「あいち航空ミュージアム」は人生を語らず
県営名古屋空港にある、昔の名古屋空港のターミナルを改装して作られ航空ミュージアムである。2階のエントランスから入場するとすぐ、レオナルド・ダ・ヴィンチが設計したヘリコプターが出迎えてくれる。趣向を凝らしたのはよいが、その造りはクラフトマンシップに溢れてはいない。安っぽい感じがするのが残念だ。その後、世界の名機100 機の1/25スケールのソリッドモデルの展示である。1階に8機の実物機の展示がある。
全体を通して、飛行機マニアの私をワクワクさせてくれる感じがない雰囲気が残念である。
博物館の魅力度
中部圏に4つある航空博物館の中で、もう一度、行きたいという気にさせてくれない博物館であった。何か魅力が少ない。
セントレアの「フライト・オブ・ドリームズ」なら、建屋の上階からB787を見下ろしながらコーヒを飲んだり、食事をしたりする楽しみがある。ショップで飛行機のパーツを探す楽しみがあった。シアトルの街を模したレストランで食事の楽しみもある。
「岐阜かがみがはら航空宇宙博物館」は展示に工夫があり、再度行きたいという気になる。飛燕も敬意が払われて展示されている。
「MRJ ミュージアム」は金と手間がかかっていた。(見学記は次回に掲載予定)
ところが「あいち航空ミュージアム」は広さ、展示機、喫茶店、ショップ等が全て中途半端である。
展示の工夫の欠如
2階の通路からYS11を撮影しようとすると、2階通路外に設置された照明装置の部分が機種の頭部にその影が入ってしまい、写真が台無しになる。もう少し飛行機マニアの写真撮影を考慮した機器の配置を考えるべきだと思う。何も考えていないお役所的な展示スペースの配置である。そこで最初に違和感を覚えた。
YS11 照明装置の部分が撮影の邪魔
博物館での物語
博物館は、博物館の商品(展示品)を並べればよいものではない。博物館の展示にもストーリが必要とされる。博物館も書籍と同じで、伝達目的と、その伝達手法、ストーリが必要とされる。博物館を見学に来た人に何を伝えるのか、訴えるのかが問われる。この「あいち航空ミュージアム」はそれが希薄で、ただ飛行機を並べただけという印象を受ける。
その片隅に人目をはばかるようにゼロ戦が置いてある。そのゼロ戦の技術の何がすごいのか、それが博物館として「記述(展示)」されていない。
そのストーリは、
「こんにちは。ようこそ。これがレオナルド・ダ・ビンチのヘリコプターです。(それがどうした? その次の話は? 段落欠如!) これが名機100機の1/25スケールの模型です。一階は実物のヘリです。隅に置かれたのは日陰者のゼロ戦です。後は日本初の旅客機YS11、三菱重工が作ったビジネス機MU2を展示しました。ついでにお土産を買ってヨ。さようなら。」というが如くである。
で、何が言いたいのだ? と疑問を呈したくなる。この博物館を設計した人の思考回路に疑問を感じる。
人生ストーリ
人生で出会う物語にはストーリがある。そこで言いたい結論があるはずだ。そのストーリに論理性、物語性、結論がなければ、その違和感を覚えて、一度、立ち止まるべきなのだ。論理性のないストーリ-は破綻する。そういう意識が人生の危機管理ともなる。私が人生で出逢う事象には、そのストーリー性を常に考えている。
展示機
2019-09-20 久志能幾研究所通信No.1343 小田泰仙
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