てんで話にならず
1.2 自然な論理展開
自然な論理展開とは,読者の期待を裏切らない記述手法である。各種の文章読本には論旨の展開方法として、起承転結が推奨されているが、ビジネス文書で、「起承転結」の論法は間違っており、使用禁止である。ビジネス文書で「起承転結」の「転」がこれば、論理破綻である。ビジネスマンは、文学作品を書いているのではない。相手を説得して(文書で当方の意図を伝え)、意図が成就(金儲け)するために、文書をデザインして書く。社長はそれに対して給与を払う。文学作品では給与が出ない。ビジネス文書で「転」が来れば、読み手が困惑し、会社が損をする。
文学作品としての例
京の五条の糸屋の娘 〔起〕
姉は十七,妹は十五 〔承〕
諸国諸大名は弓矢で殺す 〔転〕
糸屋の娘は眼で殺す 〔結〕
ビジネス文例1
A は B,C,D,Eから構成されている。
B は ・・・・である。
C は ・・・・である。 ← ここでお天気の事を言ってはダメ
D は ・・・・である。 新聞コラムでは、この転が乱用される。
E は ・・・・である。 新聞コラムは文学でビジネスではない。
ビジネス文例2
A は B である。
B は C である。
C は D である。 よって
A は D である。
文例)『桃太郎』
昔,昔あるところに,おじいさんとおばあさんがいました。
→ 次文の主語は、「おじいさん」以外にはない。これが自然な論理展開。
「おじいさん」の記述が済めば,次文は「おばあさん」が主語の記述となる。
これが自然な論理展開。
おじいさんは山へ柴刈りに,おばあさんは川へ洗濯に行きました。ある日おばあさんが川でせんたくをしていますと・・・・
→ 以下「おばあさん」と言う主語が、変わっていない記述手法を注意。
主語が変わらないので,内容が理解しやすい。
「おばあさんが,かわで せんたくを・・・・ながれて きました」
「おばあさんは,びっくりして,めを まるく しました」
「おばあさんは,ももを ひろって,たらいに いれました」
「おばあさんは,おもたい・・・・ももを うちへ もって かえりました」
文学は雅の世界で、ビジネスの金儲けとは別世界である。起承転結が通じるのは漢詩、日本文学の世界のみある。日本の新聞紙上でさえ、文学作品とビジネス文書をごっちゃにして、起承転結を錦に御旗にした文章を書いているから、それに慣れさせられた日本人が世界のビジネス戦争で負けるのだ。
敵を知り己を知れば百戦殆うからず(孫子)
欧米の狩猟民族は、金儲け至上主義で、「雅」など知ったことではない。我々が世界を相手に戦って生き抜くためには、相手の論理スタイルを知り、己の間違った文書パターンを知り、相手に合わせて戦わねばならぬ(敵を知り己を知れば百戦殆うからず)。文書は、ビジネス戦争の武器である。武器には、武器として使う作法がある。弓道、武道等が日本の作法であるように、テクニカルライティングとは、欧米の文書道である。文学は夢の世界で、書き方は何でもありだが、テクニカルライティングには、工業製品として法則とスタイルが決まっている。何時でも何処でも誰にでも、通用する法則で書類を書けば、工業製品として世界に通用するビジネス文書が出来上がる。欧米のテクニカルライティングとは、論理思考を、文書の形に展開する手法である。
私のテクニカルライティングの学び
私は日本語の文章での書き方の論理構成を学ぶために、ミシガン大学のテクニカルライティングセミナー(科学工業英語)に、二度参加した。英語の勉強をするために渡米したのではない。最初の1994年は、110万円で自費参加。会社にこの教育の展開を提案して、2度目の1997年、検定試験1級合格のご褒美として出張扱いで参加した。
英語を学ぶと自然に論理構成が分かる。日本語が出来なければ、英語もできない。科学工業英語の検定試験1級には、ネイティブ並みの英語力TOEIC900点でも、合格できない。英米の現地人が、正しい英語を書けるわけではない。TOEIC600点でも、自然な論理展開法が使いこなせれば合格できる。過去30年間の科学工業英語検定試験で、1級合格者は500人もいない。英検1級なら数万人である。私は3年の挑戦で、389人目の1級合格を射止めた。それで学んだ武器としての文書道で、えげつないビジネス社会を生き延びてきた。それを教えて頂いた篠田義明教授と後藤悦夫先生に感謝です。
文豪の森鴎外、夏目漱石、芥川龍之介、川端康成らの文学者は、英文科卒である。文豪と称される彼らは欧米の英文の書き方を学んでいるので、その文学作品は、ビジネス文書ではないが、論理的に書かれている。
図1 ビジスネとは生き残りをかけた顧客創造戦闘
久志能幾研究所 小田泰仙 HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite
著作権の関係で無断引用、無断転載を禁止します。
書の著作権は馬場恵峰師にあります。所有権は久志能幾研究所にあります。
コメント