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2018年11月 1日 (木)

磨墨知117. 225円の決断をしよう

私の時間節約

 私は、時間節約のため、会議通知、宴会等の案内をもらったら即、返事をする。まず返事をして、都合が悪くなったら変更する。それを後回しにからするから、後でその処理に時間がかかる。結果として幹事に迷惑をかける。幹事とは、己の後工程である。後工程とはお客様である。お客様を泣かせてはならない。

 

225円の決断

 2000年、私は社内セミナー事務局として、昼食(社員食堂で225円・会社補助あり)の案内をした。ところが、そのメールにすぐ返事をした人はたった5割であった。人の決断力を垣間見て、人生を考えた。たった225円の昼食の申込有無が即決できなくて、なんで人生の決断ができるか? 時間創出には決断力がいる。

 

即決できずが半数 

 私の所属事業部のビジネス文書能力向上のため、2000年6月24日(土)に、篠田義明早稲田大学教授によるテクニカルライティングセミナーを技術開発センターで開催した。参加者は50名である。当会場が陸の孤島であるため、セミナー参加者向けに、昼食申し込みの案内をメールで行った。この事務処理でなかなか返事が集まらなかったので、後日、データを解析した。 

  メールを開いて即返信     48%

  当日もしくは翌日に返信    10%

  3日~7日間で返信      20%

  回答なし           22%   (n=44)

 これに日頃の仕事ぶりやコミュニケーションのやり方が、全て出ている。人生は偶然ではない。一つの行動が全てを象徴している。225 円の昼食費の決断でも、日頃の決断のさまが出ている。今回の50人は休日に、テキスト代を払って自己啓発に参加する意欲ある人達でも、この有り様だ。そうでない人達だったらどうなのだ。

 結果として、約半数の方がその場で決断できなかった。わずか225 円の話である。メールを見てすぐ2行の返事を書くだけの事務処理に対して、後から処理するとなると、まずメール暗証番号を打ち込み、メールが開くのを待ち、目的のメールを探して返信する。これで最低2分はかかる。その分だけ自分の仕事が遅れるのだ。その分だけ部下の書類の決裁が遅れるのだ。

 

積小為大

 22%の方は「不食の場合も連絡を頂きたい」とお願いしたのにも関わらず返事のない方でした。文法には学校文法、生成文法,伝達文法がある。実社会ではこの「伝達文法」が理解が必要だ。この場合は、「学校文法」として返信要求のメール文ではないが、「伝達文法」として返信が要求される。返信をしなかった人は、そのビジネス常識がないといえる。

 返信のない人は食事なしと割り切って、事務的に処理をすれば良いが、今回は伝達文法の検証のため、文面に返信を要求した。つまり返信なき人は、組織としてのコミュニケーション意識がない。その弊害で、組織に余分の時間ロスを与える。大きな仕事とは、ホームランの集まりではない。小さい作業の確実な積み重ねや、当たり前のことの積み重ねが大きな仕事を成す(積小為大)。

 

決断

 責任者の仕事の大半は決断である。責任者が決断しないと組織は動かない。書類が机上に停滞している間、仕事は止まり、死の時間が流れる。企業の業績格差を生む要素はスピードと行動力の差だ。テクニカルコミュニケーションの目的は、文書での情報伝達と決裁のスピードアップである。だから225 円の決済に1週間もかかる人は、稟議100万円の決済はできない。たった225 円の決断を延ばす人は、決断を遅くする練習を毎回しているのだから。

 

仕事と作業

 人が日頃行っているのは「仕事」と「作業」である。責任者は、作業でなく仕事をしなくてはならない。作業とは時間コストである。それに対して、「仕事」とはその作業(=時間コスト)を無くすための頭脳労働である。責任者の仕事は、選択をして、成果の出る方向に実行の可否を決断する。その決断を延ばすのは業務怠慢だ。己は業務の責任者として仕事をしているのか? 作業をしているのか?

 

2018-11-01   久志能幾研究所 小田泰仙

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