浜松国際ピアノコンクール(3) 家康「しかみ像」のご縁
2018年11月10日(土)と11日の浜松国際ピアノコンクールのチケット入手に失敗して、半日の時間が空いた。10日の朝、会場で15時から追加チケットが販売されることを確認して、気分転換で浜松の観光名所の中から浜松城を選択して散策した。
そこで徳川家康が敗戦した時の肖像画『徳川家康三方ヶ原戦役画像』、通称『顰(しかみ)像』を見付けて嬉しくなった。元亀3年(1572)12月、浜松市街東部の三方ヶ原で、武田信玄と徳川家康との合戦があり、家康は命からがらに敗走し、なんとか浜松城に逃げ込めた。その際、この敗戦を肝に銘ずるためにその姿を描かせた。この絵は、「憔悴し切った家康の表情」が巧みに描かれている。己の慢心の自戒として生涯座右を離さなかったと伝えられている。顰(しかみ)とは、顔をしかめること。
本物は徳川美術館にあり、ここの展示はレプリカだが、それを感じさせない出来であった。レプリカでも身近で見たのは、初めてである。
辛いこと
自分の惨めな姿を絵に描かせた家康はただモノではない。いわば臥薪嘗胆である。経営者として、日々、辛いことばかりで、夜、酒を飲まないと寝られないでは、経営者失格だ。経営者は辛いことは目を背けず、現実を直視せねばならぬ。酒は百薬の長というのは嘘だ。
どれだけ少量でも酒は毒であると、最近の英国の研究で明らかになった。食品は胃で消化されるが、酒は肝臓で、薬物と同じプロセスでしか分解されない。だからお酒を飲むとは、薬物パーティをすること。だから私は今、完全禁酒です。
経営者は辛くて当たり前。その辛さを受け入れられなければ、経営者になってはダメである。己の決断に、社員の生活がかかっている。それを酒で胡麻化してはダメ。酒は思考を麻痺させる。経営者なら辛いことは、覚えていなければだめだ。それに己の成長の糧が埋まっている。「しかみ像」はそれを象徴している。
ご縁
2018年11月12日、アクトシティホテルで朝食後、ロビーを通ったらホテルの売店で「しかみ像」の手ぬぐいの展示品が目に飛び込んできた。お店の中を散策して、この手ぬぐいを何かのご縁と思い入手した。一枚1080円で、徳川美術館認定商品とある。色は白と青があったが、青の方が心情を良く表しているようで、青を選択した。己の戒めの絵として飾るのもよいと思ったからだ。翌日、思い直して、白の作品も追加購入した。家康さんも、400年経っても、地元の経済活性化に貢献している。偉い方だ。
この絵を気に入ったのは、10年まえ、「人の一生」という徳川家康遺訓を馬場恵峰師が揮毫し、その軸を10年間も誰も買わずに、私が購入できたこと。ご縁とは、一つだけでなく連綿とした繋がりを持っている。
新説
この絵は、家康が書かせたのではないとの新説が学芸員の原史彦さんより出されて話題になっている。そういう話題が出るだけ、家康は超有名人である。そんな歴史の話題のご縁に誘ってくれた浜松国際ピアノコンクールである。
「家康の『しかみ像』に新説が! 家康が描かせたはウソだった!」
https://shizuoka-hamamatsu-izu.com/hamamatsu/shikami/
2018-11-15 久志能幾研究所 小田泰仙
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