国も認知症になる
JALの倒産(2010年1月19日)の因縁で、大垣市で開催された松本明慶仏像彫刻展(2010年11月)で明慶先生と初めてお会いするというご縁を頂いた。その1週間後にローマに飛んだ。JALの倒産のためローマ便のフライト枠が減少して、10月に予定していた予約が取れず、定年記念旅行が延びたのである。その3年後の2013年5月に、明慶先生も同じローマに旅たち、私も感銘を受けたピエタ像に会い、ホテル「バール・ミケランジェロ」で仏様のお顔を彫刻された。その記録がNHKBSプレミアムで放送された「旅のチカラ ミケランジェロの街で仏を刻む~松本明慶・イタリア~」である。その時の監視役が「魂(オニ)」という舞台設定であった。これは夢想だにしない展開であった。ローマ旅行は、還暦を迎え、第一の人生の卒業旅行として、そして次の人生のための充電のためのプロジェクトであった。
旅行先に選定
当初はどこかの国の美術館めぐりをする予定であったが、世界の美術館の大半を、訪問してしまっていることに気づき、別の所を検討して、ローマが候補先に浮かんできた。その頃、塩野七生著『ローマ人の物語』全15巻の読破に再挑戦して、読んでいる途中で、5巻目に入っていた。この書は数年前に読み始めて、数巻目で挫折をしていた。定年前の数ヶ月前から、なぜかこの本を読み直す気になって読んでいるところであった。この書は塩野七生氏がライフワークとして、1992年から毎年1冊ずつ書き上げ、15年後の2006年に校了した1000年のローマ帝国興亡史である。この書には、人間の営みの根源的な座標軸が書き込まれている。
ローマの歴史
それに対して、中国にも3000年の歴史があると言われるが、それは単に王朝の興亡があるだけで、一つの帝国の組織的な盛衰、興亡の歴史ではない。『史記』、『十八史略』、『三国志』に記載された国の興亡での人間模様は、身内の裏切り、肉親同士の殺し合いに終始している。ローマ史とは次元が違う。このDNAの伝承が、現代の中国共産党の言動の原点ではないかと思う。
ローマ帝国は1300年間の繁栄を築いている。歴史上、こんなにも長い間、継続した帝国は他にはない。それが継続した原因の元でも嗅いでみようと、ローマ行きを決めた。
ローマ旅行をして、ローマにハマった。ローマには全世界の観光資源の40%が集中していて、面白い、の一言で、とても10日間では見終えることはできない。次回の旅行のため、『イタリア語のテキスト』、『NHKラジオ・イタリア会話入門講座』のテキスト、『ラテン語の基礎』を購入し、勉強の準備を始めた。ローマの遺跡の碑文のほとんどがラテン語で書かれている。ラテン語の素養があると、ローマの旅は視野が深まる。この旅行で約80万円の投資であったが、それに見合うものを得た。お金は貯めるのではなく、あくまで自己投資として使うものだ。ローマ史を研究すると、その歴史には、人間の営み、会社経営のヒント、自分の人生の歩き方のヒントが多く散りばめられている。
なぜローマ帝国は1000年も続いたのか
1.征服した異民族を受け入れ、その文化を尊重して、統治した。
自分たちの文化を押し付けなかった。
2.ローマの法律を守るなら、征服した異民族にもローマ市民権を与えた。寛容であった。
3.卓越したリーダーがいた。
4.国民がよく働いた
5.リーダーが自信と誇りを持っていた
6.軍事でハイテクを駆使(当時の土木工事技術は他の民族を凌駕)
なぜローマ帝国は滅んだのか
1.国民が働かなくなった
2.リーダーが自信と誇りを失った
3.防衛は外国人傭兵が主体で、自ら国を守る意欲を失った
4.国土の荒廃と食料自給率の低下
5.産業の空洞化
6.モラルの頽廃
7.経済・財政が悪化
(関根茂章「ローマ帝国の滅亡が教えるもの」致知2002-5 p51)
これを会社に当てはめると
1.社員が働かなくなった
2.リーダーが自信と誇りを失った
3.親会社依存、実務は外注、派遣社員が主体、自社を守る意欲喪失
4.企業基盤の荒廃と自己資本比率の低下
5.産業の空洞化(製造は中国、社内は手配師の仕事しかしない)
6.モラルの頽廃(汚い会社内、トイレの汚れ、社員が挨拶しない)
7.会社のバランスシートが悪化
これを家庭に当てはめると
1.主人が働かなくなった、子供が勉強しなくなった
2.主人が自信と誇りを失った
3.教育は学校任せ、自らの城を守る気概を失った
4.家庭の荒廃と外食の増加
5.子供の躾、指導の放棄、少子化(家庭の責務は子供の育成・教育)
6.道徳の低下、モラルの頽廃(欧米の悪い意味の個人主義の台頭)
7.家庭財政が悪化(収入の低下、子供の就職難、フリータの増加、親の失業)、
これを個人に当てはめると
1.働かなくなった、勉強しなくなった
2.自信と誇りを失った
3.部下の教育はセミナー任せ、自らの城を守る気概を失った
4.自分の城の荒廃
5.自身の育成(自己の最大の生産品は自己啓発です)
6.道徳の低下、モラルの頽廃(悪い意味の個人主義の台頭)
7.財政が悪化(収入の低下)
現代の世相
歴史を串刺しで振り返ってみる。国民が堕落すると、国も弱体化し、崩壊に向う。まるで国が認知症に罹ったような有様である。現在の日本で認知症患者が65歳以上で15%、グレーゾーンの人を含めると28%という数値は、みほとけからの警告だと思う。なにせ国民が認知症になるようなお膳立てがテンコ盛りの現代生活である。
・痴呆的テレビ番組の氾濫(見ていて恥ずかしい)。
・殺し合いの場面の氾濫。
・飽食の流行
・本・雑誌の販売数の減少
・マスコミの堕落、偏向したマスコミの横暴
・添加物が多量に入った食品の氾濫
・サプリメント、薬の宣伝の氾濫
・大人の退廃、その後姿を見て育った子供の退廃
・親が子供を殺し、孫が祖父を殺す、子が親を殺す時代
・うなぎ上りの医療費の増大にもかかわらず、患者も増大
・スマホばかり見つめて勉強をしない学生の氾濫
・グローバル経済主義教団に騙されて、正規社員になれない若者が増大
・自殺者3万人ほどが10年間も続く
図1 書庫の『ローマ人の物語』
図2,3 コロシアム :コロシアムはローマ市民の不満をそらす目的で、格闘技の娯楽を与えるため建造されたと言われる。現代でいえばテレビの代わりである。多くの生贄が殺されるのをローマ市民が熱狂して見物した。末世の産物である。(2010年11月撮影)
2017-09-01
久志能幾研究所 小田泰仙 HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite
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