日産の社是が示す「ゴーン汚染」
ゴーン氏の逮捕を受けて、ゴーン時代に制定された日産の社是を見直してみた。社是は会社の憲法である。社是を見れば、会社の行動が分かる。この社是は、ゴーンの考え方の影響を色濃く受けていると判断した。
ゴーンはgone、行っていってしまった。もう帰らない…..♪
日産のミッション
私たち日産は、独自性に溢れ、革新的なクルマやサービスを創造し、その目に見える優れた価値を、全てのステークホルダーに提供します。それらはルノーとの提携のもとに行っていきます。
(日産のホームページより)
この社是は「メチャメチャ」に違和感がある。ゴーンが、メチャメチャに会社の金を私用に使いまくったことの遠因を思い起こさせる。
ミッションの画面で、黒い車が後姿を晒して、ブレーキランプの赤を灯して、暗い未来の曲がり角を目指して走っていく。まるで日産の現状を象徴しているような風景である。写真の車は明らかに、カーブの車線を逸脱して曲線部にまっすぐに突っ込む姿である。発展する車の進行方向なら、右向きである。この車の進行方向は左向き。まさに闇道に落ち込む姿である。こんな写真でいいの? この黒のスカイラインはスカのライン? 昔、明るく輝いていたスカイラインは今いずこ?
毒自性
社是の日本語の文章として「独自性に溢れ、」はどこを修飾した形容句なのか。文言が「、」で区切られているから、どこにも形容せず、単独で浮いている文言である。また他の動詞が他動詞なのに、自動詞とリズムを乱している。消費者が、車に求めるモノの最優先は、安全に移動する手段の提供である。
日産の歴史は、財閥の総帥鮎川義介が金儲けのため1936年に米国のグラハム・ペイジから設計図や設備を買い、技術者などを連れてきて、日本で自動車生産を始めたことに始まる。日産のどこにも「独自性に溢れ」る車を作ってきたDNAは見当たらない。
同じ時期、豊田喜一郎は、図面も人づくりも鋳造も生産技術も自分たちで作って、国産車を開発した。米国から全てを導入して車を作ったのでは、お国のためにならない。豊田喜一郎が自動車を始めたのは、車作りでお国に尽くすためであった。豊田佐吉が「俺は繊維でお国に尽くした。お前(喜一郎)は車でお国に尽くせ」との父の言葉に従ったのだ。
価値創造
目に見える価値は大したものではない。それなら、うわべだけの価値である。日本の企業の価値は目に見えないところにある。その価値の大事さは、金でしか評価しない拝金主義者のゴーンには見えない。だからこんな文言の社是となる。
誰のために
日本の会社の最優先は社員であって、株主ではない。株主が会社を背負っているわけではない。社員が会社を支え、発展させている。それを「全てのステイクホルダー(株主)に提供します」の言い方は、欧米の拝金主義者の経営者の言い分である。日本の経営者なら絶対にいわない。末尾のトヨタの社是と比較をされたい。
世界の株主は、社員の首を切って経費を削減するゴーンに拍手喝采なのだ。株主は、配当さえあれば、社員の生活など知ったことではないのだ。なにかおかしくないか。社員こそ、新しい価値を生み出してくれる財産なのだ。欧米の拝金主義者にとって、社員は費用のかかる経費扱いである。だから社是で「全てのステークホルダーに提供します。」という愚かな発想になる。そこに社員のためという考えはない。
顧客の求めるモノ
顧客が車に求めるのは、独自性より安全安心である。会社は「革新的でなくても」よい。安全に安心して走れる車を提供してくれればよい。口先だけの社是だから安全に不安を招かせる無資格者車検問題が露見するのだ。ゴーンは問題が露見しても、公式の場にも顔を出さなかった。顧客が求めるのは「信用」である。
奴隷の社是
社是にルノーの名が出ることがまた異様である。世界中の社是を探しても、他社の名前を入れた社是など見たことがない。「自社はルノーの紐付きです」と宣言した奴隷の言葉である。何時までもルノーが存続するわけではない。GМでさえも潰れた時代である。もっと社是で言うべきことがあるだろうと言いたい。
参考 トヨタの基本理念
- 内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民をめざす
- 各国、各地域の文化、慣習を尊重し、地域に根ざした企業活動を通じて、経済・社会の発展に貢献する
- クリーンで安全な商品の提供を使命とし、あらゆる企業活動を通じて、住みよい地球と豊かな社会づくりに取り組む
- 様々な分野での最先端技術の研究と開発に努め、世界中のお客様のご要望にお応えする魅力あふれる商品・サービスを提供する
- 労使相互信頼・責任を基本に、個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める企業風土をつくる
- グローバルで革新的な経営により、社会との調和ある成長をめざす
- 開かれた取引関係を基本に、互いに研究と創造に努め、長期安定的な成長と共存共栄を実現する
トヨタは、'92年1月「企業を取り巻く環境が大きく変化している時こそ、確固とした理念を持って進むべき道を見極めていくことが重要」との認識に立ち、「トヨタ基本理念」を策定いたしました。('97年4月改定)
2018-11-23 久志能幾研究所 小田泰仙
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