私の墓じまい
私が2015年にお墓を改建したとき、2家の墓じまいを行った。それも計5基のお墓の墓じまいである。私の墓じまいは、前向きの理由で行った。ご先祖のお墓の統合、改建であった。5基のお墓を3基に統合して改建した。当初は6基の墓じまいの予定であったが、親戚との確執でそれは叶わなかった。それはお墓の耐震対策、耐寒対策、保守の省人化を兼ねての改建である。お墓の改築は、家の改築と同じである。
世情
2018年度の日本全国の墓じまい件数は115,000件である。10年前に比べて5割も増えたという。墓じまいの理由として「後継者がいないから」が5割を占める。なにか情けない思いである。墓を守る後継者がいないくても、墓を守る手断はある。私の場合は前向きの墓じまいで、ご先祖様に自慢できる。
お墓のお守り、拓本取り
今までは私が墓参りに行くと、6基のお墓の手入れとお花をお供えせねばならなかった。それで結構なお金と時間がかかる。またお墓も60年も経つと、石が風化して痛んでくる。ましてや100年も経つと墓石に刻んだ文字も風化して読めなくなってくる。
そのお墓は祖母の家系で、叔母の代で家が絶えたので私がそのお墓のお守りを引き受けた。私がその墓のお守りを受け継ぐ義務はなかったが、ご縁を感じて引き受けた。叔母は京都の尼寺の住職であった。100年も経った墓石の文字を確認するため、お墓の拓本を取った。拓本取りには大垣市拓本同好会の皆さんの協力を頂いた。感謝です。
それでご先祖の姿が浮かび上がった。それが「黄鶴北尾道仙の墓」の名前であった。それと過去帳から推察すると、ご先祖は謡の師匠であったようだ。また大垣生まれで、彦根で1734年没と墓石に刻まれていた。当時の封建社会で、一介の町人が大垣から彦根に移動とは不思議な経緯である。その経緯までは不明である。
かすかに「北尾道仙」の文字だけが読める
お墓の拓本を取る 大垣市拓本同好会さんの協力 2015年6月1日
お墓の拓本を取る 「黄鶴北尾道仙の墓」が確認できた
墓じまい跡の更地
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お墓の環境
特に冬に雪が積もる彦根のような寒冷地では墓石は傷みが激しい。それは墓石が雪の水を吸い、夜に墓石の中の水分が凍結して膨張し、昼間にその凍結が溶ける。その繰り返しで石がぼろぼろになる。それで自家の墓石が目立って痛んできた。墓じまいと改建は、その対策の改築が主要な目的であった。
お墓だって生老病死である。ぼろぼろになったお墓をそのままにしておくのは、ご先祖に対して罰当たりである。ご先祖をボロ屋敷にすまわせるようなものだ。使用期間の終わったお墓は、懇ろに弔ってあげるのが筋である。それが正しい墓じまいである。
墓じまいの作法
墓じまいの時は、住職様に墓じまいの法要をしてもらってから、お墓の撤去工事である。その墓石は、大阪の特別の処理場で粉砕されるとのこと。墓じまいをした墓石は不用意には廃棄できないようだ。
墓じまいした時に出てきたお骨を回収するのは、血のつながった親族である。手術用の薄いビニール製の手袋をはめて手で拾って回収する。それは業者に任せるわけにはいかない。お墓から回収したお骨や土を般若心経の印刷された袋に入れて、保管し、それを後日、新しいお墓に収める。私が回収した4基のお墓は、以前にお墓の改建されたお墓であったので、お骨はなかった。供養として、その墓の土だけを回収した。もう一基は、外地で亡くなられた英霊のお墓であったので、お骨は入っていなかった。しかしそのお墓を建てた妻のお骨は残っており、それを回収した。本来、私がそのお骨を回収する義務はなかったが、因縁で私がお骨を拾う羽目になった。ある意味、良いことをしたと言える。その因縁で、本来骨を拾うべき人は、後年不幸な死にかたをした。またこのコロナ禍で葬式もだせなかった。ご先祖を大切にしない人は、自分も大切にしないようだ。まず自分が生まれたご縁を理解していない。だから不幸な死にかたをすると感じた。仏様のお裁きを感じた。
お墓を改建して、ご先祖を大切に、自分自身も大切にしていこうと決意を新たにした。
お墓の機能
お墓の役目はお骨を土に還すこと。お墓に安置したお骨は、約80年間で土に還る。人は土から生まれて土に還る。それが大自然の循環である。人間は大自然の中では小さな存在だ。墓じまいを2度も経験して、大自然の営みを感じた。お墓だって生老病死である。
あるお墓では古い墓石がそのまま重ねて並べられおり、誰の墓かもわからないほどだ。それでは逆にご先祖様に失礼だと思う。まるでゴミ屋敷がそのまま放置されているように見える。だからきちんとお墓の後始末をして差し上げるべきだと思う。現代の住宅地で、100年前の家が修理もされずそのまま放置されていると同じだ。お墓とはご先祖の来世の家なのだ。いつかは自分も住む家である。
2023-05-05 久志能幾研究所通信 2680号 小田泰仙
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