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2019年9月10日 (火)

講演「やれる理由こそが着想を生む。」

 今日、日経ホール(東京大手町)で、「はやぶさ」のプロジェクトリーダの川口淳一郎氏の講演を聞いて感銘を受けた。そのエッセンスを紹介する。

 

シンポジウム Smart Work経営 日本の挑戦

基調講演「やれる理由こそが着想を生む。」

はやぶさ式思考法

講師 川口淳一郎氏(宇宙航空研究開発機構(JAXA)シニアフェロー)

2019年9月10日 日経ホール(東京大手町)

 

 「はやぶさ」は、2003年5月9日に宇宙科学研究所(ISAS)が打ち上げた小惑星探査機である。イオンエンジンの実証試験を行いながら2005年夏にアポロ群の小惑星イトカワに到達し、その表面を観測してサンプル採集を試みた後、2010年6月13日、60億 kmの旅を終え、地球に大気圏再突入した。地球重力圏外にある天体の固体表面に着陸してサンプルを採取して、地球に帰還するという偉業を、世界で初めて成功した。

 

歴史

 時に1969年、アメリカNASAは月面着陸に成功。1970年、日本はやって人工衛星「おおすみ」の打ち上げに成功したが、当時の宇宙開発研究者はどうやったらいいかを悩んでいた。我々は何をすべきか。このままアメリカソ連の後追いをするだけでいいのか、と。

 後追いの開発、それは、リスクの少ない、批判を浴びない選択である。

 我が国の宇宙開発の先が見えなかった。議論をして、その結果、「小さい天体から試料を持って帰ってくること」を目標に決めた。小天体こそ、宇宙誕生の痕跡を残している。それを解析すれば、その宇宙誕生の未知のベールを剥がすことが出来るのだ。1985年のこと。

 

NASAの後追い

 2016年9月8日、アメリカはNASA版「はやぶさ」打ち上げた。日本に遅れること13年である。NASAも「小天体こそ、宇宙誕生の痕跡を残している」ことに気が付き、その計画を実施した。「はやぶさ」とそっくりである。

 

心から始まる

 「全ては心から始まる。体はそれに付いてくる」

 サーシャパメン 全米全豪を制した大坂なおみのコーチのアドバイス

 サーシャパメンはメンタルで大阪なおみを支えた。

 京セラの稲盛和夫氏は『全ては心からはじまる、心におわる』という本を出している。

 

伝統の力とは何か

 駅伝競走にように、そのメンバーが変わってもよい。その実力は環境が育てる。環境が育てた自信である。

 自分達がやらねば、やれる自信を持つ事が伝統の力である。

 

 思うこと: 小川敏市長は、黙って実質的に事業仕分けのように、子供達の教育予算をカットして、子供一人当たりの教育費を県下最低レベルにしてしまった。だから小川敏市長は、大垣の伝統まで抹殺しようとしている。環境が大垣市の未来を支える子供を育てるのだ。その大垣の子供達の未来が危ないのだ。小川敏市長を廃して大垣を変えなくては、大垣が滅びる。

 

親方師弟関係

 JAXAの先輩には変人が多かった。ひどい言い方で皮肉を言われたことが多い。しかしその本意は、無知の知を知れ、であった。本当の力は、自分で獲得したものだけである。教えてもらったことは、実力ではない。

 その獲得手法は、親方師弟関係である。親方は、決して弟子に教えない。弟子は親方の背中越しに、親方の技術を盗む。盗んだものは決して忘れない。そのためには親方が常に現場にいることが大事。ISO9000では、ドキュメントを残せばよいと書いてある。しかしそれでは、本当の実力はつかない。現場で親方から盗んでこそ、実力が付く。

 

智者見於未萌

 「見えるものは、皆、過去のもの」 川口氏の師 長友教授の言葉

 愚者闇於成事、智者見於未萌

 愚者は成事に闇く、智者は未萌に見る  『戦国策』

 意味は、「愚者は形になってもきがつかない。智者は未萌を見る。」だから長友教授は、若い人に、その芽を探して歩かねばならないと常々言っていた。

 

価値ある国を作る

 米国エンリコ・フェルミ研究所で荷電粒子を加速する巨大な加速機を作った時、「この機械で、国を守れるか。何の価値もないではないか」と反対派の議員がかみついた。「しかしこの機械で、守るべき価値ある国を作ることができる」とプロジェクト責任者のロバート・ウィルソンは反論した。

 これは民主党の事業仕分けと全く同じ考えである。(民主党に国を任せたら、国が亡ぶと私(小田)は思う。)国民が自国の未来に自信を持てなくなったら国はおしまいである。その自信を付けるのが大きな国のプロジェクトである。国民が夢を見れなくなったら、飯も食えなくなるのだ。あの国はコピーしか作れない国だと思われたら、おしまいである。

 民主党の時代、「はやぶさ2」の予算が事業仕分けで半年間、凍結された。「はやぶさ2」はその間、国から見放されて宇宙空間を飛んでいた。幸い、半年後に政権交代があり、予算が復活した。その間、民間企業がその運営を支えてくれた。

 

人財育成

 自分がシニアになって思うのは、ジュニアには自分を超えて成長して欲しい、ということ。人財育成の重要性を感じる。

 

ポリシーの大事さ

 欧米は、1000年、2000年に渡る異文化との戦いで、ポリシー(戦略)が大事だと分かってきた。

 日本人は出来ること(得意なこと。戦術)をやる方が楽なのだ。作ってからどうするかを考えているから、欧米に支配される。

 

未来への道を

 ピラミッドの土台作りに一生をかけるより、尖った高い塔を先に立てる挑戦に取り組んで欲しい。そうすれば回りが出来てくる。

 「人が夢を造るのではない。夢が人生をつくるのだ」大谷翔平

 不完全でも新たなページを開かないと、新たな世界は開けない。

 超変人の集まりが川口淳一郎氏の先輩達であった「こうすればできる」という思想をJAXAで糸川博士から受け継いだ。

 全てはやれる理由を見つけて、挑戦しない限り、成果は得られない。

 我々は自信を持って、取り組めばよい。他国を模範にする必要はない。

 新しいプロジェクトには、レシピは不要である。自分で考えるべきだ。

 若い人には、やれる理由をみつけて挑戦して欲しい。それで新しい日本の未来を作って欲しいと願っている。

 

2019-09-10   久志能幾研究所通信No.1334  小田泰仙

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