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2020年8月10日 (月)

危機管理16 『チーズはどこへ消えた?』(2/2)

エピソード1

 当時(2000年頃)の勤務先のU社長も係長会への訓示や基幹職招集時のお話で、基幹職はこの『チーズはどこに消えた?』を全員読むようにとの指示をされた。私の英語の師匠である後藤悦夫先生から,米国の有名企業の多くが教育テキストとして活用しているし、この原書は易しい英語で書かれた薄い小冊子(全96頁)なので、英語の教材としてもお勧め、との情報を頂いた。そこで遅ればせながら本屋に買いにいったら、刈谷市、知立市では売り切れ状態であった。目的ある本を捜しに行って、売り切れであったのは久々である。慌てて,丸善に和書と原書をセットで注文した。

 

エピソード2

 この後藤先生には中学生になる孫娘さんがいて、毎週 1回、後藤先生の自宅に英語の個人指導で通いに来ている。先生がこの『チーズはどこへ消えた?』を話されたら、「面白そう」と、本を借りていった。その時、原書も見せたら「これも面白そう」と言って、「おじいちゃん、これも貸して」と持って帰った。私の回りの人にこの原書を見せて紹介しても、拒否反応ばかり。柔軟な姿勢の中学生のお嬢さんにも負けてはなるまい。リーダーは迷路に入って行く勇気を持ちたいもの。

 

エピソード3 『風とともに去りぬ Gone with The Wind』

 私は一世を風靡したベストセラーのマーガレット・ミッチェル著『風とともに去りぬ』を思い出した。この小説が、『チーズはどこへ消えた?』と同じ趣旨で、ラブロマンス風、大歴史小説風に仕立ててあるのに気がついた。つまり『チーズはどこへ消えた?』を文学的に訳すると、Gone with The Windとなるわけである。

 開拓者たちにより、理想に燃えて建国された米国合衆国が、黒人奴隷開放の議論で国を二分する南北戦争に発展した。その戦争が南軍の敗北で終わった時、今までの良き時代の風習、慣習、文化そしてそんな人達が、風とともに去っていった。題名の『風とともに去りぬ』はそういった時代を表わしている。そういった殺伐たる状況のアトランタは、まさに日本の敗戦後の焼け野原状態と同じであった。

その状況で、古き良き時代をいつまでも懐かしく思い、いつかはそれが帰ってくると信じて、なす術もなくただ無気力に待つだけの人(ヘム)、混乱に満ちた都会で一旗揚げようと自分の才覚を信じ逞しく生きる人達(スニッフとスカリー)、おっかなびっくりで新しい新天地の向かう人達(ホー)、そんな人達をスペクトラ的、ロマンス的に描き、そこにホーとスニッフとスカリーを凌駕して逞しく生きるスカーレット・オハラがいる。ただし、彼女とて変化を予測して生きてきたわけではないが、変化があっても生きる術を模索して、迷路に勇敢に突入していく逞しい女性であった。それ故、アメリカ開拓精神を持つ米国民が彼女を愛したのであろう。

 ドラマのフィナーレでスカーットは泣きながら叫ぶ、

 I'll think of it tomorrow, at Tara. I can stand it then.

 Tomorrow, I'll think of some way to get him back, After all.

 Tomorrow is another day.

 過ぎたことは悔やんでも時間は戻ってこない。

 明日は明日の風が吹く。

 明日からでなく今から精一杯チーズを見つけるために生きよう、と。

 

 ここに過去に囚われず未来を生きようとする人間がいる。過去に生きる人には現実は冷酷である。今に生きる人には活力があり、未来に生きる人には希望がある。

 本とは出会いである。いろんな気づきや自分の成長で、今まで観えなかったドラマが見えてきて、昔読んだ本にも新しい出会いがあるのを発見した。

 

エピソード4  失われた30年

 日本経済は、戦後の焼け野原から、奇跡の高度成長期を経て、1991年にバルブが崩壊し、それ以来デフレの時代が30年間も続き、いまだに失われた30年と言われる時代が続いている。

 今の管理職の世代は過去の栄光が忘れられず、相変わらず多時間労働、滅私ご奉公の精神で働いている。GAFAで代表されるアメリカの企業達は、価値観を変えて企業の変革に取り組んでいる。日本は相変わらず、過去の延長線上で働いているから、失われた30年が生まれた。いつになったら気が付くのか。

 

エピソード5  失われた健康

 私は2019年2月に癌の手術をして、健康であった生活が一変した。病後の後遺症で、食べるものも食べられず、まともに歩けない。以前の食べ放題やよく食べよく遊びの生活が出来なくなった。あって当たり前の生活(チーズ)が消えたのだ。癌は、今までの生活が間違っていたことを教えてくれた。今は、「狂った食事」、「狂った生活」から、正しい食生活に変えることで、楽しく安心して暮らしている。

 変わろう。前進しよう。変化を楽しもう。新しい冒険を味わい、新しい生活の味を楽しもう。進んですばやく変わり、再びそれを楽しもう。

 何時までもあると思うな、親と健康。

 チーズは偶然、死は必然。

                      

2020-08-10 久志能幾研究所通信 1699   小田泰仙

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