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2017年8月 7日 (月)

「桜田門外ノ変」の検証 (7/25)護衛

(5)護衛のリーダーの位置 ――

 襲撃隊が計画どおり、単筒の発砲を合図に列の先頭に切り込むと列は乱れ、予想通り井伊直弼の駕籠の周りに大多数の護衛はいなくなった。これは護衛隊のリーダーに、危機管理意識が薄かったことを示している。この場合の護衛のリーダーの役目は、常に全体に目をやって、どこが問題かを観察しなければならない。

 これは示唆に富んだリーダーのノウハウである。戦闘機の編隊の隊長(リーダー)は組織の全員の状態が、常に見渡せる状態に位置する。戦闘機での編成でも、最初に先頭を切って敵に突っ込んでいくのはリーダーの役目ではない。それは単なる突撃隊の軍曹の役目である。戦闘編隊での真のリーダーは、全機が見渡せる編隊の斜め上に位置して、全機の状態を見ている。それでこそ何かあれば、自らが助けに突っ込んでいける。

 

私の失敗

 昔は私も勘違いをしていて、先頭に立つことがリーダーの役目だと思っていた。あるプロジェクトで、信念をもって先頭に立って突き進んでいくのだが、ふと後を振り返ると、部下達は誰もついて来ていないことを発見して愕然とすることが多々あった。それでは組織はうまく統率できない。リーダーの役目は常に冷静に全体を見渡し、状況の変化に合わせて的確な指示、対応をすることにある。そういう意味で、課長職は難しい立場だ。実務者であり、統率者でもある。

 トヨタ系の某会社の管理職から弁理士事務所として独立した人から聞いた話である。「元の職場(その某会社)では、課長職は実務は全くしない。じっと部下の観察をして、その悪いところを指導する」という。「だから貴方の会社(私の前職)は発展しないのだ」と言われた。一理はある指摘であった。リーダーの位置づけは、会社の規模と考え方で変わるが、リーダーの位置づけの認識が異なっていた。当時の課長職の私は、実務者としても走り回っていた。50年前は、その会社は私の前職の会社よりも格下と見なされていたが、現在ははるか格上の会社に変貌している。その会社を格下と見なしていた己の会社は消滅した。

 

大雪への備え

 また当日は、数十年ぶりの大雪であった。そのため、護衛の武士たちは刀に雪がかかるの防ぐ束袋を付けいた。その束袋を取りはずす一瞬の間に、護衛の武士たちは切られてしまった。接近戦での刀での勝負は一瞬で決まる。大老への種劇など今だかってなかったので、危機意識が希薄になっていた。それを襲撃側は突いてきた。

 季節外れの突然の大雪で、極寒の中、護衛の武士たちは、襲撃にあっても体がすぐには動かなかった。それに対して、大雪でも予め体を温めて、待ち伏せをしていた襲撃側には、万全の体制で襲い掛かることができた。護衛のリーダーが、その役目を全うしても、井伊直弼公の死は避けられなかった。仏さまがそう仕組んだとしか思えない状況である。

 図1 「桜田門外の変」時の供揃図 『彦根市市史』より

 

2017-08-07

久志能幾研究所 小田泰仙  HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite

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