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2017年7月18日 (火)

インプラント 7(経営理念)

3.4 経営理念からの判断

  組織の憲法である経営理念が正しければ、自ずと良心的な経営・医療行為がされる。しかし、観察した歯科医院の医院理念には、問題が多い表現が多くある。それ故、信用できない歯科医院と結論できる。米国のために作られた憲法9条の一文があるが故、日本の外交政策が戦後70年間余も硬直状態になっている。かように憲法とは、全てを支配する呪文である。文書で言えば、クライテリアである。

 この歯科医院の「デンタルガイドブック」で医院理念にconcept との英訳があるが、誤訳である。conceptとは概念、観念、着想、発想、考え(ジーニアス英和大辞典)であり、「理念」は philosophy である。誤訳をしている関係か、その内容レベルは行動規範のレベルでしかなく、理念で記載すべき高いレベル内容ではない。医院理念に書かれている「 ~ の維持のお手伝いします」のレベルは仕事に落としこんだ実務の内容であり、理念で書くべき内容ではない。他社の理念と比較するとこの医院理念の異様さがよく分かる。この理念の文面は、TVコマーシャルのキャッチコピーレベルにすぎず、理念とはいえない。

 理念とはその組織のトップの志、思い(念)を表した決意表明である。これが経営の成否を左右する。理念は、①錦の御旗 ②経営の物差し ③口にすることでエネルギーの源泉となる、の3つの条件が必要である。その理念は、①顧客の視点、②サービス・技術・商品の視点、③自己を超えた視点、での観点で作られる。以上の観点から、現状のこの医院の理念にはこの大事な事項が欠如している。だからこの経営理念は合格のレベルではない。

 

 Philosophy : a theory or attitude that acts as a guiding principle for behaviour

 Consept: an idea or mental image which corresponds to some distinct entity or class of entities, or determines the application of a term(especially a predicate), and thus plays a part in the use of reason or language.

                                   (Oxford Dictionary of ENGLIH)

 

医院理念  OUR CONCEPT

健康な歯は生涯の宝物

人間にとって自分の歯を生涯健康に持ち続けることができたら、これほど幸せなことはありませんきれいな歯は自分はもちろん、見ている人気持ちいいものです。患者様公共的に自分の歯で暮らせるために、健康で美しい口腔内を保てるために、スッタフ一同、明るく元気にあなたの生涯の宝物「健康な歯」維持をお手伝いします。

 

上記の経営理念での不適格な表現項目

(1)「あなた」の表現

 「あなたの生涯の宝物」「あなた」という表現は、人を見下した表現である。文章中で使う場合は注意が必要であるのに、理念の文章中で無神経に使われている。せめて「皆さんの」という表現が常識である。「あなた」との表現は、小学生の教科書や指示命令書で使う言葉である。英語でもyou を主語にしている文は低学年向けのテキストにしか使われない。

(2)「患者様」の表現

 「患者様」という表現も違和感がある。「患者」とは、病院や医師の側から呼ぶ漢語である(日本語語感の辞典(中村明著 岩波書店)。人を見下している表現の一種である。それに無理やり「様」をつけているから、違和感があり書き手の馬脚が見えるようだ。

(3)「人間」の表現

 「人間にとって自分の歯は」この場合は人間ではなく、「人」が正しい。人間とはあくまで人と人との間で社会生活をするホモサピエンスである。この文体での意味は動物としての人の話である。

(4)「きれいな歯」の表現

 「きれいな歯」とはくだけた表現で、理念という文体の中で使うのは違和感がある。「きれい」は、「美しい」、「清潔」との意味を含むが曖昧な表現で便利な言葉であり、話し言葉で使われる場合が多い。(日本語語感の辞典(中村明著 岩波書店)

(5)「気持ちいいものです」の表現

 「気持ちいいものです」は話し言葉で、格調高い文体であるべき理念の文章で使うには下品である。

(6)「公共的に」の表現

 「公共的に」が文章の副詞として異質な挿入になって意味が通じない。

(7)「自分の歯で暮らせるために」の表現

 「自分の歯で暮らせるために」は日本語として間違った表現である。「自分の歯で噛めるために」が正確な表現である。

(8)「見ている人も」の表現

 「見ている人も」はおかしな表現である。誰も見てはいない。「見る人」という表現が正しい。

(9)「明るく元気に」の表現

 「明るく元気に ~ をお手伝いします。」では異様な表現である。「明るく元気に」では動詞との相性が悪い。ノー天気な「明るく元気に」でなくても構わない。受診者の願いは、「真摯に患者の身になって」治療をして欲しい、だ。

(10)「維持をお手伝いします」の表現

 「維持する」、「手伝う」の2つの動詞があり冗長な表現である。一文に動詞が2つあると、英訳が困難になるし、誤訳の恐れもある。

(11)「これほど幸せなことはありません」の表現

 「これほど幸せなことはありません。」とは、何と大げさな表現か。

 改良案:「人は自分の歯を生涯持ち続けることで健康を維持できます。」 

(12)「健康な歯」の表現

「健康な歯」→「歯の健康」

(12)「お手伝いします」の表現

  企業のあるべき使命はお手伝いのレベルではない。理念にしては軽薄な表現である。

 

2017-07-18

久志能幾研究所 小田泰仙  HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite

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