2-3.日産の反面教師
ネッツトヨタ南国の大原光秦社長の講演会を聴いて、欧米の成果主義の弊害事例として、ルノーに飲み込まれた日産の社内変化を思いだした。『週刊新潮 2000年2月10日号』に記載された「アフター定年 人生終章の光と影『日産の元中堅幹部が選んだ「花」と「カレー」を売る人生』を読み、その記事中で、成果制度の裏に隠れた弊害と部下育成の衰退の言葉が目に焼き付いた。
『日産の元中堅幹部が選んだ「花」と「カレー」を売る人生』の要約
その記事は、主人公の安藤宏氏(52歳)の日産のサラリーマン生活から新ビジネスの取り組みの苦労話であった。氏は40歳代に入ってセールス部門の環境が変わり始めた。それまでの日産の伝統の車種別の営業体制が、地域別のそれに代わり、氏は中国、四国、九州地区の営業部長代理となる。それは新しい時代の到来であった。
新車を出せば売れる時代が終わり、成熟した市場になってきた。その中で地域戦略や販売網の合理化など競争力を高める為、経営指導をすることになったが、それは店の統廃合も含まれており、現場との軋轢で、学者肌の氏は、精神への負担が大きくなりノイローゼ気味となってしまった。
それで氏は平成8年に早期退職制度を利用して退職し、新しい道の新ビジネスの立ち上げにチャレンジした。その過程で、失敗もあり多くの苦労をしてきて、ホームレスになるか、家族崩壊かと、地獄の苦しみを味わうことになる。つい最近、そのビジネスにやっと少しの希望が出てきたという。
そんなに苦労をしているのに、安藤氏は日産自動車を辞めたことに後悔していないという。「一時は悔いたこともありました。しかし今のニッサンは社内の雰囲気も変わったと聞いています。昔は上司が部下に仕事を任せていた。今は自分の代わりが育つと、自分は要らなくなるかもしれないと恐れ、後輩に仕事を教えなくなったそうです。悲しいね。早くリタイアしたのは間違いではなかったと思っています。」
『週刊新潮 2000年2月10日号』
成果制度の弊害
この事象は欧米式経営の個人主義、成果制度の裏に隠れた弊害の極みである。ネッツトヨタ南国のように共に組織として成果を出すことで、お客さまに喜んでもらうことを目的とすれば、個人主義、成果主義制度など採用できるはずがない。
日産はルノーに吸収合併されてから10年余以来、一見、利益は出ているようだが、肝心の魅力ある車が生まれない。財務の改善、過去の財産の切り売りで、本業では成果が出ていない。成果主義の見えざる圧力で、現場はノルマ達成に尻を叩かれる。その結果が、無資格者に車検を任せる不詳事に発展する。現場は、違法でもノルマを達成せよ、とまで追い詰められていたのだ。
ゴーン氏の人相は、狩猟民族の顔で、野獣的な下品さがある。ルノーは、日産を食い荒し、その後、隙をみせた三菱自動車に食らいついた。日産も三菱自動車も、官僚主義、権力闘争で会社の競争力を弱め、その結果として経営不振に陥り、外資の餌食となった。社員を不幸にした官僚主義の経営者の責任は重い。我々は他山の石として、グローバル主義経済を見直さねばならぬ。
グローバル主義経済の象徴として、1%の支配層が99%の富を独占する。その象徴として日産では、ゴーン社長(当時)が10億円の報酬を独り占めし、役員の報酬も数億円に上るが、トヨタの役員の報酬は数千万円である。その一方で、一般社員の給与は、トヨタの社員より低い。なにかおかしい。
2018-03-27
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