3-2.人は何を目指し、何のために働くのか
人はパンのみに生きるにあらず。また給与のために働くのではない。また、環境の良い場所で働くのがモチベーションの向上に繋がるわけでない。
ネッツトヨタ南国では、採用面接とその後の面接に200時間をかけて、何のためにこの会社で働くかを確認しあう。その過程で、人生での働く意味を確認させる。
転職・離職の激しいこの車販売業界でありながら、ネッツトヨタ南国では退職者がほとんど出ないという驚異的な定着率を誇る。
新人教育「修身」
私は、思うところがあって2004年、前職場の新人教育で「修身」という講座を新設して講義をした。そこで新人に質問したのは「貴方がたは、何のために働くのか?」である。答えは様々で「お金のためです」「生活のためです」「趣味を生かすためです」…..
そこで私は落とし穴を用意して続けて質問をする。
「計算を単純化して年収1千万円とすると、定年まで30年間で収入総額は3億円である。今、目の前に3億円が提供されたら、貴方はどうするのか?」と問う。
「遊びます」「趣味に生きます」、「世界旅行をします」、「テニスをして過ごします」、「貯金をして働きます」、「起業します」、と答えは様々である。
「では今から30年間、毎日、朝から晩まで趣味(テニス、映画等)だけをして過ごすのか?」と追い打ちをかけると、新人は答えに詰まってしまう。私は、その姿を見るのが楽しみ(?)であった。
趣味と仕事の違い
遊びや趣味は、仕事の合間に息抜きでやる分には、楽しくてよい。しかし遊びとはいえ、それを1週間も続けてやり続けると辛くなる。それに対して、仕事はやればやるほど楽しくなる。それが仕事と遊びの違いである。仕事に命はかけても、趣味や遊びには命を掛けれない。
西洋思想と東洋思想の「働く目的」
人が何のために働くかの理論的解析として、「ハーズバーグの動機づけ・衛生理論」や「マズローの自己実現理論」が経営学で有名である。私にはこの両方の理論は、西洋の個人の欲望を成就させることを前提としており、日本人の考え方には違和感を覚える。
「ハーズバーグの動機づけ・衛生理論」では人間は成長しようとする欲望の存在として2つに分類する。人として働くことの理論に利己的な考えを垣間見て違和感を覚える。
マズローの「マズローの自己実現理論」でも、自分だけの存在の利己的な実現と見えてしまう。自然と社会と調和して生きてきた日本人の感性とは違和感がある。我々は自然と社会の共生の中で、自分の存在を自己主張しない存在と意識してきたのではないか。西洋の働くための理論は、自分中心である。
ハーズバーグの動機づけ・衛生理論
この理論は、米国の臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した仕事における満足と不満足を引き起こす要因に関する理論である。
この理論では、人間が仕事に満足感を感じる要因と不満足を感じる要因は、全く別物であるとする。人間には2種類の欲求があり、苦痛を避けようとする動物的な欲求と、心理的に成長しようとする人間的欲求の欲求があるとする。
苦痛を避けようとする動物的な欲求を充足しても、人間は不満足感が減少するだけで積極的な満足感を増加させえない。また、たとえ心理的に成長しようとする人間的欲求を充たせなくても、不満足感が増加するわけではないと考える。つまり、仕事の満足感を引き起こす要因と不満を引き起こす要因は違い。不満要因(衛生要因)を除去しても、満足感を生み出せない。それは不満足感を減少させる効果しかなく、仕事の満足感を引き出すには「動機づけ要因」に取り組むべきとする理論である。
やる気が高まる要因は、達成、承認、仕事そのもの、責任である。
やる気が損なわれる要因は、会社の政策と経営、監督、上役関係である。
マズローの自己実現理論
米国の心理学者アブラハム・マズローは、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」と仮定し、人間の欲求を5段階の階層で理論化した。その階層は、ピラミッド状の状態で、人間の基本的欲求を、高次の欲求(上)から並べる。
自己実現の欲求
承認(尊重)の欲求
社会的欲求 / 所属と愛の欲求
安全の欲求
生理的欲求
2018-04-03
久志能幾研究所 小田泰仙 e-mail : yukio.oda.ii@go4.enjoy.ne.jp
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