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2018年11月11日 (日)

銀河鉄道夜行便は冥途行き

 我々が乗車している銀河鉄道の夜行列車は、昼も夜も37兆個の細胞が、我々が寝ているときも、心臓を動かし、血を送り、肺を動かし、命を長らえさせてくれている。しかし、その列車の乗車時間は僅か80年間である。ある人は、65歳で認知症になり、人間としての命を終え、途中下車である。

 ある人は、医師から余命1年と宣告され、「金はいくらでも出すから、助けてくれ」と泣きつく。それを拒否されると、このヤブ医者め、と泣き崩れる。銀河鉄道には強制途中下車もあるのだ。

 

ハードスケジュール

 2018119日、第10回浜松国際ピアノコンクール第一次予選第一日目で、朝の10時半から夜810分まで、ピアノコンクールの演奏を聴き続けた。一人20分間の課題演奏、それが3人続き1時間。その後10分の休憩の後、おなじパターンで夜8時までコンクールが延々と続く。その95名の挑戦者の演奏が5日間も続く。弾く方は、自分の人生がかかった真剣勝負である。聴く方も体力勝負である。演奏会だから狭い椅子から動けず、エゴのme症候群になりそうである。さすがに、私は体力の限界でお昼過ぎ、お腹が膨れて眠たくなった。

 

列車は止まらない

 5分か10分ほど寝てしまったようだ。目が覚めると、そんなことはお構いなく、演奏者の人生をかけた死闘のコンクールは続いていた。自分が寝てしまっても、乗車した銀河鉄道夜行列車は驀進していた。自分が寝ていても、心臓も血液も、肺も動き、一秒一秒ごとに冥途に向かって驀進していた。冥土への到着時間は決まっている。浜松のイベントは何事もなく進行していた。

はこの世で何をしようとしているのか。それを自問してしまった。このコンクールを聴いて、己はどんな付加価値を生み出したのか。その分、己がこの世で活動すべき時間が減ったのだ。

 

到着予定時間

気が付けば、夜行列車の最終地到着時間まで平均であと12年(希望は40年?)しかないではないか。今から何を残して逝くのか。銀河鉄道は冷酷な定時運行で、止まってくれない。振り返れば、この8年ほどの間に、多くの仲間が途中下車していった。みんな想定外での途中下車であった。学生時代の友人は、年賀状で「そろそろゆっくりしたいね」と書いてきて、その3月に途中下車である。残された奥さんと子供が気の毒であった。

 

乗り換え案内

 今、走る電車の中で、新しい行く先を考えている。銀河鉄道は意思さえあれば、行き先も乗り換えも可能である。人生は、いつ新しい線路を思いついて乗り換えても、遅いということはない。意志だけの問題だ。

 途中停車駅が、ゴルフ駅や赤ちょうちん駅なら、それをすっ飛ばす特急列車に乗り換えよう。あの世までの乗り換え時間が僅かなのだ。

「お急ぎください」との仏様の声が聞こえる。優しい車掌さんの声だ。

 

2018-11-11  久志能幾研究所 小田泰仙

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