人生の局を奏でる ~カナデノワコンサート
2017年8月20日、第1回から第3回までのカナデノワコンクール入賞者によるカナデノワンサートが開催された。ゲストに石原佳世・岡崎章ご夫妻を迎えて、ピアノデュオ演奏も披露された。
人生で己の局を奏でる
このコンサートでは、小学1年生から中学生、高校生、大学生、プロまでが出演する。出演者を見ると、人の成長を象徴した人生の縮図である。出番が来たら、黙って縁台の上がり、演奏して舞台を降りる。前回の大垣フォーラムホテルの音楽会が、身内のお披露目とすると、今回の大垣市音楽堂でのコンサートは、実社会でのお披露目の場である。カナデノワコンクールでの厳しさが、今後の人生を歩む上で大きな経験となる。コンサートへの出演は、自分の意思で決めて、その技を披露する。それでお金が儲かるわけではない、今まで培ってきた己の技を披露するだけである。それが己の肥やしとなる。それがお金以上の価値である。
曲から局へ
人生の課題の当たり前を、当たり前にこなす。それが人生だ。己の小さな「曲」を血のにじむまで練習する。そして、その鍛錬をもとに大きな人生舞台で、デュオ演奏としての仕事が「局」なのだ。これで学んだ喜びを糧として、社会の大局を目指して人生を歩んで欲しい。
人生のアンサンブル演奏
カナデノワコンクールは、出場者の演奏技術の向上を目指すだけでなく、アンサンブルを通して人との協調性を育み、 音楽を楽しむ心を育て、参加過程そのものが豊かな人格形成になることを目的としている。審査では、「お互いの音をよく聞いて演奏しているか」「演奏者同士がそれぞれ協力して意欲的なアンサンブルをしているか」「音、歌に心が込められていてそれを伝えようとしているか」等を主眼点としている。より豊かな音楽表現の競演が望まれている。やっつけ仕事では人を感動させられない。心を込めて仕事をしたい。その人生の局は、一人では奏でられない。自分の思いを仕事に込めて、世に問う。多くの仲間、パートナーとの協業があってその努力の成果が2倍にも3倍にもなる。人と人との間で奏でるのが人生の仕事である。その小さな第一歩が、この舞台でのアンサンブル演奏なのだ。
一番喜んでくれる人
人生の晴れ舞台を身内の人が一番喜んでくれる。親は勿論、祖父祖母が見に来てくれる。コンサート用晴れ舞台の服装の準備も大変だ。自分が大きくなった時、親になって、子供のために演奏会用の服を作ってやる時、昔の親の恩に感謝の念が沸き起こる。きっと祖父祖母もその援助をしたはず。その時、親や祖父祖母が生きていれば幸せであるが、往々にその時には親はいない。
カナデノワコンサートの生い立ち
カナデノワコンクールでは、ピアノの独奏だけではなく、連弾や「こどものうた」も対象である。主催者の河村義子先生の「子ども達には音楽を仲間と共有できる楽しさ知って欲しい」という思いからである。30年以上、ピアニスト、ピアノ教師をしてきた経験から、音楽教師仲間や同窓生、教え子らと今回のプロジェクトが実現した。
河村義子先生は中学の時、作曲家高木東六氏らが審査員を務めた大垣市芸術祭での演奏で入賞した。発表会や演奏会とは違うコンクールの厳しさ、気構え、緊張感が脳裏に刻まれたという。当時は楽譜のコピーも録音もなく、自分の演奏をゼロから作っていった。大学生や熟年世代に音楽を教え、ボランティアでも音楽活動をしながら、自分が受け継いだ教え方や、音楽の価値を次世代に伝えたい思いが、今のカナデノワコンクールで形となった。「音楽界の環境が激変している。一人で弾くピアノ演奏だけでなく、仲間と奏で合い、感じ合うことで音楽が何倍も楽しめて、相手と心が通い合う感動を味わって欲しい」との思いでこのコンクールとコンサートと企画した。「コンクールという厳しさも経験も必ず人生で生きてくる。そのきっかけになれば」と。第一回から第3回までのコンクールで、約200名がステージに立った。そのうちに30名余が今回のコンサートで腕を披露した。
今回の演奏会は、名目的には市と教育委員会の後援とパンフレットには記載してあるが、実質的に支援はゼロである。市の実質的な支援を要望したい。当面は期待できないので、市民の草の根運動でこういう活動を支えて、大垣の文化を維持してくしかない。私も支援させていただいた。いつの時代も行政は、後追いである。市民の草の根運動で、行政を指導していくしかない。
音楽堂とは
環境的に、大垣市スイトピアセンター音楽堂は、優良ホール100選に選ばれている。スタインウェイとベーゼンドルファーのどちらかを選んで出場できるコンクールである。ベーゼンドルファーのピアノは、前大垣市長の小倉満氏の尽力で導入された。素晴らしい大垣の音楽堂を広く知ってもらい、地域活性化に繋げていきたいという思いも込めている。
石原佳世・岡崎章のピアノデュオ演奏 「春の祭典」
「春の祭典」はストラビンスキー作曲のバレエ音楽で、古代ロシアの春を迎える儀式で、いけにえの少女が息絶えるまで踊り続けると言うシナリオである。作曲者自身の手によって、連弾用に編曲がされている。パリで初演された時、不協和音の連続で、5拍子、7拍子、11拍子という不思議なリズムに観客は大ブーイングをしたとか。そんな初演から100年経った今は、革新的なかっこいい音楽として20世紀を代表する名作となっている。クラシック歴の浅い私には、石原佳世・岡崎章のピアノデュオ演奏は、激しいジャズの様で、真似して弾きたくとも弾けない高度な技の連続であった。私のレベルではついて行けない。100年前にパリで初演された時に観客が感じた心境が理解できた。
カナデノワとは
【奏でのわ「輪・和・羽」】を意味し、アンサンブルを通して、心の・輪、響の・和を大切にしながら豊かな心で大きく・羽ばたいて欲しい、という願いを込めた。ピアノは一人で演奏することの多い楽器であるが、連弾や歌とピアノなど、誰か共演することで、楽しさが倍増する。家族やお友達同士など音楽を愛する仲間が、ともに感じること、共に表現することの新たな喜びを分かちあい、さらに絆を深めるきっかけとなること祈念して名付けた。
カナデノワ:kanadenowa シンボル&ロゴ
「音符」「人」をモチーフに、人と人、心と心、歌やメロディー、ハーモニーを奏でてつながって羽ばたいていく様子を音符のイメージに見立てたデザインとした。グリーンを基調としたカラーは、音符から若葉が育っていくことを彷彿とさせ、先進的ながらも、協調性、芸術性の願いが込められている。
河村義子
大垣市出身。名古屋市立菊里高校から愛知県立芸大、同大学院でピアノを専攻。演奏活動の傍らシルバー世代や子どもたちの音楽活動などを支援する。現在、岐阜聖徳学園大と大垣女子短大で講師を務める。家族は夫と息子。
図1 大垣市学習館音楽堂
図2~8 出演者達
図7、8 石原佳世・岡崎章のピアノデュオ演奏
図8 全員で記念撮影
図6 皆の記念撮影を横でおばあちゃんが見守る姿は微笑ましい
2017-08-29
久志能幾研究所 小田泰仙 HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite
著作権の関係で無断引用、無断転載を禁止します。
コメント