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2018年2月14日 (水)

障子を開けてみよ、石の世界は広いぞ

 「雙松岡塾跡の碑」の石は、庵冶石という銘石で、当時の日本では最高で高価な石である。庵冶石は硬く表面が滑らかで、文字を刻んでも400年は風化しないという(業者の言い分で、実際はこんなには持たない)。昭和18年という太平洋戦争の戦争真っ最中で、物資も欠乏してきた大変な時期に、この碑を庵冶石を使って建立した楠本著卯三郎氏(元大阪大学総長)の意気込みが感じられる。

 その碑の存在を調べ、大阪の倉庫に眠っていたこの碑を発見して、その再建に尽力された大村高校同窓会「雙松岡碑と大村藩蔵屋敷跡碑を保存する会」の皆様に敬意を表します。

 

世界という視野

 日本の国土は、全世界の陸地面積のうち0.25%の占有率でしかない。その中で採れる最高の石であると誇っても、残りの99.75%の全世界から産出される良品の石と比較すると、確率的にも見劣りがする。我々は井の中の蛙であってはならない。世界にはもっと良い石が存在する。当時としては輸送手段や、採掘技術が未発達であった事情があるが、国産の石というブランド信仰だけで、石材を選定しては不可である。しかし日本の石材店は、国産というだけで割高の石を売っているお店が多いようだ。

 私は自家の墓の再建に当たり墓石の選定では、インド産で一番硬く、吸水率ゼロの石を選択した。日本の最高級の石材よりも固く(比重、圧縮強度)、比較的安価である。吸水率が高いと冬季では、雪や雨で石が吸った水が凍り、その水分が膨張して石を痛める。降雪が多い土地では吸水率の低い石の選定が必要である。

 豊田佐吉翁の言葉「障子を開けてみよ、世界は広いぞ」とは、石碑の石材の選択にも言える。

Photo 上記のデータは石材業者のカタログ値による。公的機関の測定データではありません。

 下図は某記念碑であるが、雪の多い土地なのに予算上で安いという理由だけで、ある銘柄の御影石を使ったが、築15年で表面にヒビが入ってしまい、予算をケチった恥を多くの市民の前を晒している。後世の残る記念碑の石材の選定にはコストだけで決めてはならない。

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   築15年でヒビが入った御影石(某記念碑)

碑の拓本

 馬場恵峰先生が「雙松岡塾の碑」の拓本を取ることを川添会長さんに勧められた。そうすれば記録にも残り、後世の人の勉強の糧になるという。師も昔の名筆といわれた石碑も拓本を取って、拓本から昔の名筆を学んだという。

私も今回の墓の改建で、風化して読めなかった墓石の文字を、恵峰先生より拓本のアドバイスしていただいた。大垣拓本同好会に協力を仰ぎ、墓石から拓本を取った。そのお陰で墓に刻まれたが、風雪で読めなくなっていた「黄鶴」の文字が判定できた。それが今回のお墓の建立のご縁となった。拓本を取るという知恵を教えて頂いた恵峰先生に感謝です。

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  2015年6月1日

 

2018-02-14

久志能幾研究所 小田泰仙  e-mail :  yukio.oda.ii@go4.enjoy.ne.jp

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