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2018年11月29日 (木)

磨墨知410-1.  時間を観る目を養え

 時間は観ることができる。時間とは命である。命を持った人間の行動を観察すれば、時間の使い方の真贋が分かる。時間の使い方の真贋を見極めるよき目を持っていても、自分の行動がそのようにできるかどうかは別である。しかし、意識して真贋を見る訓練をしていれば、人様よりも良き時間の使い方はできるはず。

 骨董屋の小僧は、ご主人から常に本物の骨董品だけを見せられて、真贋の見分けの修行をするという。時間の使い方の本物を探して修行をしよう。いつかは時間の使い方の名人になれるはず。

 

作品を観る目を養え

 松本明慶大仏師は、師である野崎宗慶老師から「作品を観る目を養え。」と教えられたという。自分の技術よりもほんの少し観る目を進めること、目が少し腕より良いくらいが丁度よいということである。

 自分達は、自分の人生という命(作品)を彫っている仏師である。素材から多くの部分を削り取らないと作品が仕上らない。削り取る過程で痛みも歓びもあり、人生の創作を体験する。削り残しが多い人生とは、未完の人生である。自分の人生レベルより少し進んだ目で、自他を観察して、よりよき時間を駆使して人生を完成させるのが、人間に生まれた責務である。自分の後ろにはご先祖様の期待がある。

 

削りくずの時間

 仏像彫刻の工程では、切りくずは、粗削りから中削り、仕上げ削りと段々と小さくなっていく。松本明慶さんが留守をして帰ってきて、弟子の削りくずを見れば、弟子の仕事の時間を見ることができるという。仕事が正しい行程でないと、仕事が前工程に戻ったりして、その削りくずが一定でないという。だから、それは削りくずを見れば一目瞭然だという。明慶さんは削りくずで時間を見ている。

 

言葉の時間

 ある会社の土壌汚染問題で、その後処理工事の報告会への参加依頼の連絡がきた。その案内書の題名が「リスクコミュニケーションの案内」であった。報告会の会議名を美化して「リスクコミュニケーション」では、その案内受けた方は、訳が分からない。文書内容をジックリ確認して分かったことは、言い換えれば「出席依頼 弊社の土壌汚染対策工事の報告会」という会議案内なのだ。

 そんな小手先の「美しい」会議名にするから、本質からずれた報告会、対策になるのだ。それでは時間が無為に過ぎていく。その会社が作る会議の題名だけを見れば、その会社の時間の流れを見ることができる。

 2018年11月23日、依頼を受けて、その報告会に参加した。その報告会の説明では、結論の表明が曖昧で、ぐだぐだと詳細の説明がされた。それでは、企業の時間、聞くほうの時間の無駄となる。要は、「役所との書類の対応で計画が遅れ、当初の日程が遅れました。しかし、問題なく工事が進んでおります」だけなのだ。

 言葉は言霊といって、命が籠る。時間はシーケンシャルに進んでいく。それを言葉遊びで胡麻化しても、時間は戻ってこない。人生のやるべき時に、やるべきことをやらないと、取り返しがつかない。会社の役員も、依怙贔屓で若くして偉くなっても、やるべき苦労をしていないから、不祥事を起こしやい。そんな事例が日本に絶えない。若くして流さなかった涙は、年老いて後悔の涙となる。

 

2018-11-29 久志能幾研究所 小田泰仙

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