がシャッターを切る際には、「皆さん、いきます。息を止めて!」である(笑)。今思うと懐かしくも楽しくもあった。大村熟女隊の皆さんも、普通では鑑賞出来ない先生の秘蔵の書画がまじかに見えるので、喜んでおられた。
撮影が不出来で、結局この作業を3回も繰り返すことになった。それでやっと出版できる状態になった。
ローマは1000年の命、ローマは一日にしてならず。
撮影の労摩は一日にしてならず。
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思わず見入ってしまう馬場恵峰先生の書
書画の位置決め為の段取り中
撮影後の編集作業のトリミング工程を減らすためである。
恵峰先生も時折、筆を休めて撮影現場を「視察」? 2018年10月11日、11:43
しかし今だかって恵峰先生は撮影に関して一度も口を出されたことはなかった。温かく見守るだけだった。時折、その作品を書かれた経緯などを語られた。
今にして思えば、馬場恵峰先生は、撮影の専門分野には、私を信頼しきっておられて、口出しは絶対にされなかった。よき師の教えに感謝である。
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楽しみ
撮影時の楽しみは、撮影の合間の休息で、お菓子を食べながら恵峰先生を交えて雑談に花を咲かせること。撮影中は、恵峰先生は、ひたすら仕事で書を書いておられるが、休憩時には、皆と席を同じくして会話に入り、恵峰先生が人生のお話しをされるのが大変有益であった。
お昼は大村熟女隊の皆さんが食材を持ち寄ってこられ、恵峰先生と奥様を交えてわいわい言いながら食べる。それが極楽であったが、つい食べ過ぎてしまうのが問題である。私は食べる量を控えたいのだが、熟女たちが「小田さん、ダイエットは明日からやればよろしがな、今日は食べましょうよ」という悪魔の言葉に、いつも負けてしまう。九州の家庭料理はおいしい。つい箸が進む。
昼食後、恵峰先生は黙々と書の揮毫に励む。 2018年10月11日、12:36
大村熟女隊は、食事の後かたずけで台所に行き忙しい。机に上に食事の跡。
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2022-08-21 久志能幾研究所通信 2469 小田泰仙
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