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2017年9月16日 (土)

地蔵異聞  ドラえもん地蔵

 地蔵菩薩尊は生きとし生けるもの、衆生一切を救ってからでないと自分は涅槃寂静しない、とお誓いされて修行されている菩薩である。まるで暗い人生航路を行く大型船の船長のようである。乗員の安全を祈願して、船が難破したときは、乗員が全員下船しないと船長は船から脱出しない。船と運命を共にすることも多い。それが船長の役目でもある。自分を犠牲にしてでも、仏縁の人を救う方はすべて地蔵菩薩である。

 

縁なき衆生

 そのお地蔵様にも唯一救えない衆生がある。それは「今世で縁の無かった者」である。たった一度でも、生前にお地蔵様に手を合わていれば、それを仏縁と為し救ってくださる。しかし、子供にそんなことを言っても理解できないが、ドラえもんには子供がみんな反応する。ドラえもんの頭を撫で、そして自然とドラえもん地蔵に手を合わす。それで仏縁ができる。子供を連れてきた両親、祖母祖父も、全員に仏縁ができる。観音様は三十三の姿に変身して衆生を救う。ドラえもんは地蔵様が変身したお姿である。

 某寺院のドラえもん地蔵では、小学生が自転車で来て手を合わせている姿をよく見るし、お寺の子も学校に行く前に、ドラえもんに「行ってきます!」と挨拶して登校している。微笑ましい姿である。そんな子供は成人しても不良にはなるまい。ドラえもんは「これでいいのだ!」が決まり文句である。恵峰先生もドラえもんのこの言葉が大好きだとおっしゃる。この言葉の意識下には、現状の自分の精進を認め、相手を認め、そこから出発する心が感じられる。多くの仏像の中で、地蔵尊だけが我々と同じ視線か下から我々を見てくださる。上から視線ではなく、地蔵尊は自他を同じ視線で観て、現状を認め高望みせず、悲観せず、見下さず、ひたすら吾が道を歩むことを教えてくださる。

 

知的財産

 このドラえもん地蔵は中国で作られた石像である。一時期、ミッキーマウスやドラえもんの模造石像が大量に日本に入ってきてことがあった。明白な著作権違反品で、公正取引委員会がその石像を置いてある石材店に行政指導をして、廃棄処分を指導した。その処理に困った販売店がお寺に寄進をした一つが、このお寺に安置された経緯のようである。だからこのドラえもん地蔵の裏側にはあるべき小学館の著作権の表示が無い。ご縁でこのお寺に安置されたのも仏縁であろう。営利目的で置いてあるわけではないし、お寺という場所なので、許されると思われているようだ。しかしお寺は公共の場所である。違法な物品を設置は問題がある。空港の税関でも、中国製の贋物ルイビトンのバックは没収である。それが知的財産侵害物に対する法治国家の正しい処置である。このドラえもん地蔵中国製で、知的財産権の違法製品である。こういう事例が、日本の雇用を破壊していく。大きな堤防の決壊も小さな蟻のひと穴からである。

 日本国内にコピー商品を輸入する行為は違法である。関税法69条11項で「輸入してはならない貨物」として「知的財産を侵害した商品」と規定されている。109条にそれ輸入してはならない商品を輸入した罪として「懲役10年以下または罰金1,000万円以下」と規定されている。

 

日本の財産を守る

 知的財産とは、今後の日本が守らねばならない大切な財産である。頭で汗をかいて生み出した知的財産は、肉体的労働からの生産物以上の価値がある。キャラクタービジネスは、矢野経済研究所の調査によると、2013年が2兆3110億円の市場規模である。それに比例した日本の雇用が存在する。それが知的財産権で中国に侵されると、その分の日本のGNP(日本の雇用)が消滅する。サラリーマン労働は8時から17時までのルーチン労働で成し遂げられるが、知的財産は24時間の考え続ける知的労働から生み出される。それをパクリで盗用されるのを見逃しては、日本の衰退の原因となる。

 また知財の盗用問題は、新幹線技術パクリ事件のような問題に発展する。中国は、新幹線の技術をパクり、自国開発だと称して日本と競合して世界の各地に新幹線を売り込み始めた。インドネシア新幹線入札で、日本は受注競争に中国のパクリ技術に負けた。中韓は違法に日本の技術情報を盗み、急速に技術レベルを上げ、日本の市場と日本の雇用を奪っていった。日本が長年頭の汗と苦労の涙をかいて築き上げた知的財産を盗んだからである。知的財産を創造するの大変だが、盗むのは簡単である。知的財産権の保護や技術の盗難防止を軽視した結果が、現在の家電業界の衰退である。何万人というリストラで、多くの家庭が泣き、日本人の雇用が消滅した。知的財産を盗むとは、それで生計を立てている衆生を困窮に追いやること。

 

不偸盗戒

 修証義に曰く「第二不偸盗戒」。道元禅師の教えは、盗むことを禁じている。ドラえもん地蔵がそれを反面狂師として教えているのは皮肉である。たかがドラえもん地蔵、されどドラえもん地蔵の問題である。石屋さんやお寺さんが日本の経済基盤を揺るがす問題をないがしろにしては、道元禅師もお嘆きである。それを見て育った子供の知的財産への不感症さが怖い。これではお寺も衰退する。

 

図1 ドラえもん地蔵

 

2017-09-16

久志能幾研究所 小田泰仙  HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite

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