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2020年8月 6日 (木)

危機管理11 カウントダウン

 近くで時限爆弾のチクタクが聞こえる

 人生・仕事の危機管理とは、爆発(信用破綻、破滅、病気、解雇、事故、突然死、自殺)までのカウントダウンの秒読みの「佛の声」が聞こえるかどうかである。大自然は、声なき経を唱えている。人体は、声なき助けの叫びを上げている。

 危機意識に対する感性の低い人は、このカウントダウンが聞こえない。仕事を始めれば、自動的に危機状態へのカウントダウンが始まる。また決断を引き延ばしていると、いつの間にか最終カウントダウンの状態に陥る。人生では、いかに早くそのカンウトダウンに気づいて、リセットボタンを押す能力と意欲、その姿勢が問われている。

 そして危機に気づかず、リセットボタンを押せなかった人が、年間32,000人(2002年)も自らの命を絶っている。前年度は22,000人だったのにである。2019年現在は、少し自殺者は減ったが、それでも20,169人である。今はそんな厳しい時代である。

 

◆◆◆カウントダウン3

 上司はやさしい人です。部下の育成を願い、注意や叱責をしてくれる。そして3回目迄は許してくれる。でも仏の顔も3度まで。1回目の「督促」は要注意である。「残りはあと2回ですよ」と。2回目になるとイライラした怒りなのだ。「あと一回で爆発ですよ」と。3回目は爆発して、もう「この件に関してはダメ!」との烙印を押す。仏が鬼に変貌したのだ。もう4回目は無い。仕事が他の人に回るのだ。まさにリストラの危機である。上司は何回言っても判らない人、言っても仕方のない人には何も言わない。そうしないと、組織全体が危機に陥ってしまう。

 

◆◆カウントダウン2

 自動車メーカーはもっと厳しい。1回目の品質問題か納入問題を起こして、キチントした再発防止を打たず、2回目の問題を再発させると、自動的に納入停止である。最悪の場合は取引停止である。そうなれば倒産である。なにせ、自動車部品の生産ラインは他には転用がきかない。トヨタへの納品が出来ないから、他のメーカーに納めるなどは出来ないのだ。でもそういう厳しさが有るからこそ、トヨタグループ全体としては、なんとか勝ち組みに入っている。

 

◆カウントダウン1

 怒鳴るお客様は親切である。きちんと間違いを指摘してくれるのだから。その店が好きで、なんとか改善してほしいと思っているのだ。文句を言うのが当たり前と思われる米国でも(マーケッテッング調査による)、クレームを言う客はたったの5%である。

 でも真のお客様はもっと厳しいのだ。お客様はお店に来て、一回の不愉快さを感じると、もう来てくれない。95%の客は黙って、何も言わず去って行く。それが一番冷酷である。そういった危機感を持って仕事を遂行しないと、仕事が無くなる。店が潰れる。会社が社会的制裁を受ける。

 

・今ここ/カウントダウン0

 しかし運命の女神様はもっともっと冷たく厳しい。あの時、あの状況、あの人達との巡り合わせは2度と来ない。今その時に全力を投入しないと、悔いが残るのである。失った時間,チャンスは二度と帰って来ない。しかし積極的に運命に対面する人には女神様は優しい。行動するから新しい局面が展開する。

 

悪魔のカウントダウン

 決断しない、行動をしない、優柔不断に引き延ばす、こんな行動では、全て悪魔にカウントダウンのスイッチを押させる行為なのだ。決断しない、それは決断しなければない項目が目前にあるはず。判っていても、できない。行動しない、頭では行動しなければ思いながらも、動かない、動けない。それこそが悪魔にカウントダウンの時計を速める。すべて自己の選択の結果である。決断しないという選択をしている。決断・行動をしない人には運命は冷酷なのである。その件に決断しなくて、結果に対して泣き言を言う人は、子供なのだ。自分の決断に責任が取れないのだから。決断をしなかったという、選択・決断をしている。

 しかし、本物の時限爆弾と違い、人生での危機は、その状況に気づきそれをリカバーする気になれば、遅い速いは別にして、リカバーの手段は無限にある。それが唯一の救いである。それさえ気づかない人が絶望して命を絶つ。その数32000人(2002年当時)。

 

一期一会

 一期一会とは危機管理の言葉。人生に、もう一度の機会などはないとの危機感が必用である。悪魔は黙ってカウントダウンのスタートボタンを押す。心耳を澄ませば、あなたの頭上で音もないカンウトダウンが聞こえるはず。それは何のカウントダウン?

 

懐かしい思いで

 以前の部署の上司で、トヨタから出向されていたО部長には、この件で厳しく指導された「3回督促して、上司の要求に応えられない時は、もうその件ではダメ!」との烙印を押される、と指導された。

 「これで3回目ですよ。小田さんって、そんな情けない人だったんですか」と言われたことが多々あった。それはなんと辛く情けないことであったことか。言い方は優しいが、心にグサッと突き刺さるような厳しさがあった。でもこの厳しさはトヨタ自動車では当たり前で、思えば私にはかなり甘い指導であったようだ。О部長が受けた指導はそんな生半可なものではないようだ。そういう人財がトヨタを支えている。だからトヨタは生き残っている。

 「リーダーとは厳しく、嫌われてなんぼの世界、それが組織を生き残らせる条件」と割り切れば、人を厳しく教育するのに抵抗はない。なまじっか人に好かれようとするから、人を指導できなくなる。組織とてやるべきことが出来なくなる。自分が甘くては人を指導できない。組織の業務改革はできない。

 入社以来、数多くの上司が私の前を通りすぎていった。優しい上司や冷酷な上司は記憶に薄いのだが、厳しく指導をしてくれた上司ほど記憶に残り、厳しさを教えて頂いた熱意にありがたさをつくづくと感じる。人は甘やかされ、何も言われなくなったら、おしまいなのだ。その状態に気づくのが危機管理である。

                         初稿 2003年7月2日

Photo   馬場恵峰書 2006

2020-08-06 久志能幾研究所通信 1693  小田泰仙

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