トヨタのDNA
長野県茅野市の蓼科山聖光寺は、トヨタ自動車が交通安全祈願と事故で亡くなられた人の供養、負傷者の早期回復祈願のために建てられたお寺である。毎年恒例の七月の夏季大祭が執り行われ、2017年は7月17日に交通事故者慰霊萬燈供養、18日に交通安全夏季大法要が執り行われ、トヨタ自動車の豊田章一郎名誉会長、内山田会長、豊田章男社長をはじめ関係役員とトヨタ自動車販売店協会などから多数の方々が出席された。協豊会からは信元会長と各地区の代表副会長が出席し、会員の皆様の交通安全を祈願した。詳細は下記、協豊会HPを参照ください。
この大祭の行事は、他の自動車メーカではあまり聞いたことの無い。これは豊田佐吉翁が、トヨタ自動車の創業者の豊田喜一郎氏に、「俺は織機で御国に尽くした。お前は自動車で御国に尽くせ」との遺言と豊田綱領に「神仏に尊崇報恩感謝」と記したように神仏への敬いの心の現われである。豊田佐吉翁の頭には金儲けではなく、報国の精神があり、結果として事業が成功したのであって、金儲けがうまかったから、成功したのではないと思う。
トヨタ中興の祖と言われる石田退三氏は、交通事故死者が1万人を超えていた交通戦争と言われた時代、会社の執務室に観音様(お地蔵様かも)の像を置き、毎日、犠牲者を悼み交通安全を祈念していたという伝聞がある。
聖光寺 2014年7月18日 協豊会ホームページより
豊田綱領 (豊田の5つの精神)
1.上下一致、至誠業務に服し産業報国の実を挙ぐべし
1.研究と創造に心を致し常に時流に先んずべし
1.華美を戒め質実剛健たるべし
1.温情友愛の精神を発揮し家庭的美風を作興すべし
1.神仏を尊崇報恩感謝の生活を為すべし
昭和10年10月30日、豊田佐吉の6周忌にあたって、全従業員が整列した佐吉翁の胸像まえで、佐吉翁の信任が厚かった取締役支配人・岡本藤次郎が朗読・発表(試作車を完成させ、国産自動車生産の目処がたった時)
社是に「神仏を尊崇報恩感謝の生活を為すべし」とはなかなか書けない言葉である。その精神がトヨタのDNA中に流れているようだ。目には見えないご先祖や神仏を大事に精神が今のトヨタを創ったと思う。
欧米企業の会社理念
欧米の企業の会社理念(社是)には、神仏への感謝、ご先祖、お国へのご恩返しの思想はないようだ。あくまで個人主義の延長で、会社として会社主義の極まりが多い。それの行き着く先が成果主義、グローバル経済主義で、結果として富の偏在、格差の拡大ではないか。
日本の自動車メーカの社是
日本の主要な自動車メーカの社是を比べてみると、日産とマツダの社是にはミッションという言葉がある。日本企業の社是とは違和感がある。共に欧米の企業に乗っ取られた会社である。それが故、欧米の価値観が社是に表れている。
ミッション(mission)とは、ラテン語のmittere(ミッテレ。送る、つかわす)から派生した語であり、人や人のグループに与えられた、特に遠方の地へ行き果たすべき役割、使命、任務である。イエス・キリストが弟子たちに与えた、遠方へ行き福音を広く人々に伝えるという使命には、強い目的意識、強い使命感等の意味がある(自分を超えた何かによって宣告されるように感じられる)。だからミッションと聞くと殉教者的な犠牲を強いられるイメージがあり、日本の風土に合わないと思う。リストラ後の日産を辞めた社員の言動を見ていて、つくづくとそれを感じる。それで会社として成果が上がるとは思えない。けっかとして創業90年後にルノーに乗っ取られた。その挙句、2017年に拝金主義に起因すると思われる検査員の不正事件を起こしている。その記者会見の場に、ゴーン会長は姿を見せない。誰がそんな拝金主義、成果主義オンリーの風土を作ったのか。
社是の位置づけ
社是とは社員の目指すべき行動規範で、自分達に夢に実現のため会社としてやるべき規範である。「是」とは正しいこと、つまり会社として正しい道を示した行動規範である。神仏を敬いご先祖を祭り、自主的に仕事に仕えて社会に奉仕をする。結果として会社の業績が向上し自分達にも返ってくる行動と、神からの強制で社会に奉仕をする行動とを比較すると、その差がお墓つくりに重ね合わせて見ると興味深い。
トヨタ以外の3つの会社の社是では感謝というメッセージが感じられない。「私達が偉いから車という最高の製造物を君たちに作ってやってあげるのだ」との上から視線が伝わってくる。
日産のビジョン&ミッションは、提供、寄与、プログラム開発とか何か他人事である。過去の遺産を食い潰して、結果としてトヨタより儲かっていない日産の社長が10億円という報酬を得ているのは日本人として違和感がある。強欲の極みで格差社会の象徴のように感じる。
日産のビジョン&ミッション
ミッション
「未来への投資」
未来を志向する人々が、“どのような社会に生きたいか”を実験し、体験し、思索する機会を提供する
目標
ミッションを実行することにより、社会的価値の創造に寄与する
活動方針
・多様性を促進するプログラムを開発する
・社員の社会参加を促進するプログラムを開発する
マツダの社是
Vision(企業目標)
新しい価値を創造し、最高のクルマとサービスにより、お客様に喜びと感動を与え続けます。
Mission(役割と責任)
私たちは情熱と誇りとスピードを持ち、積極的にお客様の声を聞き、期待を上回る創意に富んだ商品とサービスを提供します。
Value(マツダが生み出す価値)
私たちは誠実さ、顧客志向、創造力、効率的で迅速な行動を大切にし、意欲的な社員とチームワークを尊重します。環境と安全と社会に対して積極的に取り組みます。そして、マツダにつながる人々に大きな喜びを提供します。
ホンダの社是
基本理念
人間尊重 自立、平等、信頼
三つの喜び 買う喜び、売る喜び、創る喜び
社是
わたしたちは、地球的視野に立ち、世界中の顧客の満足のために、質の高い商品を適正な価格で供給することに全力を尽くす。
運営方針
・常に夢と若さを保つこと。
・理論とアイディアと時間を尊重すること。
・仕事を愛しコミュニケーションを大切にすること。
・調和のとれた仕事の流れを つくり上げること。
・不断の研究と努力を忘れないこと。
日本国憲法が、日本国民、日本政府の行動を縛るように、会社社是は、会社の行動を決める。社是を見れば、その会社が分かる。
2017-12-30
久志能幾研究所 小田泰仙 e-mail : yukio.oda.ii@go4.enjoy.ne.jp
HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite
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