« 磨墨知54. 仕事の時刻表を意識しよう | メイン | 磨墨知340-2. 家の玄関に骸骨をぶら下げない »

2018年11月 8日 (木)

ソニーは、行って逝ってしまった。もう帰らない…♪

 あの僕らの輝いていたソニーは、いってしまった。外国にいってしまった。変わってしまった。もう昔のソニーではない。ソニーはいつの間にか、国の憲法に相当する社是を改悪してしまっていた。だから今のソニーは昔のソニーではないのだ。

 

井深さんの魂の社是

 ソニー株式会社(創業当時:東京通信工業)の創業者である井深大は、会社の設立目的の第一に「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由豁達にして愉快なる理想工場の建設」を掲げた。この終戦直後(1946年)に書かれた設立趣意書には、「日本再建、文化向上に対する技術面、生産面よりの活発なる活動」、「国民生活に応用価値を有する優秀なるものの迅速なる製品、商品化」、「国民科学知識の実際的啓発」を会社設立の目的として、社会や社員に対して価値ある存在になる姿勢が盛り込まれていた。

 

会社設立の目的

  • 一、真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設
  • 一、日本再建、文化向上に対する技術面、生産面よりの活発なる活動
  • 一、戦時中、各方面に非常に進歩したる技術の国民生活内への即事応用
  • 一、諸大学、研究所等の研究成果のうち、最も国民生活に応用価値を有する優秀なるものの迅速なる製品、商品化
  • 一、無線通信機類の日常生活への浸透化、並びに家庭電化の促進
  • 一、戦災通信網の復旧作業に対する積極的参加、並びに必要なる技術の提供
  • 一、新時代にふさわしき優秀ラヂオセットの製作・普及、並びにラヂオサービスの徹底化
  • 一、国民科学知識の実際的啓蒙活動

 

経営方針

  • 一、不当なる儲け主義を廃し、あくまで内容の充実、実質的な活動に重点を置き、いたずらに規模の大を追わず
  • 一、経営規模としては、むしろ小なるを望み、大経営企業の大経営なるがために進み得ざる分野に、技術の進路と経営活動を期する
  • 一、極力製品の選択に努め、技術上の困難はむしろこれを歓迎、量の多少に関せず最も社会的に利用度の高い高級技術製品を対象とす。また、単に電気、機械等の形式的分類は避け、その両者を統合せるがごとき、他社の追随を絶対許さざる境地に独自なる製品化を行う
  • 一、技術界・業界に多くの知己(ちき)関係と、絶大なる信用を有するわが社の特長を最高度に活用。以(もっ)て大資本に充分匹敵するに足る生産活動、販路の開拓、資材の獲得等を相互扶助的に行う
  • 一、従来の下請工場を独立自主的経営の方向へ指導・育成し、相互扶助の陣営の拡大強化を図る
  • 一、従業員は厳選されたる、かなり小員数をもって構成し、形式的職階制を避け、一切の秩序を実力本位、人格主義の上に置き個人の技能を最大限に発揮せしむ
  • 一、会社の余剰利益は、適切なる方法をもって全従業員に配分、また生活安定の道も実質的面より充分考慮・援助し、会社の仕事すなわち自己の仕事の観念を徹底せしむ。

 

ソニーの変節

 ところが、現ソニーは社是を下記に変えて、欧米のグローバル経済主義の拝金主義会社と同じになってしまった。いたずらに規模を追う姿勢を戒めていたのを反故にして、大企業を目指す姿勢となった。魂を外国人投資家に売ったのだ。

 下記の社是の中の「ソニー」を別の会社名に置き換えれば、外国の何処でもある並みの社是なのだ。だから会社も並みになったのだ。井深さんの宣言した社是とは格が違うのだ。

 戦後、トヨタ、ホンダ、松下電器、ソニーは、日本の経済復興をリードした。その中で、ソニーだけが、創業者の意志を消して、社是を変えてしまった。社是は会社の憲法である。それが会社の行動を決める。社是が曲がれば、会社も曲がる。

 

新しい社是

 「イノベーションと健全な事業活動を通じて、企業価値の向上を追求し、持続可能な社会の発展に貢献することが、ソニーの企業としての社会的責任の基本をなすものです。私たちソニー社員は、ソニーの事業活動が株主、顧客、社員、調達先、ビジネスパートナー、地域社会、その他機関などのソニーのステークホルダーに与える影響に十分配慮して行動します。」

https://www.sony.co.jp/SonyInfo/csr/vision/

 

劣化した新社是

 創業者の井深大さんが草葉の陰で泣いている。

 新しい社是では、事業活動の最重要対象者は「株主」なのだ。次が顧客、社員なのだ。ソニーの社是は、欧米のグローバル経済主義教の企業と同じ感覚の社是に劣化したのだ。だから平気で、社長の経営ミスで経営が不振になると、リストラの追い出し部屋を作り、利益最優先で、基幹部品を海外から調達し、日本の雇用を無くし、株主利益最優先の経営で、すぐには儲からない事業からは撤退する。それでいて社長は安泰なのだ。凋落の責任者であるストリンガーに巨額の退職金や報酬が支払われ、その全容はいまだに闇の中である。

 『奪われざるもの――SONY「リストラ部屋」で見た夢』(清武英利著、講談社+α文庫)を参照

 現在のソニーの目的は「己の会社だけの企業価値の向上」が最優先で、ついでに持続可能な社会の発展に貢献なのだ。「持続可能な社会」とは、どこの社会なのか。実質的に敵国でも、ソニーが金儲けできる国なら、それは「持続可能な社会」なのだ。だから平気で技術をコンペチターに移転する。貢献する対象が曖昧だから行動も曖昧なのだ。井深さんが「日本再建、文化向上に対する技術面、生産面よりの活発なる活動」と謳っているのとは、大違いなのだ。

 いわばソニーファーストであって、日本ファーストではないのだ。今のソニーは実際に「イノベーション」を追わないから、開発でアップルに負けたのだ。iPod、iPadを生み出せない会社に没落したのだ。

 だから青少年に悪い影響を及ぼし、日本の将来の禍根を残す「健全でない」ゲーム産業に熱を上げているのだ。現在のソニーは、井深さんの作ったソニーではなくなった。さようなら、昔の僕らの理想のソニー。

 

2018-11-08   久志能幾研究所 小田泰仙

著作権の関係で、無断引用を禁止します。

コメント

コメントを投稿