磨墨知598-2. 組織のおみくじ
日頃のリーダーに、組織のお御籤現象が問われる。1回、2回とある事象が起こり、「凶」との信号が出るのでが、それを「吉」の都合の良いデータが出るまで、その信号を無視するか、信じないで棚上げする行為がよくある。都合のいいデータが出て、安心して「凶」のデータを忘れるのである。リーダーとして悪い情報は信じたくないのだ。そして暫らくして組織が危機状態に陥るのだ。
危機管理の問題である。まず謙虚に悪いデータを検討し、過剰でもいいから対策を考える。そうすれば、雪印乳業食中毒事件、三菱リコール隠し、タカタの問題は起こらなかった。
裸の王様
己は良いデータだけを待っている社長ではないだろか。それは裸の王様である。そういう社長の元には「吉」のデータだけを報告する部下が集まる。すべて社長の責任である。そういう風に、部下を日頃の自分の言動で教育したのだから。
そして、記者会見の場で、「凶」の報告が飛び出し、「その話は本当か?」と部下に聞く失態を見せるのだ。食中毒事件での雪印乳業社長のように。
裸の王様を笑える人は幸せである。だって何も考えていないのだから。社長になれば、多かれ少なかれ、裸の王様になってしまう。そうならないことがいかに難しいか、それに気づくかどうかである。まるで小川敏大垣市長のように。
リーダーの感性
リーダーは回りからいろんな情報を「おみくじ」として受け取っている。それをどう感じるか、だ。己に関する上司、部下、同僚のからの声なきお御籤である。また、部下の情報も受け取っている。自分の行動、部下の行動は正しいのか、間違っているのか、相手の些細な言葉尻、しぐさからそれを「凶」のおみくじ(情報)として、謙虚に受け取れる人がリーダーなのだ。それがリーダーの感性である。
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トヨタのおみくじ 「前工程は神様」
トヨタ生産方式の言葉として、「前工程は神様、後工程はお客様」がある。人のことより、まず自分ができることをお客様(後工程)のために全力を尽くそう。自分の気づかない点を見える人、指摘してくれる人が、自分を超越した神様なのだとの思想である。
神様に対して、要求に文句をいうのは不遜である。自分のできることを精一杯する。それがお客様(後工程)に対する貢献となる。貢献に対するご褒美が、会社の利益、個人の給与なのである。どうせ神様には逆らえないのですから。そうやって、謙虚に自部署の課題をカイゼンにカイゼンを重ねて行って、トヨタは勝ち組みになったのだ。前工程(お客様)の要求が理不尽だ、横暴だ、無理だ、と言っていた会社が、負け組み企業になっている。そしてそんな会社は、環境が悪い、時期が悪い、従業員が悪い、いや社長が悪いと、己のことは棚上げして文句だけを言うのだ。そして市場から淘汰されていく。
自然界のお御籤
ダーウイン曰く「環境変化に対して最も素早く対応できた種だけが生き延びる」。日本にはもっと美しい言葉がある。「落葉一枚天下の秋を知る」。これもおみくじと同じ意味である。そのように解釈できる人が感性のある人である。
環境変化こそが、自然界と人間社会からの「おみくじ」なのだ。神様(前工程)からの一言が「おみくじ」なのだ。その一言にビジネスチャンスの宝が埋まっている。その囁きを聞き逃す人に神様は冷淡なのだ。運命の女神には前髪しかない。「おみくじ」を見て、運命の女神の前髪を一回目で掴まないと、通り過ぎた後では遅いのだ。女神の後頭部は禿ている。
2018-10-30 久志能幾研究所 小田泰仙
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