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2017年7月26日 (水)

虚空蔵菩薩と高野山四天王のご縁

 2014年9月21日、1年弱待った虚空蔵菩薩座像(桧、5寸)が自宅に納佛された。松本明慶先生に製作をお願いした時、「いま大事な仕事にかかっているので、彼岸過ぎまで待って欲しい」と言われた。虚空蔵菩薩は寅年生まれの守り佛である。今まで無事に生きてこられたのを感謝するのと、今後の守り佛として見守ってもらうため、明慶先生に製作をお願いした。

 明慶先生の大事な仕事とは、てっきり運慶の菩提寺、六波羅蜜寺に納める阿弥陀仏だと思っていたが、そうではなく高野山1200年開創記念事業で納める四天王の製作であった。自宅に納佛された日、三好眼科(福山市)の三好輝行先生ご家族が、大原野の松本工房で納仏前の四天王を拝観された。高野山の中門再興で、その中に安置されてしまうとじっくり見るのが難しいため松本工房に来られて拝観された。その拝観日が虚空蔵菩薩像の自宅納佛日と同じであったのも、ご縁でした。三好輝行先生からの連絡で、私も松本工房へ出かけるご縁を頂いた。

虚空蔵菩薩とは、

広大な宇宙の無限の智慧と慈悲を持った菩薩である。そのため智慧や知識、記憶といった面でのご利益をもたらす菩薩として信仰されている。「虚空蔵求聞持法」は、一定の作法に則って、真言を百日間かけて百万回唱えるという修行を修した行者は、あらゆる経典を記憶し理解して忘れることが無いという。もともとは地蔵菩薩と虚空蔵菩薩が対になっていたと思われる。空海が室戸岬の洞窟御厨人窟に籠もって虚空蔵求聞持法を修したという伝説はよく知られている。日蓮もまた12歳の時、仏道を志すにあたって虚空蔵菩薩に21日間の祈願を行った。また、京都嵐山の法輪寺では、13歳になった少年少女が虚空蔵菩薩に智恵を授かりに行く十三詣りという行事が行われている。

忘れることは人間の徳性

 忘れない人とは、神であり、「人でなし」。1979年頃、私も仕事で悩みを持ち、人生に迷っていた。ある新興宗教の教祖著の『密教入門(求聞持聡明法)』(角川選書、絶版)を読み、それに嵌りかけたことがある。しかし物理的に凡人が、真言を百日間かけて百万回唱えるという修行が出来るわけがない。冷静に考えると、記憶を絶対に忘れないとは、人間でなくなることである。過去の嫌な失敗談を何時までも覚えていては、地獄である。今まで何回、嫌なことで死にたいと思ったことか。それが人間の特性として、忘れるから良いのであって、何時までも覚えていることは決して善ではない。

60にして、59の非を知る

 当時は天中殺も流行した時代である。この新興宗教の手法を盗用して、オウム真理教が勢力を拡大して、地下鉄サリン事件(1995年3月20日)を起こした。有名大学出の若者が堕ちていった。頭が良い人は、楽をして成功を手に入れたがる。人とは愚かな存在で、歳を取らないと己の愚かさに気がつかない。人は愚かな事をしてみて、初めて愚かな事をしてはダメと気づく。人は毎日が新しい過ちを犯す。だから毎日が新しい自分の発見の日である。人は60歳にして、59歳の非を知る、である。だから人は一生修行である。

日野原重明先生の佛性

 日野原重明先生(1911年10月4日生)が、2017年7月18日、延命治療も拒否され、105歳で現役のまま亡くなられた。ご冥福をお祈り申し上げます。氏は地下鉄サリン事件のとき聖路加国際病院でサリンに曝された患者の治療に奮闘された。氏は東京大空襲の際に満足な医療が出来なかった苦い経験から、過剰投資ではとの批判の嵐の中、大災害時など大量被災者発生時にも対応できる病棟として、広大なロビーや礼拝堂施設を備えた聖路加国際病院の新病棟を断固として建設した(1992年)。この備えは地下鉄サリン事件(1995年)の際に遺憾なく発揮され、通常の機能として広大すぎると非難されたロビー・礼拝堂施設は、緊急応急処置場として機能した。日野原院長の判断により、事件後直ちに当日の全外来受診を休診にして被害者を無制限に受け入れた。同病院は被害者治療の拠点となり、朝のラッシュ時に起きたテロ事件であったが、治療現場の混乱が最少に抑えられた。この時の顛末はNHKドキュメンタリー番組『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』に詳しい。

 氏はクリスチャンであるが、生年と生月から、氏の守り本尊は阿弥陀如来である。阿弥陀如来は一切の衆生を救うため48の誓いを立てた仏様である。氏の一生を見ると、まるで阿弥陀如来が乗り移ったような経歴である。宗教の本質と教えはどの宗教も同じで、生まれた国とその表現が違うだけである。製造物が消費者に一番近い場所で、現地生産されるのと同じことである。合掌。

 

十二支と生誕月による御守本尊

千手観音菩薩

 子年と12月生まれ。一切衆生を救うため、千の手と千の目を具足し、目と手はその慈悲と救済のはたらきの無量無辺なことを表す。一つの手で二十五有を救うとされる。観音様の中でも功徳が大きく、「蓮華王」と呼ばれることもあります。どんな美人も生まれて人生を謳歌しても、不美人に生まれて悲嘆に暮れても、死んでしまえば髑髏である。皮一枚の出来不出来が美人、不美人を分けるが、死んでしまえば同じ髑髏である。それを千手観音菩薩は髑髏を手で持って教えている。千手観音菩薩の下のほうにある手に持つものは、現実社会での道具を表し、上側にある手に持つものほど、佛に近い世界で使う道具を表している。莫大な財産を集めても死ぬときは裸で旅立つ。

虚空蔵菩薩

 丑・寅と1・2月生まれ。虚空蔵菩薩は計り知れない智慧と福徳を具え、衆生の諸願を成就させてくれる菩薩で、頭に寶冠、手に福徳の如意宝珠、智慧の宝剣を持つ。胎蔵界曼陀羅虚空蔵院の主尊である。

文殊菩薩

 卯年と3月生まれ。「文殊の知恵」と言われ、諸仏の智慧を司る菩薩。釈迦如来の左側に侍し、右手に知剣、左手に青蓮花を持つ。普遍の悟りと智慧をもたらす。獅子に乗っている。

普賢菩薩

 辰・巳年と4月生まれ。釈迦如来の右の脇侍。白像に乗り、理知、功徳、教化、衆生を生死の苦海から救い、悟りの境地(彼岸)に導くとされる。普賢とは「全てにわたって賢い者」という意味。「布施・特戒・忍辱・精進・禅定・智慧」の6つの力で迷える衆生を救うとされる。信仰する人を叱咤激励し、正しい道へと導いてくださる。尚、この菩薩の立てた十大願は一切の菩薩の行願の旗幟とされる。

勢至菩薩

 午年と6月生まれ。阿弥陀如来の脇侍。智力を象徴し、智慧の光をもって万物を照らし衆生の迷いを除き、無上力を得させ、苦を取り除く偉大な力を持つ菩薩で、悟りの境地に導いてくれる仏様です。

大日如来

 未・申年と7・8月生まれ。摩訶毘盧遮那仏。真言密教の教主で、宇宙の万物の智慧と慈悲の表徴。内は真如法界を照らし、外は一切衆生を照らす。一切の徳の総摂とされる。金剛を智法身、胎蔵を理法身とした二身を畢竟不離一体とする。

不動明王

 酉年と9月生まれ。五大明王、八大明王の一で、その主尊。種々の煩悩、障害を焼き払い、悪魔を降伏して行者を擁護し、菩提を成就させ長寿を得させるとされる。大火炎を背負い、右手に剣、左手に索を持つ。剣で衆生の煩悩を断ち切り、羂索で人を救い上げる。その目には怒りと慈しみがこもる。

阿弥陀如来

 亥・戌年と10月生まれ。一切の衆生を救うため48の誓いを立てた仏様。浄土宗、真宗の本尊で、無限の慈悲と永遠の存在と徳を与えられる。この仏を信じ、その名を唱えれば死後ただちに極楽浄土に生まれると言われる。

 

図1 松本明慶先生と三好輝行先生ご家族。 (写真は三好輝行先生提供)

   後は高野山に納佛予定の広目天・増長天像。松本工房にて(2014年9月21日)

図2 虚空蔵菩薩座像(桧、5寸) 松本明慶先生作

 

2017-07-25

久志能幾研究所 小田泰仙  HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite

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