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2019年12月31日 (火)

除夜の鐘は御恩の音、出会いに感謝

 除夜の鐘は108つ衝く。ごぉーんとなる108の鐘の音は、人間の煩悩・迷いの叫び声である。大晦日、煩悩の闇を「除」いて、光明の「正月」を迎えるために鐘を衝く。自分の煩悩を「夜」という言葉で象徴している。夜である「人生の闇」を、自分の悩み・苦しみをテコに、仏の教えを乞うために、戸を叩く。それに悟れば、闇の世界から光の世界に行くための戸を叩く機会を与えられる。悩みがなければ、光の世界への戸も探さないだろう。それが除夜の鐘を108つ衝く意味である。鐘を叩くのは、そのご縁に出会えたことに感謝である。

 

「一」とは

 正月の正は「一」と「止まる」からなる。「一もって止まる」の意である。『易経』では「一は天を指し、二は地を指す」という。老子は「一は道であり、真であり善である」という。孔子は、論語で「一以貫之」(一をもって之を貫く)と述べている。「一」は数字の始めであり、神・仏を意味し、天の道、人の道、真の道を意味する。

 人との出会いも「一期一会」である。一とは人生の初心である。正師との出会いは一度限りである。道元禅師は「正師に会わざれば、会わない方がよい」とまで言っている。頭の良い人が「尊師」を「正師」と思って盲信したら、絞首台に上らされたサリン事件があった。だからこそ「3年かけて師を探せ」なのだ。

 人は、物事を「一事一心一念道」で取り組むから成功する。それをやるか、やるまいかと「二心」があるから失敗するのだ。

 だからこそ108の煩悩を「除」いて、「正月」を迎えるために除夜の鐘を衝くのだ。

 

解釈があるだけ

 人生で障害、苦難、病気に出会わなければ、人は慢心になり、過ち慢心地獄に堕ちる。自分が出会ったご縁は、すべて自分を正しい道に導くための道路標識である。道路標識には、何の好悪の意思はない。好悪、正誤をきめるのは、己の煩悩である。

 ニーチェ曰く「There is no facts, only interpretation. 事実はない、解釈があるのみ」

 己の色眼鏡のせいで、正しいことを悪と思い、邪道の道に逸れる。色眼鏡とは、己にしみ込んだ潜在意識である。

 

総ての出会いは仏様の差配

 人生の総ての出会いには意味がある。その出会いの数は、煩悩の数と同じだけ、108つある。それに正邪はない。正邪は人の心が勝手に決めているのだ。

 癌という病気にならなければ、己の狂った食生活、生活習慣は変えないだろし、それが間違っていることに気が付かない。病気も人生の道中で出会う仏様である。私も病気になったから、全国の医師を訪ね、南雲吉則先生に出会った。それで己の狂った食生活、狂った生活習慣に気付かされた。気が付かなければ、手遅れになって早死にするところであった。「癌」という仏様に命を助けてもらった。

 自分が癌にならなければ、日本の医療の問題に光を当てなかった。抗がん剤治療の恐ろしさも、気が付かなかっただろう。

 入学試験で失敗して、世には自分より能力の高い人間がいることに気が付き、もっと勉強しなければ駄目だと気が付く。入学試験失敗という仏様との出逢いである。

 自分が交通事故と出会わなければ、自分の運転技量の問題点を明らかにされなかった。それで将来の大きな事故を起こすのを避けられた。仏の導きである。

 

仮面舞踏会

 人間関係で軋轢を生じなければ、自分の自我の強さに気が付かない。それを気付かせてもらった。その衝突で、相手のレベルと比較して、自分のこれからの生きざまが、光で照らされて明徳が明らになったのだ。

 人生は仮面舞踏会である。嫌な相手との出逢いは、邪鬼の仮面を被った仏様との出逢いであった。人生ドラマのクライマックスで、己の鼻をへし折ってくれたので、己は成長が出来た。周りの人は、仮面を被ってこの世を生きている。ぺルソナとは、ラテン語で仮面という意味である。ここからパーソナリティという言葉が生まれた。仏様は邪鬼の仮面を被って、己を試し、己を導いてくれた。感謝である。

 

 「命」とは「人」が棒(一)で、「叩」かれると書く。人間関係で軋轢を生んで、己の慢心を批評という棒で叩かれなければ、自由気ままに生きる畜生と同じである。人間界の叩きを修行という。

 

人生賞味期限

 河村義子先生との昨年の別れは、「いつまでもあると思うな親と金」を教えてくれた仏様との出逢いである。だからこそ、生きている間に精一杯の精進をすべきとの教えなのだ。己もいつまでも生きていられるわけではない。「夕焼け小焼けで日が暮れて♪」を聞きながら、「日暮れて道遠し」に気が付く。それで自分の命の賞味期限と自分の使命を教えてくれたのだ。

Dsc08982s   馬場恵峰書

2019-12-31 久志能幾研究所通信 1440  小田泰仙

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