人間の能力の磨き
私の会社生活38年間で、何度も異動をさせられた。そのたび度に、最初は戸惑うことばかりであった。その部署で何年もやってきた人からは、ド素人扱いを受け、落ち込んだ日々ばかりである。表には出せないが、自分の無知と実力のなさ、知らないしきたりを教えてくれないことへの苛立ちが出た人生であった。
異動の効果
恥をかき、ののしられ、あざけられて、だんだんと仕事が分かってきた。その部署の人はそんなつもりではなかったとは思うが、異動した身で、初めて体験することには、何事もこたえるもの。しかし、色んな部署で経験を積むことは、同じ部署だけで長く勤めるのとは別の能力が身につくし、広い観点も備わる。今の時点で、過去を振り返ると、当時、ほとんど移動のなかった人の視野の狭さが良く見える。人は色んな部署を経験して、成長する。なまじっかの力があり、異動がないと成長が限られるようだ。昔の上司に言わせると、その部署でトップと最下位の成績の人間は異動させないと言う。成績最優秀な人を、上司が手放すわけがない。最下位の人を異動させれば、異動先の部長から恨まれる。結局、成績2番からブービーまでの人間が異動の対象となる。これがサラリーマン社会なのだ。異動の解釈は様々である。東洋と西洋では解釈が違う。
A rolling stone gathers no moss. 《諺》 転がる石には苔が生えない
《★【解説】 商売変えは損あって益がない; 絶えず恋人を替えている人は真の愛が得られない[結婚できない]; 《米》 ではまた絶えず活動している人はいつも清新だの意に用いる》. 研究社 新英和中辞典
還暦を迎えての感慨
私にとっては、自分の意思ではなく、会社の命ずるまま、異動先の新部署の仕事をただ黙々と担当してきた。辞める能力もその勇気もなくである。異動の繰り返しというエイジング試験を人生の耐久試験を終えて退職をした還暦の時、やっと死にもせず、脱落もせず、耐久試験を終えたという感慨であった。
人の能力は、ののしられ、恥をかき、自尊心、固定観念と言う能力の周りの付いた膜を剥がすことで、表れ、磨かれると悟ったのは、50歳も過ぎたころであった。まるで砥石の目たてや、硯の目立てと同じだと理解できた。
人は、人と言うダイヤモンドでしか磨かれない。
2017-10-07
久志能幾研究所 小田泰仙 HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite
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