老いて学び
人間の成長とは、出来ないことが出来るようになることではない。加齢を重ね、昔できたことが出来なくなった自分を発見して、その問いに答えることが、人間の成長である。成長とは過去の自分を捨てることである。佛像彫刻においても、材料の多くを削って捨てなければ、真の佛の姿は現れない。削り捨てるべきは、厚い自分の殻である。それを捨てるには多大な苦痛が伴う。
人は加齢という佛力によって、持っていた資産(若さ、体力)が剥ぎ取られて、新しい自分が顕在化する。駿馬も老いれば騾馬に劣る。しかし裸になった自分に、新しい真の自分を発見する。今まで固定資産だと思って持っていたのは人生会社のバランスシート上の流動資産であった。時期がくればそれは不良債務に変貌する。それに気がつくのが成長である。
人生バランスシートの劣化
還暦を迎えて国家試験の受験に挑戦していた。その過程で、人生バランスシト(自分の体・脳・心という資産)の劣化が明らかになった。若い頃の記憶力なら相応の努力をすれば、60点の合格点はなんとか取れるはずだが、老化劣化した記憶力では、同じ間違いを繰り返す醜態を体験した。目を酷使するので、若い頃には問題なかった目の障害が顕在化した。その原因の表面的症状は高血圧に現れていた。血管内部にコレステロールのカスが付着して血流が流れにくくなり、高血圧となっている。同じ現象が脳内の血管にも起こっているはずで、若い時のような頭の血の巡りの良さが無くなっている。体の中で網膜は一番弱い血管で、長い間、過酷な使用をしたため、目の網膜の血管の流れに支障がでる網膜の病気となった。その結果、試験結果が若人に劣ることになった。
人生バランスシートの改善
その治療として血圧の降圧剤を飲むのは対処療法である。その根本原因を特定し、その対策の治療を始めた。血管の内部が細くなっているので、血圧を上げて血を流そうと体が動いているのに、血圧を下げては、血の巡りも悪くなるはずである。そのため医師から処方される降圧剤は服用するが、血管の内部のつまりを無くすための改善行動(食事・運動・生活スタイル)を真剣に取組んだ。1年程の取り組みで、相応の効果が見られるようになった。
60年かけて酷使してきた人体という組織は、それ相応の時間をかけて経営改善を施さないと、元には戻らない。今までの宮仕えで、過度な長時間労働、睡眠時間の不足、精神面での痛めつけ、体に良くない添加物まみれでカロリー過多の外食や不規則な食生活で、心身を痛めつけていた。このままは道半ばで倒れた多くの仲間の後を追うことになると気がついた。
真因を解明して対処
病気の真因を完全に元に戻すのは無理だが、その根本原因が分かれば、対処は可能である。何もせずに医師の処方する降圧剤だけを服用していては、つるべ落としのように体が衰退する。国家資格受験という過度な負荷をかけて、体・脳・心の問題点が判明した。体の異変の根本原因が判明したのが、年老いて学びに挑戦した最大の成果であった。そのまま放置すれば、失明、心筋梗塞、脳梗塞に罹患した恐れが高い。今でもその危険性はあるが、それを認識して生活スタイルの改善に取組んだので、その危険性がかなり低減したようだ。ご先祖から頂いた命は、学び続けて後進に何かを残すために使いたい。
少にして学べば壮にして為すこと有り。
壮にして学べば老いて衰えず。
老いて学べば死して朽ちず。 佐藤一斎著『言志四録』
青少年時代に学べば、壮年になって為すことがある。
壮年時代に学べば、老年に なって気力が衰えない。
老年時代に学べば、死んでもその業績は朽ちない。
2017-11-19
久志能幾研究所 小田泰仙 e-mail : yukio.oda.ii@go4.enjoy.ne.jp
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