お墓つくりの美学、人生の墓標とは
今回の基本方針は、「華美に走らず、控えめな品格あるお墓を作る」である。大きな威圧感あるお墓でなく、現状のお墓を基本に改建する。ごてごてとしたデザインではなく、スマートで現代風要素を盛り込んだお墓とする。
自宅を建てるにもこだわりがあるはずだ。ましてや生前よりも、はるかに長~い時間を過ごす墓にはこだわろう。少しは時間と智慧をかけて墓の建設設計を考えるべきだ。だから私は、石屋さん任せではなく、こだわりを持ってお墓の設計にかかわった。機械設計屋から墓設計屋に変身である。
人生の基本設計
人生の構築には、基本設計のコンセプトが必要だ。テクニカルライティングでは、文書の基本設計をクライテリア(判断基準)という。それが曖昧だから、人生も曖昧になる。自分はどういう人生を作り上げたいのか、自問することだ。人生は自分が思った通りの人生となる。人間は犬畜生ではないのだ。ハカない人生であってはならない。
自問しよう。自分はどんな人生の墓標をたてるのか、と。いくら金を貯めても、来世に持っては逝けない。死んで残るのは、戒名を刻んだ墓標だけだ。
全体構成
当初のデザインだと、小田家のお墓、両家ご先祖の供養塔、北尾家の神道墓の3基がバラバラのデザインで、花台、水台の高さも不ぞろいで、美しくなかった。それでは私の美的感覚が許せないので、修正してもらった。
まず3基のお墓の台の高さが全て揃うように変更した。花台も曲面を配した従来の形から直線を基本としたデザインに変更した。従来のお墓用の仰々しい花台の古風なデザインとは一線を画するようにした。
一般的な納骨室の蓋は、家紋入りの蓋である。普通は納骨室を塞ぐように設置される。それを蝋燭台と兼用の蓋として、前面をデザイン的にスッキリさせた。
一般的なお墓デザイン
3種の墓石のバランスを考え、土台の下線を揃えたデザインに変更
墓面の文字
普通はパソコンの文字であるが、馬場恵峰先生に字を揮毫してもらうことになった。機械での自動彫りではないので、特別料金を請求された。PCの文字より太く深い文字である。職人が手作業で彫るので、費用的に高くなるのは致し方ない。
普通は「○○○○改建」であるが、謙って「○○○○謹改建」とした。
お墓は見ればお墓と分かるので、「小田家之墓」はやめて「小田家菩提」に変更した。
北尾道仙氏は、神道墓なので、「黄鶴北尾道仙之墓」をやめて、単に「黄鶴北尾道仙」とだけにした。
蝋燭台
蝋燭の炎が直接、蝋燭台の下面に当たらないように間に金属板を入れた。蝋燭台のガラス蓋を付ける案もあったが、ごてごてした感じになるので、解放として蓋を無くした。
蝋燭台
墓誌
お墓を北尾家と小田家の合祀として建てるので、私の死後でも改建の意図が分かるように、墓誌の裏に経緯を刻むことにした。
墓誌には本名と戒名以外に、没年や年齢を書く例や、叙勲歴・経歴まで書く例があるが、死後は佛として全て平等のはずで、前世の叙勲歴は不要と考えて戒名と本名だけの簡素な書式にした。少ない文字数で、煩雑にならず見栄えが良くなった。没年は個人情報だし、関係者は知っている情報のはずである。
塔婆立て
当初は塔婆立ての意味が分からず、立てる予定はなかったが、住職よりの助言で塔婆立てを建てることにした。
塔婆とは、供養や追善供養のために建てられる細長い板のことである。塔婆を建てることが「善」とされ、「塔婆を建てる=善を積む」として、故人の冥福につながると考えられている。
当初はステンレス製の塔婆立てであったが、石屋さんの提案で、全体のデザインに合わせて石製塔婆立てに変更した。
関東の墓地では塔婆立てが当たり前で、塔婆が林立しているが、彦根のお墓では、塔婆は数が少ない。地方の文化の違いのようだ。
関西の墓地 塔婆はほとんどない
豪徳寺(関東)の墓地 塔婆が林立している
2021-07-29 久志能幾研究所通信 2104 小田泰仙
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