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2019年5月22日 (水)

地蔵菩薩が持つ大きな器を目指して

 お地蔵様は、正式には地蔵菩薩という偉い方である。地蔵菩薩は、釈迦の入滅後、56億7000万年後に弥勒菩薩が出現するまでの間、現世に仏が不在となるため、その間、六道(地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人道・天道)を輪廻する衆生を救うお役目の仏とされる。現世では、お地蔵様として子供の守り神として祭られている。地獄に出張したときは、お役目として閻魔大王の役も務めるとされる。

 菩薩とは仏教において成仏を求める(如来を目指す)修行者のことを指す。菩薩は修行中ではあるが、人々と共に歩み、教えに導くことで、庶民の信仰の対象にもなっている。

 

地獄論

 地獄は、天、人、阿修羅、畜生、餓鬼、地獄の六道で最悪の所である。地獄に堕ちるのは、生前中に善を積まなかった不心得者で、多くの積善を心がけた方は、閤魔大王に呼び出され閤魔帳を覗いて判決を受けることもなく浄土に赴かれる。

 地獄に堕ちてしまえば、救いようがない。地獄の向かう亡者を裟婆と地獄の境界で「地獄の十王」が亡者の生存中の業の履歴が記された閤魔帳と照合して、どの地獄に送るかを評定して判決する。その裁判で被告の弁護をするのが地蔵菩薩である。

 

裁判員裁判制度の愚

 先人が考えた地獄論は、現代の裁判員裁判制度に比べれば、はるかに人間的で救いがある。最近の裁判員裁判制度での死刑判決の多さが異常である。その死刑判決のお役目を一般市民に押し付ける制度はいかがなものか。死刑を判決せざるを得ない一般市民には地獄である。死刑の投票を裁判員制度の裁判官としてしたら、一生トラウマとして残ってしまうだろう。

 

裁判官と弁護人が同一

 十王の中の裁判長が「闇魔大王」であり、闇魔大王は地蔵菩薩の化身であると言われる所以である。それ故、判決を下す裁判長と被告の弁護人が同一人物となるので、無罪が期待され、もう一度裟婆に戻れる可能性があることから地蔵菩薩信仰が生まれたといわれる。この信仰は民衆の地獄に対する恐怖観念が貴賎を問わずあったことも一因とされる。

 

先人の智慧

 こういう仏の組織体系を創造する先人の智慧には驚嘆する。今の新興宗教教祖の浅智慧では、足元にも及ばない。仏教の体系図は、会社組織の概念の創作と同じである。日本の地獄絵は、8世紀ごろに東大寺の線刻画に登場している。地獄は全て人間が作り出したものだが、その恐怖心をうまく活用して道徳心を子供に植えつけたのは智慧者である。私も幼いころ、祖母から地獄絵をお寺で見せられて、恐怖心を味わった思い出がある。

 

新興宗教団体のお笑い

 地獄論ができて1300年も経って、今の新興宗教界で、「脱会すると地獄に堕ちるぞ」と脅す教団があるのが、お笑いである。地獄に堕ちるには、それ相応の罪を犯さないとその資格が無い。原始宗教では、それが詳細に決まっている。原始宗教は、今よりも緻密である。現代新興宗教の教義は、金儲けに迷って、ガサツな体系となっている。それを信じる方は、もっと愚かである。

 

祈りの器

 仏像は、皆さんの祈りを受け止める小さな器である。拝むにしろお願いするにしろ、空気の前では手を合わせづらいもの。その祈る対象を具現化した一つの例がお地蔵様の像である。私は毎朝の散歩道の途中にある地蔵菩薩像の前で、「子供たちを守っていただきありがとうございます。守っていただいた子供たちを私もお守りします」と手を合わせている。

 

器が写す鏡 = 己は地蔵菩薩

 その地蔵菩薩の姿を思いめぐらせば、それは己の心が鏡に投影された姿ではないかとの思いに至った。人は自分の世界観の中でしか物事を考え出せない。先人が考えだした地蔵菩薩とは、人間の姿の反映である。己の心には厳しい裁判官の姿もあれば、相手の罪を弁護してあげる優しい心もある。その内なる心の面が、時に応じて葛藤して百面相のように変化する。すべて己の心の迷いがなす業である。それを如何に仏の心の眼で世の中を観るかで、成仏の程度がわかる。地蔵菩薩はその両方の清濁を併せ持つ。自分もそんな大きな器になりたいと思い精進している。

 子供たちが日本の未来を背負ってくれる。地蔵菩薩はその守り佛である。子供を害する大人へは、己が地蔵菩薩になりきって、厳しい裁判官の眼で、接するのが年長者の義務である。

039a21501s  松本明慶先生作 童地蔵菩薩像  高さ13センチ

 

 この子は、東京の展示会にお友達の200人と一緒に上京した。その中からお見合いをして、この子に決めて大垣の自宅に来てもらった。200体のお地蔵さんは、同じように見えても微妙に一人ひとり違い、この子と決めるのに苦労をした。(2013年10月)

 松本華明さんのお話しでは、年々この童地蔵菩薩像の作りにこだわりが出て、明慶さんも日々レベル向上だそうです。

 

 『命の器で創る夢の道』

2019-05-22   久志能幾研究所通信 小田泰仙

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