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2018年5月 1日 (火)

眼の命を慈しむ(8/9) 福山分室

 下図は、三好先生より接遇して頂いた三好先生の自宅応接室である(2012年当時)。三好眼科病院の6階の自宅内にある応接室兼美術館である。後で松本明慶大仏師の図録を見ていたら、「松本明慶仏像彫刻美術館 福山分室」蔵という佛像が多くあった。三好先生の名刺をよくよく見たら、「松本明慶仏像彫刻美術館 福山分室 館長」とあり、この応接間の存在に納得した。

 2018年現在、福山市内に正式の「松本明慶仏像彫刻 福山分室美術館」を建てることが決まり、計画が進行中とのこと。

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展示されている仏様の紹介

千手千眼観音菩薩像

 この仏様は2012年に訪問した時はなかったが、2回目の2013年に訪問した時に鎮座されており、そのお顔の美しさに驚嘆した覚えがある。当時、三好先生の自宅応接間に置かれていた千手千眼観音菩薩像は、あまりに出来が良いので、松本明慶師も手放すのが辛いらしく、完成してもなかなか福山に納佛してくれなかったと三好先生がぼやいていた。この千手千眼観音菩薩像は、現在は新しい待合室で患者さん達を慈愛に満ちた眼で見守っている。

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子安観音菩薩

 「松本明慶仏像彫刻美術館 福山分室」で見どころの仏様の一人が、子安観音菩薩である。この5人の赤子と観音菩薩像は一木から彫られている。明慶師の技が最高に発揮された仏様である。優しいお顔と眼差しが魅力的である。

 赤子とは、その仏に一番近い存在である。邪心を持たずひたすら母の愛を信じて生きている。今は邪心に満ちた己も、生まれた時は佛に近い存在であった。それが今は汚れた存在になってしまった。それを拭う修行が必要と諭してくれる仏像である。

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ひな人形

 「松本明慶仏像彫刻美術館 福山分室」で、さりげなく飾られたひな人形も隠れた名品である。ひな人形の黒髪は、端渓の硯で磨った墨を和紙で濾し、胡粉仕上げの下地に墨で髪の一本、一本が繊細に描かれている。胡粉地とは胡粉(貝殻の粉)と膠で混ぜ合わせて作る。男びな女びなの後ろには鳥居と三宝に乗った宝が描かれている。その宝とは女性のために働くことである。家を建てる甲斐性である。服に描かれた松は、冬でも枯れない常緑樹で、女性への変わらぬ愛を象徴している。鳥居の下に紐が描かれているが、それは人を束ねる人となれという願いが込められている。

 女びなの後ろには「※」印が描かれているが、それはお米を表し、家の食を守るとの意味である。そこに描かれた升は、家計を取り仕切る意味である。

 さりげなく作られたひな人形にも、松本明慶大仏師の魂が宿る。岩田明彩師の彩色の技が光る。 本体は楠、台座は桧である。

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 応接間に鎮座した不動明王坐像には、腰を抜かし、圧倒された。

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2018-05-01

久志能幾研究所 小田泰仙  e-mail :  yukio.oda.ii@go4.enjoy.ne.jp

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