人生の原点復帰
自分は何処から来て、何のために生きて、何処に行くのか、それが分からないと人生で迷いの世界に入り込む。人生の不動の原点とは、ご先祖様のお墓である。お墓は、改建等で場所が移動することもあるが、原則的には不動である。それが今回のお墓作りと20年間の研削盤開発設計の経験から得た結論である。何時かはご先祖と一緒にお墓に入る自分である。それが分かればこの世の覚悟ができる。その墓がない人生とは、はかない人生である。人生の岐路に立ち向かったとき、ご先祖のお墓の前で手を合わせると、心が落ち着き、迷いの無い決断が下せるのにはワケがある。ご先祖様が背中を押してくだっている。
研削盤と人生
私は円筒研削盤設計開発に20年間従事した。研削盤とは、砥石を高速で回転させその切れ刃で、主軸の取り付けられた工作物を回転させながら工作物を真円に加工する工作機械である。いまになって、研削盤での加工とは人生の縮図であるとの思いに至った。
砥石は自分自身である。工作物は自分のやるべき仕事である。工作機械のベッドは己の社会的基盤である。研削液は社会との潤滑剤としての社交性である。土台がしっかりしていないと、わずかな振動や事件に揺れてビビリの原因となる。それは自分の基盤も工作機械のベッドも同じである。
砥石が固定金具で偏荷重なく正確に固定されていないと、高速回転中に砥石割れの事故を起こす。人間がきちんとした自立心がなく育つと自殺や事故に会うのによく似ている。
人生の剛性
自分の人生も研削盤も、仕事への体制は、こなす仕事や加工物への計算上のモデルとして、バネで支えられた剛体として例えられる。支えるバネが弱いと、加工する反力に負けて、効率的に加工ができない。自分を支える思想や体力がないと大きな仕事に対処できないと同じである。
振れ止め
剛性の小さな工作物(例:クランクシャフト)を加工する場合は、加工する砥石の反対方向に、振れ止めという装置で支えをする。そうしないと工作物が撓んで、精密に加工ができない。人生で捉えどころがない対象物に取り組む場合は、目に見えない社会のご援助を頂いて取り組むから成功する。それは己の人徳とご先祖の力がなせる業である。
潤滑剤
いくら切れ味のよい砥石で研削しても研削液がないと焼けの原因となる。いくら頭が良くて頭が切れても、世の中を渡る潤滑剤としての社交性を持たないため、世の中に受け入れられない輩が多いのも現実である。
砥石で加工すると表面が荒れて磨耗するので毎回、ドレス(目立て)をしなければならない。その度ごとに砥石は小さくなっていく。自分の体を消耗させ寿命を短くしながら人間社会で仕事をしていく己の姿である。
自分の位置検出
砥石が磨耗すると、砥石が工作物と接する最先端の位置が分からなくなる。遮二無二働いて、何のために働いているか自分を見失うとき、自分の位置づけが分からなくなると、仕事への真摯な対応が出来なくなる。同じように、加工する砥石最前端位置が分からないと正確な寸法に工作物を仕上げることができない。砥石自体は砥粒とボンドと気泡でできた石の結合材である。まるで人の心のように掴み所のない存在である。そのままではとても鉄を削れない。鈍角を持つ砥粒が高速で回転すると、鋭角の刃物のように鉄を削ることができる。心が志を持つと社会を動かす力があるのに似ている。
その砥石の表面は高速で回転しているので、直接には砥石寸法を測れない。そのためAE(アコーステックエミッション)センサーを用いてその位置を検出する。センサーが砥石と当たり破断する音を感知して間接的に位置を割り出すのである。人間も仕事や試練との遭遇で、自分の対応や結果で、自分の心の成長を悟り、その社会的位置を確認するのと全く同じである。
原点復帰
砥石の直径が分かり、砥石の最先端位置が分かって、砥石台がどの位置にあるかが不明である。そのために機械原点を設けて、加工をする前に原点復帰をして自分の位置を確認して、あるべき位置まで前進して研削加工を始めることが出来る。それが原点復帰である。時としてCPUが暴走して機械位置が分からなくなることがある。迷ったら原点復帰が必要なのは、機械も人間も同じである。
今日は12月25日、クリスマスでキリスト様が生まれた日。キリスト様の原点は天国です。キリスト様は天国に生まれて、天国に帰って行かれた。この世で2000年にわたって人々の心に残る大きな仕事をされた。宗派の違いは、単に国の文化の違いである。どの宗教もその教えの本質は同じである。少しでも世のためになる仕事を残して旅立ちたいもの。
たまたま、今回が第500通目の記事となりました。感謝。
2017-12-25
久志能幾研究所 小田泰仙 e-mail : yukio.oda.ii@go4.enjoy.ne.jp
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