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2024年5月13日 (月)

最期の親孝行、心肺停止後24時間はドライアイスなし

 

 何時かは必ず来る親の死。親を見送れるのは順当な親孝行である。その逆に、親に自分の葬式を出させるなど、そんな逆縁の親孝行をしてならない。そのためには、最低でも親より長生きせねばならぬ。それが子供の務めである。

 何時の日にか、親の臨終に立ち会った際、医師から死亡宣告を出されても、すぐにドライアイスを入れてはならない。それが生前の最期の親孝行だ。

 医師が親の心肺停止、瞳孔開きで死亡宣告をするが、体の49%はまだ生きている。心臓からの血液が止まり、全身に血が回らず、肺からの酸素も回らないが、それで全身の細胞がすぐ死ぬわけではない。細胞の51%は死んだかもしれないが、まだ49%は生きている。最後まで機能しているのが聴覚器官である。医師が死亡宣告しても、まだ周りの声が聞こえている。

 医師も法律的な立場で、家族に死亡を告げ、死亡時刻を記録しなければならぬ。あくまで法律的、社会的な死亡宣告である。法律的に死亡日時は、遺体の処理、相続関係、相続税関係、社会的費用負担の関係で必須の事項である。だから法律的に死亡の定義が必要になる。それが心肺停止、瞳孔の開きである。真の生物学的な死ではない。

 

 例えれば、エンジン不調で海面スレスレに飛んでいた飛行機がエンジン停止となり、海面に不時着した状態である。エンジンが止まったので、動力源がなくなり、機体の各部は動かなくなってきた。海面上にまだ機体は浮いている。コクピット内のパイロットは必死で復元活動している。しかし各機器の動作は停止した。外への発信機能も停止した。しかし外からの声を聴く器官はまだ機能している。少しずつ、機体が海に沈んでいく。

 それが医師から死亡を宣告された状態である。まだ体は温かい。12時間たっても、背中に手を入れるとまだ温もりがある。

 人間の生活状態で言えば、臨終間際は眠る寸前で意識が朦朧としている状態である。まだ耳は聞こえている。少しずつ意識が薄れていき、完全熟睡に入る。それが臨終直後の状態に似ている。

 その状態の時、ドライアイスを入れて冷やすと、急速に完全な細胞の死になってしまう。ドライアイスを入れるとは、海上に浮いている飛行機に、無理やり重しを乗せて早く沈めるようなものだ。

 

看取り士の作法

 看取り士の作法では、医師が死亡宣告した後、手を握り、心肺停止した親や親族に対して体を抱き、手を握り、耳元で「今までありがとう。生んでくれてありがとう。そばにいてくれてありがとう。後は任せて、安心して逝ってね、私も後から逝くから」と優しく囁き続ける。心肺停止状態でも、まだ耳は聞こえている。体もまだ温かい。

 いくら難病を完治させても、人は何時かは死ぬ。人は物理的生物学的に128歳以上は生きられない。年功序列で次は自分の番なのです。

 臨終のときに間に合わかった親族も、心肺停止後24時間以内なら、そうやって肉親にお別れをすることができる。そうすれば旅立つ肉親を安心させることができる。見送る方も心残りが少ない。

 

死に目に遭う

 私の親の臨終の場合も、このことは知らなかったので、病院や葬儀屋任せで、医師の死亡宣告後、すぐ関係者がドライアイスを入れたと思う。今思うと、無知は人生に壁を作る、それを痛感した。

 24時間以内なら、日本国内からなら駆けつけることができる。2021年1月1日に亡くなられた馬場恵峰先生の枕元に、新潟から高速道路を十数時間かけて長崎県の大村市まで駆けつけたM社長さんがおられた。当日はまれに見る大雪であった。日本海側の高速道路が封鎖で、東京経由の高速道路を飛ばして長崎まで行かれたという。なにせ1月1日のことである。M社長さんは本件を知っておられたようだ。私もそれを知っておれば駆けつけたと思う。

 

 

引き止めは地獄

 臨終の時、「死なないで」と泣き叫んだら、死にゆく人には拷問である。やっと病気の苦しみから解放されて楽になれる思ったのに、それを引き留められたら、まだ地獄のような苦しみを耐えねばならぬ。それでは安らかに死ねない。

 死は一面残酷ではあるが、患者の病気の苦しみと介護する側の苦しみから解放をしてくれる。それは天の恵ではある。そんな苦しみが永遠に続けば地獄である。

 生あるものは生老病死である。それが宇宙根源の法則である。だからこそ、偶然の生は有限として、必然の死を意識して、生かされている人生を有意義に生きたい。

 

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 臨終の際、迷わずに見送ってあげよう。受けたご恩を心に刻んで。いつかまた逢えるのだ。

 見送られる方も迷わず、胸を張って、浄土への道を歩もう。



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2024-05-13  久志能幾研究所通信 2858号  小田泰仙

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コメント

いつも有意義なブログをありがとうございます。

よろしければ1つ教えてください。
「しかし外からの声を聴く器官はまだ機能している。」と書かれていますが、この文中の「器官」とは、飛行機でいうところの何にあたるのでしょうか。

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