磨墨知231 心筋梗塞・癌とは体の臨界事故
問題点があっても目をつぶっていると、後で時間ロスとなってきいてくる。気づいたときに、言うべきことは言うこと。それが責任者の責務。
そんな話は聞いてない
1999年9月30日の東海村原子力発電所の臨界事故は、トップの危機管理意識の問題である。私は他人事ではないと感じた。社長から係長まで、管理職は、問題点や変化に気づいた時、「声を出して」質問する能力が求められている。管理職は、担当者よりも専門知識では劣るが、その部署への責任感の強さでは、一番のはずである。
JOC東海事業所の越島所長は、その点で所長失格である。TVでのインタビューで、その所長は当初、「ステンレス製のバケツのことは気がついていたが、現場の責任者に任せて云々...」と愚かなコメントをしていた。この所長は気づいていたのだ。気づいていても、声を出さなかった。それがあの東海村の臨界事故になった。
この所長のコメントは後日(10/10) 、「会社としてステンレス製バケツでの作業は指示していない....」に豹変する。
事故は1つのミスでは起こらない。何重ものインターロックをすり抜けて事故になる。その最大のインターロックは、その部署長の気づきであり、「責任者として声を出して」の質問なのである。いくつものミスが重なって、初めて臨界点を越える。一度に許容値の7倍ものウラン溶液を入れた事実は「些細なこと」なのだ。その前にいくつものミスが発生している。それに責任者は気づかねばならぬ。
思考停止
頭のいい人は、指摘を受けても相手の悪い所が先に見えすぎるが故に、また自分は悪くないとの思い込みで、往々にして思考が止まってしまう。あとは、上から視線で言い訳と相手の非難への一直線である。なぜ、自分の反省が最初に出てこないのだろうか。結果は明らかにペケなのに。それは自身に対して謙虚でないからだ。自分自身に気づいていないのだ。
頭のいい人の陥りがちな罠は、世に言われていることのすべては、既に読み、頭に入っているのだが、実際の行動では、プライド故、その逆のことをしがちになるのです。頭がいい故のことで、その真理を実行できるのは、バカになってやれる人なのだ。
頭のいい人の反論の殺し文句、「そんな話は聞きたくもない」との拒否姿勢では、責任者として失格なのである。上司は間違っていようが、なかろうが、指摘をするのが職務であり、受ける方はそれに対応する義務があり、それでお互い給与を貰っている。赤い郵便ポスト理論からいって、起こることは全てあなた(私)が悪いのである。言われなくなったたらお終いなのだ。その結末の象徴が、'99 年9月30日の東海村の臨界事故なのである。
この事故を聞いての人々の反応は、反省する人、ひどいなと思う人、人ごとと思う人、人を笑う人(自分は関係ないと自信を持って言える人、神様?) あなたはどのレベル?
体の臨界事故が心筋梗塞・脳梗塞
2020年8月31日、三菱自動車の益子修前会長が71歳の若さで心筋梗塞のため亡くなられた。その体形と16年間の社長業の激務から、原因が高血圧、血管内のプラークの蓄積、ストレス過多と推定された。
それは、私が、益子社長の姿に2年前の自分自身の姿を見たためであった。益子社長は私とそんなに歳も変わらない。他人ごとではない。心筋梗塞では、年間37,222人(2015年)が命を落とす。他の虚血性心疾患の死亡者数は34,451人である。合計で7万人余がこの病気で死亡する。
私の臨界事故寸前
2年前に、私が久留米の真島消化器クリニックで診察を受けたら、血管内にプラークが蓄積して、心筋梗塞、脳梗塞発症の危険性レベル2(レベル3に近い)と診断された。何時、心筋梗塞が発症しても不思議ではないと言われた。私はその診断結果に腰を抜かして、この2年間、真島院長の指導の食事療法を忠実に守り、その危険性を無くした。
それでも昨年の初め、私の体に、癌が発見された。これも長年の狂った食事、狂った生活が、体の免疫力の限度を超えて臨界事故(癌発生)になったと思う。
益子修前会長の臨界事故
益子修前会長も医師からその心筋梗塞の危険性は健康診断で指摘されていたはずだ。本人も過酷な社長業務で体への危険を認識していたはずだ。彼は、健康上の問題点や体の変化に気づいても対策が打てなかったのだろう。彼は責任感が強く、会社の危機的状況で引くに引けなかったのだろう。三菱自動車の経営危機状態を脱するための激務を16年間も続けたのは、自殺行為である。結果として、体が臨界事故(心筋梗塞)になってしまったと推定される。気の毒である。ご冥福をお祈りいたします。これは人ごとではないのだ。
自分の城は自分で守れ 大野耐一
2020-09-04 久志能幾研究所通信 1731 小田泰仙
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