墓の納骨室は、人が土に還るための宇宙船
今回(2015年)改建したお墓の文字は、馬場恵峰先生に書いて頂いた。先生には、ご快諾して頂いた。普通の書家は、お墓や石碑等への揮毫は、永遠に残るので嫌がり、まず書いてくれない。恵峰先生に揮毫していただいたことは、ありがたいことです。
馬場恵峰先生のご先祖は、武田家の武田四天王といわれた馬場信春公である。武田三代に仕えた40数年の間、70回を越える戦闘に参加したが、長篠の戦いまでかすり傷一つ負わなかったという。このため「不死身の馬場美濃」、「不死身の鬼美濃」と評されている。井伊家の赤備えは、もともと武田信玄軍団の赤の装備に由来する。徳川家康が、徳川四天王と称された井伊直政の武功を称えて、赤備えを許したというご縁である。
納骨室内部に梵字を彫る
お墓の納骨室内の五面に梵字を彫ることにした。ご先祖様に安らかに眠っていただく環境を作るためである。何時かは自分も入る寝室である(予定では38年後?)。
この発想は、2015年3月12日に馬場恵峰先生宅で、三重塔と五重塔の写真撮影をした時のことが頭にあり、今回の発想となった。その時は今回のお墓建立の話は全くない状態である。これも恵峰先生とのご縁の賜物である。さすがに石芝台の狭い内部側面に般若心経の字を彫るのは難しく梵字とした。
納骨室内の5面に刻む梵字は納骨室内が一つの浄土であることを象徴する文字である。下図のように梵字を5面に配置することで、金剛界曼荼羅の世界を作る。
供養塔で外側に梵字を配置した例は多いが、内部に梵字を配置した事例は本邦初ではないかと、石屋さんは言う。完成してお墓を封印すれば、納骨室内部は見えない。これは私のこだわりである。
これは恵峰先生宅で、三重塔と五重塔の内部に書かれたお経の撮影をして思いついた事項である。恵峰先生とご縁が無く、この三重塔と五重塔に出会わなければ思いつかなかった。恵峰先生とのご縁に感謝である。
お墓は人が土に還る宇宙船
納骨室内に敷いた土は山土である。お墓とはお骨を土に還す装置である。土の上の置かれたお骨は、80年経つと自然と土になる。お骨を納骨用の陶器の壺に収めただけでは、土に還らない。お墓は浄土へ旅立つ宇宙船なのだ。
納骨室内の梵字
納骨室内の側面まで磨いているので製作工数が大変である。普通は、納骨室は外から見えない場所なので、磨いて仕上げることはない。その分、コストが上がるから、石屋さんはやらない。6年後の今(2021年)、これを回想して、よくやったと呆れる思いである。今でもやっておいてよかったと思う。将来の自分の居場所を造ったのだ。ご先祖様も喜んでいただける。
今、このお墓を作ろうとしても、やれない。馬場恵峰先生は今年亡くなられたし、私の体力も気力も金力もない。新型コロナ禍で外国から材料も輸入できない。このお墓の建立の打ち合わせの為、石屋さんは数回、中国に出張された。思いついた時、やるべきことをやってよかったと思う。
三重塔と清龍寺・寛旭和尚から贈られた観音像(2014年6月26日)を納めた三重塔(恵峰先生宅で撮影 2015年3月12日)
恵峰先生と管主寛旭和尚
寛旭和尚は将来の中国仏教界のトップに立つ方 福田琢磨氏撮影
2021-07-20 久志能幾研究所通信 2095 小田泰仙
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