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2019年10月25日 (金)

引き上げられた死体には手がなかった(改訂)

水没事故の凄惨状況、20年前と変わらず

「台風19号「車中死」が3割」

 上記表題の記事が、日本経済新聞の社会面に掲載されていた(2019年10月24日)。台風19号で、死亡が確認された84人のうち、3割(25人)が車で移動中の「車中死」とみられることが分かった。

 25人が、車を運転中に崩壊道路から川に転落したり、車が水没して水圧でドアが開けられず、車中で死亡した。

 私が20年前の危機管理として、対策した車内ハンマー装備の必要性を2017年にブログで公開したが、あまり認知されていないようなので、再度、このブログで啓蒙活動をする。

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日本経済新聞 2019年10月24日

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水没事故の凄惨さ

 2003年頃、ビスタ刈谷店の松本透課長(当時)から聞いた怖~いお話である。実話である。

 1992年頃、この課長さんの友人の知り合いが、知多の佐布里池に車ごと落ちる事故を起こした。事故を起こしたのは二十歳過ぎの男性で、若いガールブレンドも同乗していた。事故は昼間に起きて、それを目撃した仲間が助けようと水中に潜り、内部で窓ガラスを必死に叩いている2人を発見した。しかし水中のため車外からでもドアを開くことができず、結局、警察に助けを求めた。警察が車を引き上げた時は、すでに2人共死亡していた。恐ろしいことに、引き上げられた男性の手が無くなっていた。

 男性は車が水没してから脱出しようと、必死に窓ガラスを割るため、手の甲で叩き続けた結果、手の骨が全て砕けてしまい、結果として引き上げたときに手がないという凄惨な姿となった。

 

車の安全設計が仇

 最近の自動車の車内には、安全化設計と軽量化設計のため、ガラスを割ることができる部品は車内に存在しない。また事故を想定した強度設計の車のガラスが、人間の手で割れるわけがない。また水没の場合、水圧でドアは開かないし、電気も駄目になるので、パワーウイドウも開かない。悲惨である。

 2000年10月の愛知県下の記録的な水害時も、刈谷の主婦が自動車ごと用水に水没して、死亡したとの痛ましい事故が身近で起こっている。

 

ハンマー兼ハサミ搭載の必要性

 この種の事故の自己防衛手段として、車内搭載のハンマーが必要である。さらに車が横転した場合の脱出時には、このハンマーにハサミ機能が必要となる。横転して車が火災になった場合、車から脱出できないと、生きたまま焼かれることになる。

 

火災の危険性

 国土交通省の発表では、平成25 年に発生した車両火災事故件数は1,220 件、前年の平成24 年は1,099 件で、毎年1,000 件以上の車両火災事故が継続して発生している。冒頭に話は30年程前の話であるが、状況が変わっているわけではない。むしろ電気自動車・ハイブリット車の普及、電子機器の増加に伴うバッテリーの高容量化で、車両火災の危険性は増している。

 

水没の危険性

 車は水没に弱く、車がドア下面から30cmも水没すると、脱出の緊急性が増す。それが60cmになると、ほぼ脱出は困難になる。車輪が浮いた状態では、更に状況が悪くなる。(JAFの調査)

 

車の横転時の危険

 私は車の横転時に、車内からシートベルトを外して脱出する難しさを検証したビデオを見た。車は横からぶつけられると簡単に横転する。

 最近、電気系統の配線が多くなった車には、火災事故が多いという。横転した場合は、自分の体重のためシートベルトが体に食い込み、簡単にシートベルトのロックが外せない状況が実験で分かってきた。その場合は、シートベルトを切って脱出するしか方法がない。いくら自分で運転に気をつけても、信号無視の車に横からぶつけられると、簡単に車は横転する。側面からぶつけられると、ドアが開かなくなり、火災になれば悲惨である

 それで、1998年からこのハンマー兼ハサミを自車に装備した。

 

危機管理として対応

 私は松本さんの話を聞いて、すぐ車にハンマーを乗せた。ただし乗せただけで、固定をしていないと駄目である。この種の事故の場合は車の姿勢がどうなっているか保証の限りでなく、その非常時にハンマーがどこかに飛んで行っていて、それに手が届く保証は全くない。これは運転席近くにキチンと固定すべきだ。

 人によってはカナヅチやナイフをこの目的で装備している人もいるが、車のガラスを割るのに、普通のカナヅチでは芳しくない。なにせ車のガラスは、事故を想定した強化ガラスである。少々の衝撃では割れず、単にヒビが入るだけである。ガラスを割る機能として、ハンマーの先端は90度の鋭角さが必要である。

 最近のニュースで、異常者が石で被害者のフロントガラスを割ろうとするドライブレコーダーの映像が流れた。その映像では、フロントガラスにヒビが入るだけで、割れなかった。もしこれが、先端の尖ったハンマーで叩くなら、フロントガラスは、粉々になるはずである。そのように車のガラスが設計されている。

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     車搭載のハンマーの形状

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保安部品として

 カーパーツショップに行くと、いろんな種類のハンマー製品が売られているが、これは保安部品と考えて、純正品が勧められる。サイドパーティーの部品でも値段の差は、車の価格、己の命の値段から見れば微々たるもの。私の購入したトヨタ純正部品で、定価3,800円(当時)。

 

人生の危機管理

 幸福はお金で買えないが、不幸は少々のお金と決断で避けることができる。お金があってもそれに投資をするとの決断がないと、不幸は避けられない。わずか2,3千円のことだ。これはお金の問題でなく、考え方と決断の問題である。保険としてこのハンマーを使わずに、その役目を終えることほど幸せなことはない。これが危機管理の鉄則である。またこのハンマーは他車の事故の救援にも使える。事故はどんな場合も悲惨である。2000年に車を更新した時、このハンマーを外して、新しい車にそのまま付け直した。これは一生ものだ。2019年の今も、このハンマーは現役である。

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 自車に搭載したハンマー

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 松本店長さんの話では、現在でもこのハンマーの存在を知っている人は稀で、あまり装備をしていないという。それは2003年当時の話しであったが、現在でもそれは変わっていない。

 車のカタログにも、このハンマーの記載は隅に小さく載せてあるだけとか。本来なら標準装備にすべき保安部品である。

 自動車会社に対して、「ハンマーを標準装備にするべき」と声を大にして言いたい。また、車を買う時、このハンマーを勧めてくれないようなディーラーからは、車を買うべきではない、と言いたい。

 

自分の身は、自分で守れ。

 トヨタ自動車「中興の祖」石田退三氏曰く「自分の城は自分で守れ」。

 

2019-10-25 久志能幾研究所通信 №1379   小田泰仙

初稿 2017年6月23日

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