おみくじは一回で
私は占い好きで、以前は必ず年2回、お宮さんに初詣に出掛けて、それぞれでおみくじを引いていた。一回目は元旦に実家のある大垣の八幡宮大社で、もう一回は、1月初旬の熱田神宮である。でも最近、おみくじを2回引くとは、ご神託に不信感を抱くことと気がついた。とりもなおさず、おみくじの神様を信じていないことに。最初に大吉なら、もう一回出れば間違いないはずと思い、2回目を引いてしまう。最初が凶なら、今度こそは大吉をとの思いで引く。それでは何のためにおみくじを引くのか? まるでポーカ遊びである。最近は、この世に起こることは全て必然だ、と感じている。大吉が出るのも、大凶が出るのも必然だと。
過去果、現在果、未来果
仏教用語に「過去果、現在果、未来果」という三世の言葉がある。今の結果は過去に幾多の連綿とした選択の結果である。今の行動・決断・考えが、未来の結果になるという意味である。おみくじはその結果の象徴です。その現在の状況をどう判断するかが問われているのだ。要は、その出た卦をどう認識するか、だ。
今が好調でおみくじが「大吉」なら、その有り難さを感謝して、反省はないか、確認して進めとのお告げである。おみくじが「大凶」なら、自身の行動を反省する。このままだと大凶になるぞとのお告げ。
今が不調でおみくじが「大吉」なら、自身の行動を反省して、自信を持って決断前進せよとのお告げなのだ。おみくじが「大凶」なら、神様はお見通しなので、ご指示に従って行動せよとのお告げだ。
神様も知恵者でいたずら好きです。最初が「大凶」で、もう一回おみくじを引く不届き者には、「大吉」を提示して安心させるかもしれない。そして本人は油断して、危機に陥る。でもそれは失敗の練習をさせて、成功への階段を一段上がる練習をさせるとの神様の深慮遠謀なのだ。神様株式会社は各出先で、品質保証をした商品「おみくじ」を配付している。2回もおみくじを引くのは、神様に不敬もはなはだしい。一回目で出たご神託を謙虚に受け止め、それに対して、この一年、どうするかが神様から問われている。神様は助けてはくれない。見守るだけだ。助けるのは自分自身なのだ。
組織としてのおみくじ
日頃のリーダーの行動に問われる問題です。1回、2回とある事象が起こり、「凶」との信号が出るのだが、それを「吉」との都合のいいデータが出るまで、その信号を棚上げすることがよくある。都合のいいデータが出て、安心して「凶」のデータを忘れる。リーダーとして悪い情報は信じたくないのだ。そしてしばらくしてから組織が危機状態に陥る。まず謙虚に悪いデータを検討し、過剰でもいいから対策を考える。そうすれば、雪印乳業食中毒事件、三菱リコール隠し、タカタのエアバック事件は起こらなかった。
裸の王様
社長の貴方は、良いデータだけを待っていませんか。それでは裸の王様である。そういうリーダーの元には「吉」のデータだけを報告する部下が集まる。そういう風に、部下を日頃の自分の言動で暗黙の教育したのだから。それこそ因果因縁である。そして、記者会見の場で、「凶」の報告が飛び出し、「その話は本当か?」と部下に聞く失態を見せるのだ。食中毒事件での雪印乳業社長のように。裸の王様を笑える人は幸せである。リーダーになれば、多かれ少なかれ、裸の王様になってしまう。そうならないことがいかに難しいか、それに気づくかどうかである。
我々は、回りから多くの情報を「おみくじ」として受け取っている。それが己に対する上司、部下、同僚のからのお告げなのだ。自分の行動、部下の行動は正しいのか、間違っているのか、相手の些細な語調、しぐさから、それをおみくじ(情報)として、素直に受け取れる人が真のリーダーなのだ。
トヨタのおみくじ 前工程は神様
トヨタ生産方式の言葉として、「前工程は神様、後工程はお客様」がある。人のことより、自分ができることをお客様(後工程)のために全力を尽くせ、だ。自分の気づかない点を、指摘してくれる方が、神様なのだ。神様に対して、文句をいうのは不遜だ。自分のできることを精一杯する。それがお客様(後工程)に対する貢献となる。貢献に対するご褒美が、会社の利益、個人の給与なのだ。どうせ神様には逆らえない。そうやって、謙虚にカイゼンにカイゼンを重ねて、トヨタは勝ち組みになった。前工程(お客様)の要求が理不尽だ、横暴だ、無理だ、と言っていた会社が、負け組みになっていった。そしてそんな会社は、環境が悪い、時期が悪い、従業員が悪い、いや社長が悪いと、己のことは棚上げして言い訳だけを言う。そして市場から淘汰されていく。
天のおみくじ
ダーウイン曰く「環境変化に対して最も素早く対応できた種だけが生き延びる」。日本にはもっと美しい言葉がある。「落葉一枚天下の秋を知る」。これもおみくじと同じだ。そのように解釈できる人が感性のある人である。環境変化こそが、社会からの「おみくじ」なのだ。神様(前工程)からの一言が「おみくじ」なのである。その一言にビジネスチャンスが埋まっている。その一言やささやきを聞き逃す人に、神様は冷淡である。運命の女神には前髪しかない。「おみくじ」が来ても、運命の女神の前髪を、一回目で掴まないと、通り過ぎた後では遅いのである。女神の後頭部ははげている。
神様代行に昇格
今年(2003年)から、私は年初のおみくじを1回だけにした。今(2017年)は、おみくじを引かない。その年が「大吉」になるように、何をやるべきか、何を止めるかを年初に決めて、その年を驀進する。神様の代行を務めるつもりで働いている。
2017-08-15
久志能幾研究所 小田泰仙 HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite
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