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2020年1月17日 (金)

「法人にあらずんば人にあらず病」 悪縁ディーラからの遁走記(6)

初めての車

 40年前に初めて愛知トヨタ店でカリーナを買った。買った時、車を大事にしたかったので、営業マンに貸しガレージを探してくれるようにお願いした。その営業マンは「愛知トヨタは、ネットワークが広いので、必ず探してご連絡します」と約束をした。しかしその後の連絡は全くなかった。そのうち、その営業マンは転勤でいなくなってしまった。

 

クラウンの検討

 2018年、乗っている車が20年になり、クラウンへの買い替えを検討した。それでクラウンの購入のため、岐阜トヨタの担当営業マンとは5,6回も打ち合わせをしたが、デザイン的に前クラウンは、好きでなく買う決断が付かなかった。そうしている間に新クラウンの発表があった。その営業マンから「新クラウンが発表され、実際に新車が店頭に置かれたら連絡をします」の約束があった。しかし、その時期になってもその営業マンから連絡はなかった。

 そのうち私は新クラウンに興味が無くなり、その営業マンとは疎遠になった。でも一度、実際の新クラウンを見に行こうとそのお店に出かけた。その時、お店にその営業マンは不在で、別の営業マンが出てきて、対応された。その営業マンは、「私が来たことを担当営業に、伝えておきます」といった。しかしその担当営業マンから、ついぞ連絡はなかった。常識的には、お店に見込み客がわざわざ来店したなら、担当営業マンが電話ででもお礼の連絡なり事務連絡をするものだ。

 そのお店は、私が来店すると、私の車のナンバーが登録してあり、フロントが担当営業マンに私の名前が「通報」されるシステムになっていた。私が営業マンを呼ばなくても、担当営業マンが出てくるシステムになっていた。これはネッツトヨタ南国で運営されているサービスである。しかし、この岐阜トヨタ店では、形を作っても魂入れずのシステムになっていた。単なるネッツトヨタ南国の形式的な物まねシステムになっていたようだ。

 

諸悪の根源

 これはクラウンという商品を売ることで罹患した業病のようだと納得した。クラウンは買う80%が法人客であるようだ。個人でクラウンを買う客は少ない。法人は、定期的に車を買い替えてくれる。クラウンは黙っていても法人車として売れる車である。だから営業マンは法人の方を向いて、そのご機嫌伺をしていれば、営業マンの成績は維持される。個人の客は大事にしなくても商売が成り立つのだ。

 

40年前の対応

 だから40年前に私が愛知トヨタ店でカリーナを買っても、営業マンの対応が冷たかったのも納得できる。当時、若造の私を真面目に相手にしなかったのだと今になって納得した。

 

2018年、岐阜トヨタの対応

 私に対応した岐阜トヨタの営業マンは、若い主任クラスであった。現在の私みたいに酸いも甘いも経験している初老のユーザーの相手に、主任クラスの若造では、話が合わなくて困るのだ。

 以前のビスタ店、ネッツ店では、私の担当営業マンには店長クラスの人が対応した。それから見ても岐阜トヨタ店は、法人に目が向いていた。

 

京都トヨタの対応

 知人で私と同じ世代の人がクラウンを乗っているが、法人でなく個人であるので、その京都トヨタ店の対応が事務的だという。なおかつ、そのクラウンはその人が買ったのではないので、それの扱いが露骨のようだ。定期点検のダイレクトメールが来て、出向いても、その担当者が決まっていなくて毎年変わるという。

 その京都トヨタ店でも、個人客は大事にされていないようだ。多分、全国のトヨタ店でも同じような扱いだろう。それこそが、法人相手のクラウン商売という特性に起因するのだろう。

 

淘汰の時代

 そんな殿様商売では、全トヨタ店で全車種が買えるようになると、そんなお店は淘汰されるだろう。トヨタは、系列ディーラでの全店舗全車種扱いの開始を2020年5月に前倒しすることを発表した。

 お店で殿様商売の匂いを嗅いだら、さっさと遁走である。だから私はクラウンを買うのを止めた。現在の愛車を乗り続けることを決めた。自分の足として21年目の車歴である。

 

クラウンの裏話

 中小企業の社長はクラウンを買うのが夢である。クラウンに乗ると人生観が変わるという。周りが己を見る目が一変するという。要はステータスなのだ。なおかつ車の経費は、会社の経費で落とせる。儲かって税金で持っていかれるより、クラウンを買おうである。

 ところが三河の中小企業の社長たちは、儲かってもクラウンには乗らない。そんな車を乗っていると、親会社から「だいぶ儲かっているようだから」と仕事で値引きのネタにされてしまうからだ。それを避けるため、高級車には乗らないという。堅実なのだ。

 

クラウンの顔が嫌い

 私はクラウンのいかつい「顔」が嫌いである。それでも売れるから不思議と思っていたら、社用車として乗るなら、その顔で代表されるデザインは二の次なのだ。要は中小企業の社長は「クラウン」であればよいのだ。それで周りの人が評価してくれる。それが中小企業の社長の実態である。

 

業病

 クラウンは国内向けだけの特殊な車である。だからトヨタ店の営業が、苦労しなくても売れる車なので「安易な営業姿勢病。法人だけが客で症。法人にあらずんば客にあらず病」という業病にかかっている。傲慢な病人に近寄ると、己も病を得る。そんな病気は伝染するので、君子危うきに近寄らず、遁走に限る。

 それよりカローラ店、ネッツ店のほうが、一般客に気持ちよく対応してくれる。ネッツトヨタ南国の真摯な営業内容には学ぶ点が多いが、一般的にトヨタ店からは学ぶ点が少ないようだ。

 安易に売れる商品を持つことは、努力をすることを忘れさせる。未来の衰退があるだけだ。

 

誰にも負けない努力

 親から財産や才能を与えられることは、努力をすることを放棄させる。結果として、自分の将来の成長の障壁となる。自分に財産や才能がないことを喜ぼう。それが奮起のエネルギーとなり、人よりも2倍、3倍の努力をするモチベーションとなる。自分で獲得した能力は、誰にも負けない力を与えてくれる。

 稲盛和夫氏は「誰にも負けない努力」をして、有名大学出でもなく、世間の支援もなく、売れる商品もない状態から、京セラを世界の京セラに育てた。その根源は利他の心である。

 ディーラから買うのは、車ではない。営業マンを買っているのだ。彼の利他心とその営業行為に共鳴して、車を買うのだ。私はいろんな商品をその観点で購入している。安いから買うわけではない。自分の命を大事にするために、担当営業マンを「耳を洗い、目を拭い」その本性を見極めよう。

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 馬場恵峰書

 

2020-01-17 久志能幾研究所通信 1453  小田泰仙

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