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2022年1月27日 (木)

会社のかかる死病

                                                               

  会社とは、社員を支え育成に限りない援助を与えてくれる親的な存在である。会社も長く存続すると、それ相応に成熟し安定成長に入る。どんな組織も老化現象は自然現象である。大きな会社では、大事な情報がトップに伝わらない現象である「情報の流れの道が動脈硬化病」、「組織の硬直化病」、「会社の私物化」という死病がじわりじわりと迫りくる。企業の寿命は30年といわれる。入ったときは若かった会社もいつかは老いる。

 

 生物でも、その種としての使命を終えた時に死が訪れる。多くの種は生殖を終えたあとに、すぐ死んでいる。カマキリに至っては、メスが生殖を終えた雄を頭から喰ってしまう。それが子供の栄養になるのだ。だから雄は粛々と喰われている。それがカマキリの生存の掟なのだ。

 

 人間様は他の種とは違い、生殖を終えたあとでも長く生きている。しかし、多くの人はその間に社会的存在意味を忘れて認知症になる。自分が何のために生きているか、考えよう。世に貢献できなくなったら、死がある。

 

企業の死

 会社は社会的な公器としての役目を失ったとき、経営者がその使命を忘れた時、その会社の死が訪れる。

 社会を見渡しても、2000年の雪印乳業の食中毒事件、2001年の三菱自動車のリコール隠し、2002年のみずほ銀行のシステムダウン等、この死病に起因する不祥事が続いている。

 2015年、タカタはリコール問題で死を迎えた。2017年の東芝の経営層の迷走で、東芝は破綻して死に向かっている。

 ゴーンが日産を食い物にして、ぐちゃぐちゃにした。ぐちゃぐちゃにされたのは、そうされる体質が日産の経営層にあり、それにゴーンが付け込んだのだ。

 

真因

 問題の企業の発病後のトップの発言は不思議と同じで、「そんなことは聞いてなかった」である。情報が流れない情報ルートの詰まり、組織の硬直化といった死病に罹った企業の症状である。そして倒産の危機に面する。

 病気にかかれば治療する。事前予防をする。当たり前のことを当たり前にするのが自然の理にかなった経営である。その治療が業務改革である。

 

 以上を2022年の目で見直しても、問題企業の体質は何ら変わらない。燃費偽装問題で、三菱自動車の隠ぺい体質は、20年経っても変わらない。日産や東芝の官僚体質も変わらない。真因を潰さないから、人も企業も変わらない。なぜそうなったかの真因を追求せず、表面的な対処療法で済ませるからである。よき反面教師の教えを頂いた。

 

身内という癌細胞

 名経営者と言われた人でも、企業が公器であることを忘れて、身内の人間には甘くなることが多い。その身内の人間が経営者として失格でも、身内ゆえ、切るに切れず、経営の中枢部が侵食されてゆく。そうすると本体の経営がおかしくなる。血管のプラークのように経営の中枢の障害物となって経営情報の流れを阻害する。経営の血の流れに付いた不純物は、身内というカスなのだ。身内ゆえに切るに切れない。経営情報という血が正常に流れないので、じわじわと企業の生命力を削いでいく。業病である。

 

 かの松下幸之助翁も癌細胞みたいな娘婿の経営者を切れなかった。そのため辞めさせる汚れ役を後進の社長に託したが、その娘婿に反撃され返り討ちにあってしまった。そして松下電器はおかしくなっていった。それは経営者が、企業が公器であることを忘れて起きた病状である。

 

 私の元部下は、そんな松下電器に途中入社した。しかし、その後、リストラの嵐に巻き込まれ、急性のガンを発症して半年後に、50歳半ばで世を去った。何も前の会社を辞めて、修羅場の松下電器に行かなくてもよかったのに思う。彼に魔が差したのだろう。この件があり、松下電器のリストラ騒動が記憶に生々しい。松下幸之助翁が草葉の陰で泣いている。生あるものは必ず死である。それは会社でも同じだ。

 

 地元の企業でも名経営者と呼ばれた方も、身内におかしな娘婿を入れたがため、経営がおかしくなった。その会社も人員整理する事態に至り、結局、人手に渡った。そんな娘婿を選ぶような娘の男を見る眼がなかったのが問題で、娘の育て方を間違えたのだ。

 

2022-01-27  久志能幾研究所通信 2286号  小田泰仙

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