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2017年8月 8日 (火)

室村町四丁目地蔵菩薩尊の閉眼法要

 2016年3月24日10時、室村町四丁目地蔵菩薩像(明治43年(1910)建立)の改建のため閉眼法要が行われた。昨年、このお地蔵さんを守っていた大倉さんが亡くなられた。その遺族の大倉家と山田家が、戦火も浴び風雪にも耐えて傷んだお地蔵さんを全面的再建として寄進していただけることになった。

 

室村町四丁目地蔵尊建立の経緯

 明治43年は日韓併合があり、その前年に伊藤博文元首相が暗殺され、世情が不安定で不幸な事件も数多くあった時代である。その年に鐘紡が、社員と地区の平安と幸福を祈願してこの地蔵菩薩像を建立した。当時は地区の公民館(同志館)前の広い境内に、この地蔵菩薩像が安置されていた。

 この地蔵菩薩像の功徳は、室村町を襲った大垣空襲に顕われた。昭和20年(1945年)7月29日夜半、米軍B-29爆撃機90機による無差別殺戮爆撃で、100ポンド焼夷弾3,000発、4ポンド焼夷弾17,000発が投下され、罹災戸数は市街地の約6割にも及ぶ4,900戸、罹災人口30,000人、死者50人、重軽傷者100余人の惨事となり大垣市街地の大半は焼失した。大垣城(国宝)や(大垣別院)開闡寺なども焼失し、建物等は僅かに大垣駅などが残ったに過ぎない。室村町も火の海の灼熱地獄となり、地蔵菩薩像の土台石垣と御身体が真赤になりながらも(焼夷弾の油を浴びて)、立ち続けてこの地域を見守り続けたという。火災から逃げまどう中で、灼熱の炎で真赤になっても立ち続けるお地蔵様のお姿が眼に写りこみ上げてくるものがあったと元自治会役員(当時9歳)が回想する(歴代自治会役員の証言、『通史編近現代』大垣市編による)。

 その時の炎で焼かれた痕跡が残り、石衣も一部が剥がれ落ちて痛々しい。戦後から今まで、この地蔵菩薩像は、本地域在住者の幸福と安全を祈願し、町内を通学で歩む児童・生徒の健やかな成長と交通安全を願い、優しいお顔で見守っていて頂いていた。

 

地蔵菩薩像の生老病死

 お地蔵さんの像にも命があり生老病死がある。105年が経過し、戦災で傷んだお体を晒したままにするのは忍びない。お体は仮に姿で、そのご精魂は不滅であり、新しいお体にご精魂が移るのが自然である。戦争の証人が消えるのは残念だが、お地蔵様のことを思えばそのほうが良い。それは今回のお墓の改建で認識した智慧で、更に今回の地蔵菩薩像の改建でその思いを新たにした。当初、地蔵尊に屋根を付ける案も見積もったが、建屋としての法規制もあり、借地の件や建築許可等の問題で足踏みとなっていた。今回、お地蔵さんが傷んだ真因を考える機会となった。

 

地蔵尊を再撮影

 今回の閉眼法要を機に、地蔵尊の写真を撮り直した。それを見てこの数年での石の劣化が顕著であることに気がついた。今回、書の撮影のために購入したCCDフルサイズの一眼レフに100~400mmF4.5、70~200mmF2.8望遠レンズを装着して、強い陰影がつかないように天候を見ながら撮影したため、今まであまり気にならなかったひび割れの酷さが、写真上で鮮明に浮かび上がった。お地蔵さんの首の前掛けを取り替えたため、前掛けで隠れていた傷みと変色状況が目に付いた。それは50年前のナパーム弾の痕跡であろう。地蔵尊は戦争の残酷さの証人として存在しておられた。その証を通り過ぎる人たちが気づかないのに、寂しさを感じていたはずだ。

 お地蔵さんの後姿も含めて熟視して、改めて戦争の禍を感じた。戦争になった真因を見極めないと、平和惚けの空論反戦論者になってしまう。EUに押し寄せる難民の問題も、植民地政策、グローバル経済主義の展開で中東・アフリカの人民を搾取した咎が、ブラーメンのように欧州に返ってきているだけである。だれが戦争で儲けているかの真因を見極めないと、問題は解決しない。

  2017年8月7日「磨墨智 435b.ことな親を鞭打て」の最後で記載したお地蔵さんは、上記の地蔵尊のことです。

 図1 2013年6月撮影               

図2 2016年4月3日撮影

図3 背面の衣の傷みがはなはだしい。また焼け焦げた跡が生々しい。

図4 地蔵菩薩尊の横を通学路とする児童達

   雨の日も風の日も児童約200名の通学を見守る(2013年6月)

図5、6 閉眼法要 2016年3月24日10時

 

2017-08-08

久志能幾研究所 小田泰仙  HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite

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