君たちは何のために現場実習をしたのか?
私は「修身」の講義で新入社員に問う。
「何のために辛い工場での現場実習をしたのか?
あなた方はそこから何を学んだのか?
皆さんに取って実習は何だったんだ?
そこで皆さんは、どんな付加価値を生み出したのか?」と
トヨタ系の企業では、新入社員は全員が工場でラインに入って現場実習を経験する。多くの若者は、その期間、苦役として黙々と耐えるだけの人が大部分である。
君たちは(新入社員)は一過性の実習で過ごすだけだが、その現場で一生を働く人もいる。それを知って欲しい。
皆さんは、一生そこの現場で働くために、今まで大学で学んできたわけではないのだ。もっと付加価値の高いアウトプットを社会に生み出す責任がある。
新入社員たちに、経験した実習の意味を考えて欲しいと思い、このテーマを与えていた。
本との出会い
私が実習の意味を真剣に考えたのは、科学工業英語検定(TEP)1級の受験勉強の為、「ビスネスマンの父より息子への手紙」で「教育の計画」の項を読んでからである。人は学ぶ意思があると、多くのご縁にであう。この本との出会いもご縁である。英語を学ぼうと思わなければ、読もうとは思わなかった本である。そのお陰で、新入社員に考えてもらうご縁を頂いた。
私は47歳で、3年間、三度目の挑戦でTEP1級に合格した。これが私の人生の自信となった。このスキルは、論理構成と伝達能力の獲得であった。英検1級合格者は日本に10万人以上も存在する(年間2500人の合格者)が、TEP1級合格者は日本に500人以下である。いくらTOEIC900点があって、文章に論理構成が出来ていないと、合格しない。
私が実習を受けなかった意味
実は(幸いなことに?)私は現場での実習を経験していない。私の入社当時、急に会社の仕事が忙しくなり、会社は現場実習の出す労力を惜しんで、我々の世代の新入社員を職場に直接配属させて仕事をさせて、それを実習としたためである。だから私はラインの現場実習を経験していないが、それが良かったかどうかは、分からない。しかし後日、それに相当する経験は多く積んだ。
教育の計画
私は毎年夏休みには、地元の製紙工場の経理部で働いた。それはいい経験になった。しかし君には、そのころの私の次のエピソードに注意してもらいたい。ある夏私は経理の仕事がもらえず、その工場で肉体的に一番きつく、汚い仕事につく羽目になった。一日に8時間、週に6日、交替制の仕事だった。その結果、私は2つのことを思い知らされた。そういう仕事を一生続けなければならない人がいること、そしてその人たちが生涯に与えられた時間のかなりの部分を過酷な作業条件のもとで費やしていることである。私は二度とそういう人たちの仲間入りをしなくてもすむようになろうと決心した。本から離れた時間を無駄にしてはいけない。前もって計画を立て、自分の選んだ職業分野で、実地で経験を積むために使って欲しい。君の年齢ではほとんどあらゆることが新しい経験になる。学ぶのは遅いより早いほうがいい。
訳本 『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』 城山三郎訳 新潮社
EDUCATINS
During my summer, I worked in the accounting offices of the local paper mil. It was excellent experience. However, I would like you to especially note the following episode during of my life. One summer I could not get the job in accounting and I ended up working in one of the physically toughest, dirtiest jobs in the mill; eight hours a day, six days a week, on shift work. That left me with two major impressions; the work some men had to spend their whole working lifetimes performing , and the tough working conditions under which they were spending such a great portion of lifetimes. I made certain I would not have to be one of them again. Do not waste that time you get away from your books. Pan ahead and use it getting some one-job experience in your chosen field. At your stage in life, most everything is a new experience. Better to learn it sooner than later.
“LETTERS OF A BUSINESSMAN TO HIS SON by G.KINGSLEY WARD “
2019-07-05 久志能幾研究所通信 No.1246 小田泰仙
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