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2019年8月23日 (金)

書評『破天荒』

 これはサウスウエスト航空の歴史、経営方式の述べた興味深い本である。トップやマネジャーが明確な方向と方針を示せば、こんなにも会社が劇的に変化することを示した本である。この本は、部下を持つ管理職や、サービス業に従事する皆さんに是非読んでもらいたい。

 これは、既成概念に取らわれず、サービスの本質とは何かを従業員全員が考えて、突拍子もないアイデアで、サービスに徹した記録である。それ故、会社創立当初から、既得権ある航空会社からさまざまな妨害を受けて倒産させられそうになりながらも、他社を凌駕して高度成長を果たした成功物語の記録でもある。

ここに出てくる事例は、乗客に対するサービスが他社には真似できないことばかりで、かつ営利目的だけではない事例も多々ある。その事例には温かさがこもっている。そこには、利益のためではなく、従業員にとって、社会にとって、会社にとって、何がベストかを考えて行動する従業員の姿がある。社員と管理職の違いは何か、管理職の役目は何か、を考える上で非常に参考になる。航空会社はサービス業であるが、製造業の我々にも考えさせられる示唆が多くある。

 この会社、サウスウエスト航空の経営はとても風変わりである。それでいて、91年以降、年平均5%を越える売上高利益率は全米航空業界のトップの座を占めている。この5年間、この会社は路線網を132 %拡張し、年間拡張率は20~30%に達している。その点で、この会社の経営方針が並ではないことが証明される。この会社の経営方針は、書名のとおり「破天荒」である。しかし多くの示唆に富んでいた。(1998.08.26  小田)

 

書き抜き『サウスウエスト航空--驚愕の経営 破天荒』

ケビン・フライバーグ他著    日経BP社 1997年1800円

 

成功する秘訣(P143)

▼経営者の立場で考えよ --- 仕事に対しても人生に対しても。

 経営者は、誰が見ていようと見ていまいと結果を出すために行動する。

▼犠牲者ぶるな。

  何をするときでも、必ず結果を出せると信じよ。

▼他人を信頼せよ。

  相手に「あなたは信頼するに足る人だ」という意思表示をすれば、相手はその気持ちにこたえてくれる。

▼会社と個人の指名、ビジョン、価値観を明確に示せ

▼基本理念を実践せよ。

  他人に期待すること、要求することを、自分が実行するのだ。

 

成功する秘訣(P179)

▼新しい道を切り開け。成功に甘んじてはならない。

▼他人に「どうやったのか」と聞く前に、自分で「どうすべきか」を考えよ

 

◆個人としてサービスに取り組む◆ (P332)

 サウスウエスト航空では空港所長や各部長は、持ち時間の少なくとも1/3 はオフィスから外に出て、歩き回る必要があることを自覚している。仕事をしながら、時間をかけて従業員が直面している困難な問題を自分の目でしっかり確認するためのなのだ。

 誠意というのは獲得すべきものであって、既得権ではない。同社の役員や幹部社員は従業員の誠意を獲得しなければならず、従業員もまた上司の誠意を獲得しなければならない。

 

◆サービスは誠意から生まれる◆(P332)

 ウィンストン・チャーチルは、指導者の影響力は誠実さにあると言った。

「人の感情を呼び覚ますには、その前に自分自身がその感情に圧倒されなければないならい。人に信じてもらうには、自分で信じなければならいなと」。指導者が誠実で偽りのない本物のサービスの基調を決めるのである。

「我々は何を得ることによって生活をしているが、人生は与えことによって豊かになる」アルバート・シュパイツァー P341

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◆他の人にして欲しいことをまず自分から実戦せよ◆(P344)

 サウスウエスト航空の従業員が伝説的なサービスを提供し続ける1つの理由は、サービスの本当の意味を知っている指導者に率いられているからなのだ。指導者の行動を見て、従業員は信頼関係がいかに重要であるかを知り、サービスの本質を学ぶ---ピーター・ブロックの言葉を借りれば「上司に管理されるのではなく、奉仕されることによって、会社の繁栄のために意欲的に働くようになる」。サウスウエスト航空の指導者たちは会社を護ることに情熱を注いでいる。その一番重要な鍵こそ人々に奉仕することなのだ。

 

成功する秘訣(P360)

▼他の人にしてほしいことは、まず自分が実戦せよ。

▼情報が多いほど従業員は努力する。

▼模範的なサービスの体験から生きた伝説を生み出せ。

▼すべての人---顧客、同僚、友人、家族---に期待以上のものを与えることを習慣とせよ。

 

◆指導者たちは協力する◆(P363)

 サウスウエスト航空では、リーダシップは協力関係を通して発揮される。サウスウエスト航空の従業員は、指導者と協力者の役割を交代できる形で仕事をしているのだ。リーダシップの本質は、指導者と協力者の間に築かれる人間関係にほかならない。

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◆リーダシップの本質は奉仕者である◆(P378)

リーダシップとは、自分が率いる人々のために献身的に身を粉にして働く奉仕者にあることであり、人生の喜びや苦しみを分かち合うことなのだ。

 

◆人間は信頼されると、自信を持つようになる◆(P396)

 サウスウエスト航空は、こんな格言を実践してきたのだ。「人間は信頼されると、さらに大きく成長する」

 私たちの願いは、あなたがこの本に触発され一人の指導者として立ち上がり、思い切った挑戦をすることなのだ。つまり、人々にもっと自信を持ってもらいたいのである。人は自信を持つことによって、夢を描く想像力をはぐくみ、未知の世界に飛び込んで自分の夢を追求する大胆さ鍛え、人々の協力を得るための勇気と説得力を磨くようになる。

 

2019-08-23   久志能幾研究所通信No.1308  小田泰仙

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