「♪夕焼け小焼け」で死を伝える
2019年12月12日の「生き活き教養塾」で、馬場恵峰先生は童謡「夕焼け小焼け」を通して自分の死を暗示された。その翌日、恵峰先生は中国の友人に別れを告げるため、北京に向けて最後の中国旅行に出発された。鈍感な我々は、その暗示に気が付かなかった。恵峰先生はその1年後に亡くなられた。
そして私は恵峰先生の三回忌(2022年12月24日)に参列し、元旦に大垣フォーラムホテルに泊まって、やっとその暗示に気が付いた。当時の先生が自分の死が近いことを察して、皆さんにお別れのメッセージを託したのだ。それに今まで気が付かなかった自分の鈍さに呆れるばかりである。恵峰先生ご夫妻をこのホテルのスィートルームにお泊めして良かったと思う。
縁ありて花開き、恩有りて実を結ぶ
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童謡「夕焼け小焼け」
童謡「夕焼け小焼け」は人生哲学の唄である。恵峰先生が旧第五高学校(現熊本大学)で心理学の教授から、その意味を教えられたという。時に太平洋戦争開戦の直前である。
夕焼け小焼けで日が暮れて
山のお寺の鐘が鳴る
お手々つないで皆帰ろう
烏と一緒に帰りましょう
子供が帰った 後からは
まるい大きな お月さま
小鳥が夢を 見るころは
空にはきらきら 金の星
中村雨虹作詞、草川信作曲、大正8年に発表
歌詞の意味
夕焼け小焼けで日が暮れて♪
人生劇場で盛大に赤く燃えた人も、静かに燃えた人も、何時かは人生劇場の幕が下りる。自分がどれだけ人生で燃えたかを死の床で振り返る。
私、恵峰も92歳、いつしか歳老い、人生が暮れようとしている。
山のお寺の鐘が鳴る♪
己の葬式で導師が叩く鐘の音に合わせて、参列者が己のために合掌する。
お手々つないで皆帰ろう♪
どんな人も必ず死ぬ。皆で一緒に浄土に還るのだ。
遅いか早いかである。死ねば皆、佛である。
その差の年月は、長い歴史上では誤差範囲である。
カラスと一緒に帰りましょう♪
頭の黒い人間でも一緒に浄土に還っていく。雀でも白鳥でもなく、一緒に帰っていくのは黒いカラスなのだ。
一緒に逝くのは、黒い喪服を着たカラスなのだ。悪いことをしたカラスでも「一緒に」浄土にいくのだ。
カラスは仏教では重要な位置付けの鳥である。インドの古代仏教では大黒天様がカラスの頭の姿で描かれることがある。カラスがヒンドゥー教と入り混じって取り入れられたブータンでは、ワタリガラスが国鳥である。
宗教学者の山折哲雄氏は、「夕焼け小焼け」の歌詞の背景には、『般若心経』の真言があるという。般若心経の最後の部分は「ぎゃーてい ぎゃーてい はーらーぎゃーてい はらそうぎゃーてい ぼーじーそわか」である。その意味は、「いきましょう。ゆきましょう。囚われなき悟りの世界へ人々と共に行きましょう。」である。
子供が帰った 後からは♪
まるい大きな お月さま♪
小鳥が夢を 見るころは♪
空にはきらきら 金の星♪
夢の中で、自分の金のような人生目標が空に輝いている。
死ぬまでにその目標に向かって少しでも実現したい。
皆が眠った(死の)後は、丸い大きなお月様(佛様)が皆を見守っている。
だから安心して眠りなさい。
馬場恵峰書
馬場恵峰先生 2019年12月12日、11:07
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「夕焼け小焼け」の教え
私は馬場恵峰先生の解説を聞いて、初めてこの童謡の意味を知った。
だからこそ、永眠する前に精一杯の精進をして自分の夢を実現させたいと決意した。それでこそ金の星の夢を抱いた人間である。
私は4年前、大病をして死期への時間意識に目覚めた。人は必ず死ぬ。その見極めをして、決断すべきを決断して、死の間際に悔いが残らないようにしたい。やらない悔いよりもやって失敗した悔いの方がよい。大垣フォーラムホテルに宿泊して、先生の遺言に目が覚めた。
2023-01-07 久志能幾研究所通信 2583 小田泰仙
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