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2019年5月16日 (木)

ごきげんよう 人の道なき ケモノ道

 ある知人から、「ごきげんよう」という「お見舞いもどき」のメールを受け取った。この40年間で、私のPCには多くのメールが襲来するが、年下の者から、こんな「上から視線」のメールが来たのは初めである。この人は小学校の教師からも、クレーマーペアレンツとして恐れられているという。

 

人の道

 この人には、私が愛知県がんセンターに入院する前に、病状を話し、遺産の一部の相続者として遺言状まで作成した人である。彼はお見舞いに来ると言っていた。しかし、彼は義理があるのに来なかった。人の道に外れている。

 私が手術後の3ヶ月目に、この「ごきげんよう」のメールが来た。「順調にご回復されていることを信じております。」とあり、人が術後の絶不調で苦しんでいるさなか、その無神経さにカチンときた。

 「絶不調です。手術後3か月で15キロ痩せて、今だ3日に一度の頻度で嘔吐しています。余命2年と宣告されました」と返信したが、それに対してなんの返信もない。普通の人なら、何らかのお見舞いの言葉を返信するのが、人の道だろう。それを考えると呆れた。この件で交際レベルを見直すことにした。

 この人の文面から性格を分析すると、自己中心的な文面である。勝手に決めつけて、相手のことは、全く考えていない。

 私なら「病気お見舞い」、「ご体調はいかがですか」の題名でメールを出す。それよりメールより手紙、直接のお見舞いである。それが人の道。

 

ごきげんよう

小田様

 ご無沙汰しています。お加減はいかがですか? 最前にお電話した折にはあまり具合がよろしくなかったようなのでご連絡差し上げるのを様子見しておりました。術後の経過はいかがでしょう。まだ病院ですか? それとも自宅療養? 順調にご回復されていることを信じております。お加減よかったら連絡ください。

 

「ごきげんよう」の語源

 思いついて「ごきげんよう」の語源を調べた。これは上流社会のお言葉で、ごく一部の上流社会でしか使われていない用語である。下々の私には、縁のない言葉であった。道理でこの60年間、身近で一度も聞いたことがなかった。

 

 ごきげんよう :日本語の挨拶で、出会った時や別れの際に相手の健康状態を伺う意味合いを込めて交わされる。元は京都の宮中で発生した御所ことばで、女官が両陛下に会う際にまず両陛下のご機嫌伺いから始まることから、「お揃いあそばされましてご機嫌よう」という挨拶が行われた。身分によっては「ご機嫌よう」ではなく「ご機嫌さんよう」と、より遜る必要があった。近代以降は主に山の手言葉として使われるようになったが、これは当時皇族や華族・上流階級の女子が多く学んでいた跡見女学校に淵源を発し、一般に広まっていったものといわれる。1950年代頃には、様々な古い言葉遣いがなくなっていく中で、「ご機嫌よう」はまだ旧公家・華族の間で使用されていた。21世紀現在も、学習院女子中・高等科や学習院女子大学、東洋英和女学院、聖心女子大学などの一部の私立学校では挨拶として日常的に用いられている。

(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

 

コミュニケーションとは、情報の伝達

 コミュニケーションとは、情報の「伝達」である。コミュニケーションとは、「伝える」だけではない。相手の心に「達して」初めてコミュニケーションが成立する。多くの人は情報を「伝」えるだけで、その心が「達」していない。情報とは情けの報せなのだ。

 同時期にドイツのドレスデントリオのメンバーから、病気見舞いのメールがきた。心温まる文面で泣けてきた。

 「計り知れない河村義子さんを失った後に、小田さんという友を失いたくない」とあった。

 

Dear Mr. Oda-San,

  I heard from M, that you had very bad diagnosis about a lethal illness and you of course were really sad and without great courage. I told Heike and Ulf immediately and we all were deeply touched and upset about these bad news. After Yoshikos immense loss, we don’t want to lose another Japanese friend – if I may be allowed to name you so!

 (中略)She wrote, that now you have a good chance to stay some more years, live and enjoy your life and so we deeply hope to see you next year!

 (中略)From 26th of February till the 5th of March 2020, we are travelling around Nagoya and it would be very nice to have the opportunity to see you again in and after a concert enjoying some food with our dearest friends.

  Best wishes from Heike and Ulf dear Oda-San, we think on you and your health, stay strong and optimistic!!!

For the Dresden Philharmonic String Trio,

Dsc04306

Dsc04341 ドレスデントリオ&河村義子  2018年1月13日

 クインテッサホテル大垣にて

 

2019-05-16   久志能幾研究所通信 小田泰仙

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