F1フォーミュラとして殿様飛蝗を彫る
2017年11月14日、上野の国立博物館で開催中の「運慶展」と東武百貨店池袋店で開催中の「大仏師松本明慶仏像彫刻展」に出かけた。その展示会で、明慶師が身を乗り出して説明を始められた小さな作品があった。それが「古木に殿様飛蝗」の作品であった。先に会場を一巡して、目には留まっていたが、別に気に留めるまでもなく、他の仏像に気を取られて、通り過ぎていた作品であった。明慶師の説明を聞いて興味を持った。それは彫刻のF1フォーミュラ級の作品であった。その作品に持てる技術の全てを投入して、技術の修得と技の誇示として作られた作品であった。それは自動車メーカが全技術を投入して、F1フォーミュラカーを製作してレースに参加するのに似ている。それで開発された技術を大衆車に展開される。明慶師もその技術を仏像づくりに投入される。
松本明慶師の解説
天才肌の松本明慶師は、まず言葉から説明をされた。バッタとは「飛ぶ」と「虫」扁に「皇帝」と書く。バッタは持てる複眼で、飛ぶ先をしっかりと見据えて、それを目掛けて一気に飛ぶ。人生は、跳ぶ前の良く見よ、である。それが殿様バッタである。別名、大名バッタともいう。縁起物で、将来の飛躍を叶えるお守りだという。単純な私は、松本明慶師の名説明にコロッと丸め込まれて、入手する決断をした。芸術品の入手の決断は一瞬である。展示会の最終日、二度目の明慶展に出向いたら、同じもう一体の作品に売却スミの印が付いていた。目を付ける人はいるものだと感心した。
殿様飛蝗の詳細
その「古木に殿様飛蝗」が、2017年12月20日(先勝)の今日、自宅に納佛された。自宅に届けられた作品を見て、驚きの再確認である。古木の長さ150mm、飛蝗は40mm。枯木とその上に居座る飛蝗は、一体で彫られた楠の一本彫りである。頭の角だけが、別部品の特殊素材で作られている。それをカメラの接写機能で撮って、その写真を拡大してみて、また驚きである。バッタの前足は、太さ1.9mm程度。どうやってこんな細い足を、なおかつ宙に浮いているように彫ったの?と言いたくなる。少し刃物に力をかけすぎれば足が折れて無くなってしまう。その太さ1.9mm程度の足の表面が、その足を擦れば鳴き音を出せるような質感で飛蝗の足が彫られている。足の皮の状態がリアルである。枯木の年輪も、本物の年輪のように彫られている。元は楠の角材である。古木の表面の状態が、忠実に彫られている。明慶師の仏像づくりで培った技のこだわりに脱帽である。明慶師が、その出来栄えに自慢したくなるのも納得できる。この殿様飛蝗のお値段は軽自動車一台分である。この殿様飛蝗に負けないように、自分も将来をしっかりと見据えて、飛躍をしたい。仏様が殿様飛蝗に姿を変えた。私の守り佛である。
2017-12-20
久志能幾研究所 小田泰仙 e-mail : yukio.oda.ii@go4.enjoy.ne.jp
HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite
著作権の関係で無断引用、無断転載を禁止します。
コメント