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2017年10月26日 (木)

上野で運慶の佛に出会う

 今日、2017年10月26日、上野の東京国立博物館で開催中の「運慶展」に行ってきた。現存する運慶作と伝わる31体の佛像の内、22体を展示するという史上最大規模の運慶展である。現地に12時30分に着いて、18時に大垣の自宅に帰着した。それからひと休みをしてこの原稿を書いている。

 

入場前の行列

 「運慶展」では、土日は混むとの予想であったので、平日の今日、余裕を持って出かけたが、上野駅に着いてその予想が裏切られた。上野駅構内にチケット売り場があり、会場の待ち時間が40分との掲示があった。そのチケット売り場でも、約70名の行列である。現地のチケット売り場で買うと大変だと思い、列に並んで入場券を入手した。窓口で切符を入手するまでに、20分を要した。東京国立博物館の現地に着くと現地のチケット売り場は、30名ほどの行列で、上野駅とどちらで買った方が良かったのか、疑問を感じた。それでも東京国立博物館のゲートを通り、行列の最後尾に並ぶと、30分待ちとの看板表示であった。やはり行くなら、朝一番で行った方が良いようだ。朝一番でも30分待ちの行列との情報である。

 

鑑賞の渋滞

 上野駅に到着して小一時間ほどしてやっと入館できたが、それからがまた大変であった。どこにこんな暇人やアホが大勢いたかと(私もその一人)、老いも若きも老若男女が大混雑である。第一会場で17体ほどの運慶作の佛像が展示されていた。その佛像の前から、人が動かない。皆さんは佛像にくぎ付けのように立ち止まって凝視している。後で計算したら、1体の佛像に3~5分間ほどの時間をかけて、そろそろとすり足で歩いて佛像を一周して鑑賞している。見ては、立ち止まり、そろそろと凝視しながら移動している。それほどに素晴らしい作品ばかりであった。よく飽きもせず凝視し続けていると呆れた(私も人のことは言えない)。今回の展示方法が素晴らしいのは、佛像が全方向から鑑賞できるように後ろ側にも回れるように展示されている。また展示ケースのない仏像は至近距離1メータから拝顔できる。ケースに入った仏像は至近距離50センチから鑑賞できる。いままでこんなに近くで鑑賞できる展示会はなかった。それは素晴らしい展示方法であった。

 第一会場と第二会場で運慶作22体、その父、子孫の作品等で約70体の仏像をしっかり鑑賞して、所要時間は1時間40分ほど。40分ほどで鑑賞できると思っていたが、すっかり予想が外れてしまった。疲れはしたが、心地よい疲労感のある鑑賞であった。

 

運慶願経

 想定外の展示は、展示の最初に国宝「運慶願経(法華経巻第八)」の巻物が展示されていたこと。巻物に書かれた写経で、とても美しい書体である。運慶がこんな素晴らしい書を揮毫するとは知らなかった。治承4年(1180)、平重衡の軍勢が放った火により東大寺、興福寺の主要伽藍が焼失した。運慶は幼少から両寺院の仏像、伽藍に親しんでいたはずで、当時の信仰心厚い運慶の胸を引き裂いた事件だったはず。運慶は焼け残った東大寺大仏殿の木を軸にして法華経八巻の書写をして仏像造りの成就を発願した。紙は工人に沐浴精進させて作らせ、水は比叡山横川、園城寺、清水寺から霊水を取り寄せて墨をすった。巻第八の奥書に快慶をはじめ結縁した同僚の仏師の名前がある。写経を1行書くごとに三拝三礼して、仏像造りの成就祈願の写経である。平安時代・寿永2年(1183)、運慶がまだ20歳代の時の写経である。字体を見て馬場恵峰師の書体を思い浮かべた。それほどの達筆の写経である。よきものを見せて頂いた。

 

なぜ、人は仏像を眺めるのか

 現代は宗教離れがいわれて、無宗教者が横行しているようだが、この会場では、そんな話が嘘のようである。皆さんがじっと佛様の顔を凝視している。その佛像の顔も、端正な阿弥陀仏のお顔もあれば、荒々し不動明王、四天王、邪鬼の顔もある。端正な静かな姿の観音様もあれば、躍動感あふれる四天王の姿もある。童子の仏の生き生きとした表情の佛様も見える。多様な表情の僧侶の姿もある。その多くの佛像の中に、己の姿を見る。己の中には佛も住めば、鬼も住む。時には憤怒の怒りも覚えて社会を睨むこともある己である。その姿を見ると鏡を見るようで安らぐのかもしれない。自分でも何故、仏像を見るのか、まだ答えが見いだせていない。

 

図1 上野駅構内のチケット売り場の行列 12時09分

図2 東京国立博物館で行列最後尾    12時39分

図3 入門直前の列           12時43分

 

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2017-10-26

久志能幾研究所 小田泰仙  HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite

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コメント

運慶展を観た方にWEB小説「北円堂の秘密」をお薦めします。
グーグル検索にてヒットし、小一時間で読めます。
少し難解ですが脳トレに面白いです。

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